君がいたこといなかったこと。僕がいたこといなかったこと。
この詩が心にズドンと重たく響いたライブがありました。
ツアー遠征の楽しみのひとつに"友達に会う"ことがあります。
それまで学校でできた地元や近隣の市町村の友達ばかりだった世界が、遠征をすることで、年齢も出身地もバラバラの友達が出来るようになりました。
それまで経験してきたことは違うけれど、一つの"同じバンドが好き"という要素だけで、ライブという同じ目的の中で出会うことで、打ち解けることが出来る人たちです。
それでも人間関係は様々あるので、その後も関係が続く人もいれば、その場限りの人もいますが。
わたしは幸運にも長く関係が続いている友人が数人でき、住んでいるところもバラバラで普段は遠くて会えないけれど"ライブで会える"という楽しみがあります。
今回はそのうちの一人、Aちゃんのお話です。Aちゃんとの出会いは私が遠征を始める前でした。まだ地元のライブにだけ行っていた頃です。
その頃はまだライブのチケットが重複当選してしまうことがありました。今は厳重なので本人と同行者の個人情報も申込時に入力しますが、その頃はまだ個人情報の登録は当選者のみで、譲渡も可能だったんですよね。
Aブロックが4枚、Fブロックが2枚という手札。
どう捌くか悩みました。とりあえず、わたしと一緒に行く予定の友達(Y1)で、Aブロックを2枚。他の友達に聞いたら1人だけ行ける子(Y2)がいたのでAブロックを渡し、残るはAブロック1枚とFブロック2枚。
Y2は一緒に行ける子は居ないとのこと。
ここで浮上してきた譲り先候補、Y1の後輩くんたち3人!
3人!ちょうど3枚!やったー!
と喜べるはずもなく……手札を再確認。
残っているのはA1、F2。
さてどうする!
後輩くんたちは3人一緒がいいという。それはそうだ。気持ちはわかる。
しかし、わたしたちもAブロックは譲れない!!
ここは意地でも譲れない!!非道だと言われようが譲れない!!
ということで、ネットの力を借り交換募集をかけました。
『譲:Aブロック1枚
求:Fブロック1枚』
なんとも奇妙な交換募集の出来上がりです。
わたしだったら何か裏があるのか?と怪しんでしまいそうです。
しかし、そんな奇妙な交換に名乗り出てくれたのがAちゃん!
Aのチケットが手に入るのなら、と迷わず手を挙げてくれたそうです。
怪しまずにいてくれてありがたいことでした。
交換方法どうしましょうかと相談を始めたら、なんとAちゃんの居住地は開催地とは離れていることが発覚!Aちゃんは遠征の先輩でした。
そういうことなら当日受け渡しにしましょうと決まり。あとは当日を待つばかり。後輩くんたちにも訳を話し当日まで待ってもらうことに。こればかりはこちらを信じてもらうしかなく心苦しかったですが、よく信じてくれました。
そして当日!と言いたいところですが、一日遡り前日の夜。
奇妙な交換会に奇妙なトラブル勃発です。
いよいよ明日だー!とそわそわ夜ご飯を食べている頃、Aちゃんから連絡が届きました。届いたメッセージを開いてみると
「チケットを愛犬に食べられてしまいました」
の文面が……。
え……!?
た、食べ、食べられた!?!?
そんなことある!?!?
食べられたという衝撃と明日のチケットどうすれば…!?の不安と混乱で脳内に軽く宇宙が広がりました。
Aちゃんから送られてきた画像を見ると、そこにはビリビリと破られたチケットの残骸。
「ほんとだ、食べられておる……」
なんてどこか冷静に画像を見てしまうわたし。
しかし画像をよく見てみると、幸いなことにチケットだったものにはツアータイトルとライブの日程と会場、そして最重要であろうブロックが記載されている箇所が残っていたのです。
奇跡としか言いようがないチケットの残滓。
そこでAちゃんから「明日会場で交渉するのでそれまで待って欲しい!」との連絡があり、我々もそれに賭けることにしました。後輩くんたち、ギリギリまでハラハラさせてごめんよ。
ということで、待ちに待った当日!
Aちゃんのチケット交渉は無事に成功!
仮チケットをもらい、それを後半くんたちに譲渡。
全て丸く収まり最高のライブを全員で楽しめました!最高!ありがとう!
後輩くんたちはこれが初ライブだったらしいので、本当にハラハラしていたと思います。無事に参戦できて良い方で記憶に残すことができてよかったです。
そんなこんなな波乱万丈なAちゃんとの出会いは今では笑い話。
その後わたしも遠征をするようになり、Aちゃんと会場が同じになることも多く、いろいろなところへ一緒に行きました。お互い遠征の地で観光も一緒にしたり。楽しい記憶が思い出の中で幾つもキラキラ輝いています。
Aちゃんとの出会いから数年後。
冒頭の歌詞が胸に突き刺さるライブがありました。
それは突如開催が決定したバンドの記念ライブでした。
当然の如くチケットは争奪戦。
激戦の中、わたしは圧倒的な敗北をしました。
申し込んだチケットは全滅。
記念のライブなんて絶対に行きたいのに!
諦め悪くチケットがない!と嘆いていたら、Aちゃんから1枚あるよとの連絡をもらいました。神様かと思いました。ありがとう。
これで記念の日を一緒に過ごすことができます。
本当にありがとう。
と嬉し涙を流しながら会場へ向かいAちゃんと合流。
チケットの譲渡が終わり、よし一緒に参戦だ!
と思っていたのですが、その日Aちゃんは暗い顔をしていました。
それもそのはず。どうしてもやむを得ない事情で今日は帰らないといけないのだと、今日のライブは参戦できないのだと言うのです。
もう一枚も他の人にこれから譲りに行くのだと。
抽選にハズレ続けたわたしがAちゃんのお陰で参戦できるというのに、当人のAちゃんが参戦できないなんて、こんなことあるんですか。
本当に悲しい。
こんな悲しいことが起こるんですか。
どこに向けたらいいのか分からない悲しみを抱えながら、
面の皮厚く、わたしは会場に入りました。すみません。
そこで演奏された『R.I.P.』
なんで今日、この曲なのか。
この日に至るまでの経緯と今日起きたことが頭を巡り、いろいろな思いでグサグサと刺されながら聴きました。わんわん流れてくる涙は止めらませんでした。
この日、この曲を、わたしはAちゃんを想いながら聴きました。
今でもズドンと心に重たく残っています。
悲しみと感謝を忘れずに記憶に残しておきます。
ライブに行けることに感謝をし、これからも可能な限り赴きます。
Aちゃんとは今でもたまに会います。
お互い変わらずに好きでいられることが嬉しいですね。
何かが違っていたら、あなたがいなかったかもしれない。
わたしがいなかったかもしれない。
これから先も変わるかもしれない。
でも今一緒にいられることが幸せなんだ。
居てくれること、居てくれたことが嬉しいんだよ。
そう思えたら、思ってもらえたら、幸せですね。
その日のライブで出会う人たちは一期一会かもしれない。
それでも、その中に今後も長く付き合いが続く人がいるかもしれない。
いろんな人と出会うこともライブの楽しみだと思います。
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