
義賊『無頼ママチャリ』 #毎週ショートショートnote 参加作
チリン、の音に気を付けろ。
無頼ママチャリがやって来る。
まさしくチリンと背後に鳴った時、カシラの話が頭を過る。
カチコミ終えて、俺以外の死体が転がる血塗れの事務所。場違いに響く筈のチャリの音は、滑稽そのもの。
無頼ママチャリが何だ。ンなモン、俺がぶっ殺してやる。
振り向く。
其処には確かにママチャリと。
それに跨り、大鎌を掲げる、首から上が無い化け物が居た。
「……あ?」
――それが、小競り合いを唯一生き抜いた男の遺言となった。
首が綺麗に切断され、勢い良く血の噴水を上げる。
「……」
首無しは血の池を踏み鳴らしながら、事務所の金庫や死体達の内ポケットを物色。纏まった現金を手にした後、ママチャリに跨り、事務所の裏ドアから逃走した。
組を次々壊滅させる義賊のデュラハン。
何故かママチャリに乗るソレは、いつしか無頼ママチャリと呼ばれた。
――さて。
デュラハンは盗んだ金を手にチャリを漕ぐ。
あと幾らあればバイク買えるかなあ。
そう思いながら。
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