アメリカ政府庁舎の大家さんになれる?
アメリカの連邦政府庁舎の大家さんになれる?と聞かれると、通常は「無理でしょ~?」と多くの方が回答するかと思います。ましてや我々はアメリカ人でも無いですし、日本の霞が関にある各省庁の不動産オーナーになれるかと問われても、なれるという想像が沸かないかと思います。
しかし手短な回答としましては、「なれる(可能)」という事になります。「どうやって?」という質問が直ぐに飛んできそうですが、まずは期待されるメリットから話したいと思います。
まず最大のメリットはアメリカの連邦政府が借主になる事で、借主が破綻をしてしまい家賃の徴収が滞るリスクがかなり低い事があげられます。米国の格付けはムーディーズでAaaであり最も高い格付けが付与されており、一般個人が借主であれば、家賃の未払いが起きるかもしれませんが、連邦政府になりますとそのリスクはかなりの程度軽微と言えます。
また通常の賃貸契約10年やそれ以上の比較的長期であり、固定性ですので、3年後や5年後に受取賃料が下がるというリスクも軽減出来ます。また日本の霞が関も同様かと思いますが、近くに家賃の安いビルがあったとしましても、おいそれと引っ越し出来ない事情が連邦政府にはあります。その一つがセキュリティの問題であり、入口のゲートや避難経路、ひいては配管の配置などの面で一定程度の対応が為されているビルが必要であり、雑居ビルは言うに及ばす、それなりの外観のビルであっても連邦政府ビルとしてのセキュリティ対応がなされていなければ、引っ越し先として選定出来ない面があります。また霞が関でもワシントンDCでもそうですが、周辺の土地が有り余っている訳では無く、むしろ空き地はかなり少なく、それが新たな物件の供給制限にも繋がっております。よって賃貸契約が満了を迎えたタイミングでも転居が一般住居や会社オフィスのようには起きないため、結果空室にはならずに契約が再更新される可能性が比較的高い傾向があります。
また政権が民主党から共和党、共和党から民主党に変わっても、働くスタッフは入れ替わりが起きますが、政府庁舎を急にワシントンDC中心部から違う州へ大規模に移動させるような事は歴史的に起きておらず、これからも起こる可能性は低いのではないかと思われます。大統領が誰であれホワイトハウスが継続的に利用される限り、特にその傾向は高いと思います。
またコロナ禍で連邦政府職員の在宅勤務は進んでおりますが、それでも従前に決められた家賃は定期的に支払われているのももう一つの安心材料です。
よって①財務的に安心できる借主が、②比較的中長期の期間で、③固定家賃で借りてくれて、④退去リスクが比較的軽微である事がメリットであり、当方が参照しているケースでは米ドルで年間10%のリターン(うち配当部分が年率8%)が、今後10年間に渡り期待されております。
なおここで大家さんになれるとして、「どうやって?」という点に話を移しますが、端的な回答はファンドを通じた購入となります。借主が連邦捜査局(FBI)であれ、連邦航空局(FAA)であれ、エネルギー省(DoE)であれ、一つの物件は3桁億円規模となる場合が多く、到底1人では購入出来ない金額となります。その意味からも複数の投資家の資金を集めてファンド仕立てにし、そのファンドが投資マネージャの知識や経験、ネットワークを活用して、ワシントンDCを中心とする連邦政府の物件を取得する形になります。
よってこのファンド形式になっている金融商品を購入する事で、実質的にアメリカ連邦政府建物の共同オーナーになる事が可能です。
不動産はメインの住宅やオフィスに始まり、ショッピングモール、物流施設、学生寮、データセンター、病院、介護施設など投資対象は多岐に渡りますが、その中で連邦政府庁舎というのも比較的面白いニッチなセクターかと思っております。
(なお写真はイメージであり、具体的な投資先を意味しておりません)