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「ほんとうの定年後」 by坂本貴志
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この本で言いたいことは、副題に書かれているように「小さな仕事が日本社会を救う」ということで、もう少し細かくいうと「小さな仕事が定年後の高齢者の人生を充実したものにして、その高齢者の働きが労働人口が減少する日本社会を救うことができる」という内容である。
第1章において、定年後は支出額が減少することから、年金を除いた所得は少なくてすむ、支払われる金額が少ないため仕事から来るプレッシャーは定年までとは状況が変わり、よって仕事に対する前向きな姿勢が維持され、生活をエンジョイしている高年齢者が多い、という内容をアンケート結果等を用いて説明しており、説得力はあると感じた。
第2章は、定年後に小さい仕事で充実した生活を送っている具体例を7例紹介している。これまでのバックグラウンドや現在の仕事はそれぞれ異なるが、納得した人生を送っているなあ、と理解できた。そうした方々に共通する仕事として、著者は以下3点を挙げている。
・健康的な生活リズムに資する仕事
・無理のない仕事
・利害関係のない人たちと緩やかにつながる仕事
確かに、小さい仕事は若い世代や中年世代では、家族のことや家のこと等考えれば、金銭的に受けられないかもしれないが、定年後の人間にはそうしたマイナスの要素が小さいので、ある意味ブルーオーシャンの世界かもしれない。そう考えれば、老後破産とか暗い話もよく言われるが、意外とそれほど深刻に考える必要ないのかもしれないなあ、と思わせる内容の本だった。
評価は、統計資料を駆使して論理的に意見を展開しており納得性が高く、読みやすかったので、5/5でした。