どこの誰でもない一人のジャパニーズ
昨日は久しぶりに夜の渋谷へ繰り出した。
用事がある時はだいたい昼間に済ませるようにしているのだけれど、今回は観たい映画が都内で2ヶ所でしか上映がなく、さらに夜しか行けるタイミングがなかったので仕方がない。
久方ぶりの夜の渋谷は、人、人、人.人.人.人人人人人……∞。
昼間でも人が多いことには変わりないのだけれど、夜の方が陽気?な方が多い印象で圧に押されがち。そして今では大半がおそらく外国人観光客。
スクランブル交差点を、何かの儀式のようにスマホを掲げ、もしくは自撮り棒を伸ばし、「Whoooooooo!」と渡っていく。旅行中で特別に昂揚しているということもあるでしょうけど、賑やかな街と掛け合わさると、横断歩道さえアトラクションだ。
盛り上がっている外国人観光客の間を縫うように歩き、数知れないムービーそれぞれに一瞬ずつ映り込み、どうにか渡り切る。各岸には名物交差点をバックにポートレートを撮影している方々もいる。そこにもちらほらと映り込み、先を急ぐ。どの程度写っているのだろうか。映り込み不可避だ。
よく海外旅のレポなどで「全く知らない街とそこで生活するどこの誰とも分らない人々」という写真があると思う。正しくそれになっているのだろう。彼ら彼女らが旅を振り返り観る写真の中で、どこの誰とも知らないジャパニーズの一人として存在しているのだろう。変な瞬間が映り込んでいたら、笑いの対象になるかもしれない。どこの誰とも知らない人たちへ笑いを届けられるのなら、それも良しかもしれない。存分に笑ってくれ。
なんてネガティブが暴走するので、夜の賑やかな街は苦手。
でも、そんなことも言っていられない。
映画を観に来たのだ。
ミニシアター系の作品は公開期間が短いものも多く、いつ上映終了するか分らないので最優先で観るために夜の渋谷に繰り出したのだ。実際タイミングが合わずに観られなかった作品も多い。
館内は夜の渋谷とは思えない静けさ。
落ち着く。
とても、落ち着く。
一人、また一人と同じ作品を観に来たであろう人が増えていく。
けれどみな騒がしくはない。
居心地がいい。
知らないもの同士、一人、一人、一人。
落ち着く。
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