【不定期雑記 #40】久方ぶりのライナーノーツ。『アポカリプスより、星に願いを』編
ドーモ、透々実生です。
今回は、久しぶり(多分1年ぶりくらい)に作品解説をやってみようと思います。長い間やってなかった理由は、まあ単純に時間がなかったり他のことに集中していたりが原因なのですが、まあそれはそれとして。
あとは、久々に『空色杯』という個人企画にて賞が獲れた作品でもあるので、それで興が乗ったというのもあります。
さて、そんなこんなで本編です。作品をまだ読んでないという方はこちらからどうぞ!↓
企画参加について
まずは『空色杯』という企画について語る必要がありますね。こちらは小説大好き系ぺんぎんVTuber、天野蒼空さんが主催される小説コンテストです。私が参加させて頂いたのは14回、現在15回目が開催されているという、長寿コンテスト企画です。
こちらのコンテストは、主催側から様々な形でお題が出され、そのお題に沿った小説を書き、最も良かった小説が1位になるという形式となったいます。今回私が参加したのは、『小暑×アイビーグリーン』という季節と色の組み合わせのお題でした。
私は今年は書きたい作品に集中するため、こういうコンテスト系は『作品の構想が浮かんだら書く。計1時間くらい悩んでも浮かばなかったらやめる』みたいなスタンスで挑んでいます。今回はたまたま浮かんだので「参加しよう!」となりました。
作品の構想について
で、こういうお題系は、そもそも題意に沿わないとならないという教訓が私にあったので(直近で別のコンテストでやらかしたのがあるので)、キチンと調べてから臨むことにしました。ということで調べてみると、
ここで次に、「じゃあ、アイビーって何ぞや」と思って色々調べてみると。
こんな花というか、植物だと分かりました。
ふむ、なるほど。不滅とか永遠の愛か……と思った瞬間。ここで私の頭に電流が走ります。
アイビーグリーン――暗い黄緑色って、ゾンビの肌の色っぽくない?
私の頭に浮かんだのは、よくアニメ映画やイラストで描かれる、緑色の肌をしたゾンビでした。これが「不滅」や「永遠の愛」と繋がって、「なら、ゾンビになっても恋人を愛するゾンビガールを書けばいいじゃん! 七夕というお題も繋げやすそうだし!」となり、この話の構想が粗方固まりました。これで確か30分くらい。あとはストーリーラインとして、大まかに「世界観開示→七夕に絡めた話」だけを決めて、色々と書き始めてみました。
規定文字数に収めるための取捨選択
しかしここからが上手くいかず、面白そうな話にはなるんだけど……続きがあんまし浮かばないなあ、となって冒頭1,000字くらいを書いては捨て続ける日々が続きました。本当に捨ててしまったのでもう下書きにすら残ってませんが、当初は今と全く違う始まり方で、『普通の学園生活モノ――かと思ったら、ヒロインの首がポロリと取れた!』みたいな始まりにしようとしていました。感覚としては、『ゾンビランドサガ』みたいなショッキングさを目指していたんですが、これがまあ上手くいかない。(ちなみに該当の1話目を貼り付けました。冒頭1分半だけでいいので見て下さい。マジで。面白いので!)
ところで空色杯は、500字未満と500字以上という2つの部門がありまして、私は後者の500字以上の部に参加しました。こちらは5,000字が上限と決まっているため、その中に1つの物語世界を詰め込む必要があります。
で、先ほど考えついた『首ポロ冒頭』にしようとすると、どうしても1,000字を超えてしまう。首がポロリと落ちる描写でショックを与えるには、どうしたって『学園モノの日常』の描写を入れ込む必要があり、そうすると自然、長くなってしまう。また、説明ばかりになっても飽きてしまうので、登場人物2人による、会話文のコミカルなやり取りも入れたい。
これら全てを実現しようとすると、どうしても長くなってしまい、私の技術ではどうしても圧縮ができませんでした。分かりやすく言えば、「短い文字数で詳細な描写」=「濃密化」ができなかった。
あとは、学園生活が普通に営まれながらも、ゾンビが平然といる世界観となると、そういう人外が共存している社会である、という描写も必要となってしまいます。既に冒頭で1,000字も使っているのに、更に説明描写が必要になると、1/4〜1/3くらい説明になってしまう。それは、私の思うエンタメ小説ではない……となりました。
結局2〜3日ほどこねくり回したのですが、上手くいかず、これは全てボツにしました。私のやりたいことに、私の技術が追いついていない。ならば無理する必要はない……という具合です。
ではどうするか。結論は簡単で、自分の書きたいところは残しつつ、ドンドン削ぎ落とせる部分は削ぎ落として、設定を改変するしかない訳です。
ということで、
以上3点を削ぎ落とし、その代わりに、
という3点を入れて、完璧に違う物語に仕立て上げました。その結果できたのが、この『アポカリプスより、星に願いを』でした。
ちなみに、ゾンビとなったけど何故か人を襲わない(むしろ共闘する)という設定は、『アイアムアヒーロー』の早狩比呂美を先例にしています。まあその先例があるなら、そこの細かな部分は説明をすっ飛ばしてもいっか!と割り切って、ここのご都合主義部分については何も説明していません(余力も余白もありませんでした。なので、ここは本当に何の設定も組んでいません)。
書くときに考えてたこと
ここから先は、実際に物語を書いてた時に考えてたことを、思い出せる限り雑多に書き記していこうかと思います。
・主人公・シューイチ(元設定では、鷲一、という漢字がついてました)について。彼はゾンビと化した彼女に対して、複雑な想いを抱いています。彼女のことは今でも好きで、今でも彼女に対して、礼儀を払うべき相手として振る舞うこともあるけれど、一方で言葉を話せぬゾンビになってしまった現実は受け入れられず、素直に今の彼女が好きだとは思えない……というような二律背反の感情。これをいかに紐解かせて、彼女のことがやっぱり好きだと思わせるか、というのが、私の命題になっていました。やっぱそういうの良いじゃないですか、姿形が変わってしまったとしても、真実の愛に気付くみたいな話!(ちなみに感想配信をして下さった際にその辺の話も少しだけ触れて下さってて、『こういうのは元の人間に戻らないからこそ良いんだよ!』という意見にはすごく同意しました)
実は、最初に書き始めた時はここまでは考えておらず、書くうちに輪郭がハッキリしてきて、「ならばこう書くのが良いか」と思いながら進めていった感じです。
・ヒロイン・織蔓琴。名前は、「織姫」「蔓(アイビー)」「こと座」から。割と良い名前になったなあと思います。
元々は、快活な女の子で、車に轢かれても首が吹き飛んでも笑っていて、めちゃくちゃ喋る女の子でした。そういう感じの女の子もいずれ書きたいですが、今回は物語のためにその人格にはご退場願いました。結構、そのまま出したかったんだけどな……(なので2〜3日悩んでました)。
その代わり、「一途に彼のことが好きっ!」というのを前面に押し出して、キュートなゾンビガールにしてあげました。なのに自転車と並走したり、ゾンビの頭を蹴り飛ばしたりするギャップもある(ここはコメディチックに書きました。意図通り笑ってくれた方がいたので良かったです)。
・ゾンビ映画ならでは、無人のお店に行って食料調達。で、そこでもゾンビに襲われる。もうド定番ですよね。『アイアムアヒーロー』のショッピングモール編しかり、最近では『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』でもそういう描写があったり。設定改変をしてからは、この描写だけはとにかく入れたかったです。
スーパーで買うものも、まあありそうだよなあ、というものだけ。生鮮食品は全滅してるのでこのスーパー、結構臭いが大変なことになってそう……とか思いながら書いてました(それを書くと文字数がまた埋まっちゃうんで書いてませんが)。
あと、こういうスーパーとかって七夕用の短冊飾りが置いてあったりするので、物語としても繋げやすかった、という背景もあります。
・ちょっと飛び道具かなと思いつつも、折角noteで使える機能は縦横無尽に使ってやろうということで、中央寄せ、右寄せ、引用機能は色々と使っていきました。ここは完全に私の遊び心です。小説(特にエンタメ)には遊び心が要る!
特に、「がしっ」を右寄せにして足を掴まれた感覚を描写したり、短冊を引用機能で表現したりというのは、思いつきでガンガン入れていった感じです。ここの辺りは真新しかったようで、結構好評でした(感想配信の中にあった、『小説の新しい形』というのは、こういうところなんでしょうか)。
あと短冊の中で、「イ建康」と書いているのはワザとです。健人君、という小学生が書いた想定で、初めは自分の名前の漢字と混ざって「建康」と書いており、あとで間違いに気付いて人偏(イ)を付け加えた、みたいなことを表現してます。細かいけど、遊び心があって個人的に好きな部分です。
・お菓子入れてる琴ちゃん、マジで可愛い。(この小説は8割くらい、ゾンビガールの可愛さを書きたくて書いてます)
・そして、アイビーの花言葉である「不滅」「永遠の愛」「死んでも離さない」という言葉だけは、主題の1つとして入れたかったので、後半にかけて入れ込んでいる感じです。ただ、この辺りは解説不足だったか流されてしまったか、あんまり反応がない感じでした。うーん、小説って難しい。まあ、でも自分の意図が全て伝わるとも考えてないですし、お好きに解釈して楽しく読んでもらえればなあ、とは思います。
コンテストの結果は……
そしてこの小説は、空色杯第14回にて、二次選考へ進出、その後視聴者投票賞を頂けました! やったー!
実は空色杯、今回で参加が5回目なのですが、内4回は二次選考進出、その進出したものは軒並み受賞しています(内1回は大賞、内2回は視聴者投票賞、内1回は大賞と視聴者投票賞のダブル受賞)。
……これ、改めて見るとすごい記録なのでは?
正直こういうのって、自身の実力もあれど、一方で運みたいなものもあって、たまたま好きだという人が選考員に多かったので選ばれた、という要素も強いと考えてます。
大体、小説が好きと言っても、「こういうジャンルが好き」「こういうストーリーが好き」「こういう文体が好き」というのは本当に人によりけりです。そういう中でも、私の物語が面白い・好きと思ってもらって、こうして二次選考に進ませて頂いたり、賞を頂けたりするのは、幸せなことだなあ……と思います。
選考員の皆様、視聴者の方々、本当にありがとうございました〜!
未来へ……
で。
自分の作品にまた集中すべく、しばらくコンテストからは離れます。結構今書いている長編小説が難しく……。とは言え実は、そろそろクライマックスが迫っているので、年内には発表し始められたらなあとか思ってます。
作品は、去年の逆噴射小説大賞で出した、『グッドデイズ、マイシスター。』、その完全版です。多分10万文字を超える長編になります(本一冊分!)。誹謗中傷と自律AIを題材にした小説にしようと考えています。
今、私が叩き込めるものは全て叩き込みたいと思いながら、苦悩しつつ書いてますので、アップロードされた際にはどうぞお読みくださいませ。
――そして。
そうですね。
そろそろ、恒例の、逆噴射小説大賞の季節。
既に私は1発仕上げてあります。2発目は思いつき次第書こうと思いますが、今年も皆様と血湧き肉躍る撃ち合いができればな、と考えてますので、どうぞよろしくお願いします。
また、10月に、乾いた荒野でお会いしましょう。
(終わりです)