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グッドデイズ、マイシスター。 あとがき

 ドーモ、透々実生です。

 この度、『グッドデイズ、マイシスター。』という話を書き終えました。37話にわたる長き連載を追って下さった皆様、誠にありがとうございました。
 こちらの記事は、当該小説のあとがきとなります。ご興味ある方はこのままどうぞ。なお、本編の若干のネタバレも含みます。


 未読の方はぜひこちらから↓



 さて。
 元々こちらの話は、逆噴射小説大賞2023(以下、「逆噴射2023」)というコンテストに際して応募した、800字の冒頭文が元となっています(もう1年前……!)。

 色々な課題があり、二次選考の突破は叶いませんでしたが、それでも私はこの作品を1つの作品として書き上げるつもりでいました。
 理由は2つ。1つは、ある程度キャラ設定やストーリーラインが出来上がっていたから。つまりは、これを捨て置くのは勿体ないなと思ったからです(とは言え、書き上がったものは、そのストーリーラインとはまるで違うものになりましたが……この辺りは後で少し書きます)。
 そしてもう1つは、筋の通った「長編」を1本書き上げてみようと思ったからです。これまで数千字〜15,000字の短編や、『箱庭商事の幽霊ちゃん!』や『カミキリ』など5〜6万字の中編は書いてきましたが、1本筋の通った長編(10万文字以上の話)を完結させたことがこの数年ありませんでした。(※別名義では14万文字程の物語を完結させたことがあるのでそれ以来かもしれません……)
 短編や中編で経験したことを活かし、今の私は足腰のしっかりした長編を書けるのか――これを試したくて、2024年6月頃、執筆を開始しました。

 この執筆はかなり難航しました。理由は幾つかありますが、そのうち最大の理由が「扱うテーマ、そしてそのテーマと『小説というエンタメ』との融合の配分」です。

 元々私は、この「誹謗中傷」「VTuber」「AI」などの題材に、ここまで踏み込むつもりはありませんでした。
 何せ逆噴射2023に出した時でさえ「流行りのVTuberモノに手を出そうかな……」という軽い気持ちで手を出していたくらいです(当時の自作品解説セルフライナーノーツにそう書いてました)。
 加えて、今までの私の小説は、そこまでリアリティラインを上げた作品が多くありませんでした。異能生物・サンタクロースがNYでドンパチやったりゾンビだらけの世界でホラーラブストーリーをやったり夜景写真を撮りに行こうと思ったら異界列車に巻き込まれたり。とにかく「(なんとなく)現代世界が舞台だが、現代社会と直接接続せず、自己完結する(トンチキな)世界観」の小説が多かったのです。
 だからこそ、誹謗中傷やVTuberという、現代的かつ社会課題にさえ直結するセンシティブな話題を扱うのは、相当な覚悟が必要でした。当然生半可には書けないし、真面目に書かなければ、現実感が薄れて面白さが毀損したり、なにより現実の痛みや苦しみを蔑ろにするのでは、と感じていたからです(どこまでいっても、痛みや苦しみを真の意味で分かることはできませんが、それでも)。
 こういう背景もあり、この小説を書くに当たっては、主にWEB上の情報にはなりますが相当調べました。かなり色んなことの解像度が上がったり、AIなどについても結構知ることができたので、やって良かったなと思います(ただし実際の誹謗中傷を見に行くべきではありませんでした。病んだし何にもならないし得がなかったです。当然ですが……)。

 そんな訳で自らの知識にしたものを小説に落とし込む訳ですが、これもどこまで入れ込むかが難しい。あまり説明過多になり過ぎると良くない。しかし一方で(特にAIの部分は)少し専門的な内容も入り、説明がないと楽しめない部分もありました。なので「いかに読者の方に知識をここで仕入れてもらい、その知識を利用した展開を楽しんで頂くか?」ということに苦心しました。言わば「読者への報酬」をきちんと作るぞ、と意気込んで。
 その意味で、たまたま作ったとは言え「准教授」という存在がいたことは、「授業形式にすれば設定や前提知識開示ができる!!説明口調になっても何ら不自然じゃない!!」となり、大変助かりました。ありがとう感惑准教授(にっこり)。
 それ以外にも、王道展開を仕込んだりしつつ、エンタメとして楽しんで頂けるような展開にできたのではないかとは思います。
 そんなこんなで作品世界を構築し、それを活かすためのキャラクターも作り込み(特に過去の話は、年を合わせないとならないので相当苦労しました)、ライブシーンを書き(私の頭の中に音源があります。誰か曲を作って欲しい……)、AIに峠を攻めさせ、キャラクターをCanvaに作ってもらったり個人サイトでグリッチ加工したり、表現等を見直し、半年の年月をかけて漸く完成したのが本作品でした。
 多分、今までで一番長く物語にじっと向き合った気がしますね。

 そんな今回のお話は大団円ハッピーエンドな訳ですが、実は、最初のプロットでは結末が某有名SF小説よろしく、「スパイプログラムの力を手にした自律AI・音夢崎すやりにより、『国力増強推進事務局』は瓦解し、全世界の機密情報がすやりの手に収まり、人間は、AIによる最悪の支配体制下に置かれる!」みたいな救いのないバッドエンドになる予定でした。
 でも、それは「暴力には暴力でお返しする」みたいな益体も無い結末であり、「私はそんなものが書きたいのか?」と自問した挙句、今回の結末に落ち着きました。やはり生まれたからには、皆に前を向いて進んでほしいので……(とても、ひどい目に遭わせた作者の台詞とは思えない)。
 お読み頂いた皆様にも、この物語を楽しんで頂けたのなら、作者の私としては幸甚の至りにございます。

 最後に。
 この物語の中の『人々』が永久infinitoに良き日々を過ごせることを願いつつ、この物語を作るきっかけとなった逆噴射2023と、この物語を読んで下さった全ての方に感謝を申しまして、あとがきとさせていただきます。特に「面白い!」と言って頂いたことは大変励みになりました!

 1カ月以上、37話という長きにわたる連載を追って頂きまして、誠にありがとうございました!



※ここからは蛇足になりますので、別記事に分けました。この物語を書くに当たっての参照記事一覧とちょっとしたコメンタリーです(私的メモの意味合いが強い)。ご興味ある方はどうぞ。↓


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