SEVENTEENの日本語歌詞の世界 「Oh my!(Japanese version)」
K-popのアーティストが「日本人向けに、日本のレーベルから、日本語の歌をリリースする」という流れは、かなり前から定着しています。
K-popのJapanese version について、日本人の間でも捉え方はさまざまです。
知っている言語で歌ってくれるから親しみやすい、日本語を覚えてくれることが嬉しい、という肯定的な意見がある一方、
もともとは外国語で作られた歌だから不自然に聴こえる、わざわざ日本語で歌う必要は無い、という意見もあるでしょう。
筆者個人の意見は「作るからには良いものにしてほしいなあ」です。
日本で歌をリリースするということは、普段K-popを聴かない層の人にもK-popを聴いてもらえるチャンスです。ただ、その歌詞の日本語が不自然だった場合、どんなに良い曲でも、「変な日本語」という印象が先行してしまいます。
もったいない!
私は、SEVENTEENの歌のオリジナルの韓国語歌詞もJapanese versionも、とても好きなので、
今回は「Oh my!(Japanese version)」を例に紹介したいと思います!
歌詞の翻訳の難しさ
K-popを日本語歌詞で歌うということは難しいことです。元々韓国語で歌う用に作られた曲ですから、当然です。
難しい原因のひとつとして、日本語と韓国語の、「一つの文章に対する音節の多さ」の違いがあると思います。
音節とは、言葉の中において、1音で発声されるまとまりを数える単位です。母音のみ、あるいは子音+母音の発音を1音節と数えます。
まず、全ての単語に当てはまるわけではなく、逆の場合もありますが、韓国語より日本語の方が、音節が多い単語が多いように思います。
これには、両言語の発音の種類の違いが関係していると私は考えます。
日本語でいう、拗音(小さい「ゃ、ゅ、ょ」)、撥音(ん)、促音(小さい「っ」)は、1つの音節として数えられません。
例えば「発信(はっしん)」は、文字数は4文字ですが、発声する音は2音節ということになります。
ローマ字表記にすると分かりやすいですが、「hassinn」となり、子音+母音になる発声は「ha」と「si」の2つなので、2音節です。
韓国語にも、拗音撥音促音に対応する発音はあります。
さらに、パッチムという、子音+母音の組み合わせの後に、もう一つ子音がつくものがあります。
ひらがなでの発音表記だと、アルファベットで表す部分になります。
この子音は、音(というか声)に出さずに単体で発音されるか、次に続く文字の母音に移って発声されるので、音節として数えられないものになります。
また、小さい「ぁ、ぃ、ぅ、ぇ、ぉ」も、音節として数えられないのですが、
日本語には本来この発音は存在せず、「ティー(tea)」のような外来語に使われるくらいです。
韓国語では、これを含む単語も多いように思います。
このように、「音節として数えられないけど、発音の区別として存在する音」が、韓国語の方が日本語よりも幅広く種類があります。
つまり、韓国語の方が、1音節で発声できる文字や単語の種類が多いということです。
また、人称代名詞においても韓国語は音節が少ないです。
1人称は「나,저」(な,ちょ)
2人称は「너」(の)
と、1音節しかありません。
日本語の人称代名詞は種類がたくさんありますが、どんなに少なくても1音節で終わるものはありません。
人称代名詞はもちろん歌詞でも多用されるので、この差は大きいです。
以下のように、韓国語の歌詞、カナルビ、直訳した日本語を並べてみると、
日本語の方が文字数が多く、音節の数も多くなるのが分かります。
この歌詞の場合、英語部分を除くと、韓国語歌詞は16音節、日本語訳は26音節になります。(訳す人によって音節数は変わると思いますが、韓国語よりは必然的に多くなると思います)
歌のメロディーは韓国語歌詞に合わせて作られているので、16音節相当の長さしかありません。
この日本語直訳をメロディーに合わせて歌おうとしても到底入りきらないので、
この26音節ある日本語を、なんとか16音節くらいに書き直す必要があります。
言語が変わることで使わなければいけない音が増えるのに、使える音の数は限られているので、
歌詞の翻訳は難しいのです。
丁寧な日本語選び
Oh my!(以下オチョナ)は、
日本語歌詞を歌のメロディーに沿った音節数に収めたうえで、かつ韓国語歌詞で歌われる内容を損なわない言葉選びに成功しているといえます。
3行目「でも僕はそれも嬉しいけど」は、韓国語歌詞の「それが嫌なんじゃなくて」を直訳するのではなく、その後に続くと思われる「嬉しいけど」にすることで、
「でも(嫌なんじゃなくて)僕はそれも嬉しいけど」というように、韓国語歌詞の「嫌なんじゃなくて」の意味を汲み取ることができます。
また、5行目は「過ごしてるの?」と問いかけ文にすることで韓国語歌詞「もしかして…と思って」「心配になるからなんだ」の部分を省略していて、
「同じように」で「僕の想いはそう」の部分を表しています。
使う言葉を変えていますが、大筋の内容はそこまで差異がない、全体的にそんな印象です。
この日本語歌詞ができるまで、決して簡単じゃないと思います。
こちらのパートは、音節数が多い人称代名詞を使わないように、「君は」「僕が」などの主語を省略しても意味が伝わるように変化しています。
ここの日本語歌詞が丁寧で個人的に好きです↓
多様な日本語の表現
オチョナは、歌のタイトルからも分かるとおり「어쩌나」(おっちょな)という単語がたくさん出てきます。
その数24回。
「어쩌나 어쩌나」と2回繰り返すフレーズがポイントになっていますよね!
日本語歌詞は、「어쩌나」部分の訳が全て同じではありません。
サビの中で5回「어쩌나」が出てきますが、
日本語歌詞だと、「(好きだよ)どうしようもなく」「(胸を騒がしくさせる)どうしようもないどうしようが」など、文脈に合わせて変化します。
「もうすべて君のせいだ」のように「どうしよう」部分を省略している場合もあります。
韓国語歌詞と同じように直訳で「どうしようか どうしようか」でも良さそうなところですが、しっかり考えられてます。
(日本語の歌で、同じ単語を何回も繰り返す歌詞って少ない気がします。JPOPとKPOPの歌詞の特徴の違い?)
繰り返す単語でいうと「매일」。
日本語歌詞は「(明日もまた)きっともっとずっと」という言葉に変わります。
韓国語歌詞は、今まで過ごしてきた日々、そして今も「毎日」、君が好き ですが、
日本語歌詞は、今も、これから過ごす日々もまた「きっともっとずっと」君が好き というように、若干ニュアンスが違いますね。
ここまで文章で長々と説明してきましたが、聴き比べるのがいちばん分かりやすいので、貼っておきます。
オリジナル
Japanese ver.
読んでいただきありがとうございました!
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