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PENTAGONの日本語歌詞の世界「Shine (Japanese version)」
KPOPのJapaneseバージョンについて、以前はSEVENTEENについてnoteを書きましたが、
KPOPのJapaneseバージョンを語る上で、PENTAGONというグループを外すことはできません。
SEVENTEENの日本語歌詞について、
限られた文字数で韓国語の内容をそのまま日本語に変換するのが上手い、ということを以前書きました。
それを踏まえてこちら。
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PENTAGONのShineという楽曲の1番サビ部分、韓国語歌詞と日本語歌詞です。
ぜんぜん内容違うやないか、とお思いでしょう。
しかしこれにはちゃんと理由があって、
SEVENTEENが原曲の歌詞の内容を大事にしているのに対し、
PENTAGONは、原曲のメロディーと言葉の響きを大事にしているからなのです。
母音へのこだわり
まずは1番サビの1フレーズの最後、比較的長い音符にあたる文字に注目します。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/144055836/picture_pc_75719c107d454c6affe4ad8792453576.png?width=1200)
韓国語歌詞と日本語歌詞、母音がすべて一致します。
場所によっては2文字ごと母音が一致する部分もあります。
そのため韓国語歌詞の原曲を聴き慣れていても、日本語歌詞を違和感なく聴くことができます。
サビの部分、Japaneseバージョンは2番で歌詞が変わります。
ここでも母音を合わせています。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/144055992/picture_pc_01163a62e5637562fd2588b3a5bebcf0.png?width=1200)
もう一つ注目したいのは、歌い出しの1部分です。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/144056023/picture_pc_73e681ee7dbab3133216578d848451a4.png?width=1200)
3行目の丸で囲った部分、韓国語歌詞でも日本語歌詞でも「ちょ」から始まり複数回繰り返すのですが、
韓国語歌詞の「ちょ」は「좋아했었다고」の「조」
日本語歌詞の「ちょ」は「ちょっと待って」の「ちょ」です。
例によって歌詞の内容は変わっているのですが、
原曲の「좋아했었다고」を緊張でどもっている様子を表現したメロディーが、そのまま活かされています。
お見事。
語彙へのこだわり
PENTAGONの日本語歌詞にはKPOP歌手が歌うとは思えない難しい単語が出てくるな、と感じます。
shineの2番ラップ詞に注目します。
困らせないでよ わざとでも
あと2、3回あったら 再起不能
ぽきんと折れるぜ 爆発寸前
Oh なんでこんな風に なるんだよ
「再起不能」や「爆発寸前」のように四字熟語が出てくるのがレベル高めだなと(小並感)。
ラップ詞なので「でよ」と「でも」、「折れるぜ」と「すんぜん」で韻もしっかり踏んでいます。
他の曲でも難しい単語が出てきます。
異常数値愛情
リミット超えて苦悩
夢幻GalaxyのBlue 君を捜索中
But it’s not true
歌詞にこんな風に熟語が並ぶのも、珍しいのではないでしょうか。
特に「夢幻(むげん)」という言葉、日本人でもなかなか使わない言葉です。
メロディー(音符の数)へのこだわり
今度は、先ほどのサビを韓国語歌詞をもとに楽譜に起こします。
1音節(1音で発声されるまとまり)につき1音符とします。
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この楽譜に、今度は日本語歌詞を当てはめてみましょう。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/144056655/picture_pc_58d7abc5781d1a8a82eccddb1b3cc5a9.png?width=1200)
(ほぼ)ぴったり!
子音+母音の組み合わせが多く、音節数が多くなる日本語の特性を理解し、
その上で原曲のメロディーを変えることなくぴったりハマるように、日本語を選んでいたのです。
これも日本語歌詞を違和感なく聴くポイントになります。
他の部分でも、韓国語歌詞と日本語歌詞で内容は変わっていますが、
メロディーと日本語歌詞の文字数が一致することが伺えます。
上記をふまえて
もう1曲、「Naughty boy 」の歌詞も見て欲しいです。
こちらも韓国語歌詞と日本語歌詞で内容がかなり違う上、今まで挙げた3つの特徴がよく表れていると思います。
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余談ですが、「Naughty boy」は韓国語で「청개구리(アマガエル)」という原題です。
韓国では、人の言うことを聞かない様子、あるいは反対のことばかり言う様子、のことを「アマガエルのようだ」と表現するそうです。
アマガエル=天邪鬼 というイメージです。
日本でも、キツネ=いたずら好き、ずる賢い のようなイメージがあるのと同じでしょうか。
そんな청개구리が、人を愛することを知って、改心する(した?)という内容の歌なので、
歌詞がかなり独特です。
そんな独特な歌詞をさらに日本語に直すことになるので、難しかったと思います。
実際、内容が変わってしまっていますが、
「天邪鬼な私だけどあなたと一緒に居たい」という大枠のテーマは共通しています。
これがすごい。
終わりに
前回取り上げたSEVENTEENと比べてみると、
この2グループは、楽曲のJapaneseバージョンを作るうえで、何に重点を置いているかが異なります。
SEVENTEENは、原曲の歌詞の内容に重点を置いており、韓国語歌詞の内容を日本語でも忠実に伝えようとしています。
PENTAGONは、原曲のメロディーと言葉の響きに重点を置き、原曲のメロディーをそのままに日本語で新しく歌詞を作っています。
どちらの方が良い、という話ではなく、
どちらも違ったアプローチでJapaneseバージョンというものに向き合ってくれているのが感じられて、日本から応援している身として本当に有り難いと思いました。
読んでいただきありがとうございました!