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つよつよ野球漫画『球詠』を布教したい

この記事はかなしろ(Twitter:@kanash_ill)主催のアドベントカレンダー、12/02(土)の記事になります。

※12/07(木)にももう1度記事を提出しますが、その際は別の名義のnoteを使い、全く違うnoteを書きます。アドカレのリンクを貼っておきましたので興味がある方はぜひ読んでみてください。(宣伝)

セリフやページを引用している箇所が複数あります。引用元ページ数に関しては紙本ではなく、電子版のを元にしているため、紙のものとは数ページずれている場合があります。ご了承ください。
また、筆者に野球経験はないため、素人目線での話になります。経験者の方が読むとここおかしいぞ!ってなる文章等あると思います。ご容赦ください。


はじめに

球詠ってどんな作品?

球詠』(たまよみ)は、マウンテンプクイチによる日本の漫画。『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)にて、2016年6月号より連載中。話数カウントは「第○球」。

球詠 - Wikipedia より引用

これだけじゃ正直なんもわかりませんね。
端的に言えば、「女子野球」を主題とする漫画です。そして百合です。百合です。
(大事な事なので二度)

2023/12/02時点で全14巻。万が一このnoteを読んで、読んでみようかなって気になった方はまず6巻までをレンタルなり購入なりすることをオススメします。
出来るだけ6巻までの内容で布教したいと考えていますが、割と逸脱すると思います。

アニメ化されてたよね?

そうですね。アニメ化されています。
世間一般では恐らく失敗のレッテルを貼られている作品かと思います。無茶苦茶な納期で仕上げさせられたためにちょっと仕方ない部分はありますが……。

と、少なくとも、アニメはお世辞にも良い出来だったとは言えませんが、原作は本当に面白い作品であり、とてもオススメしたいのでこの記事を書いていたりします。

舞台の方は見てない以上知らないのでノーコメントで……

面白いポイントは?

その1、スポーツ漫画にありがちな根性論一辺倒な作品ではない

(ありがちとは書きましたが、当然ですが必ずしもそうではないという事は留意してください。この作品は違うぞ!という指摘もやめてください。)

昨今のオタク(クソデカ主語)がスポーツ漫画を避ける理由はいろいろあると思いますが、その内の一つに「根性論が嫌い」というところがあると思います。(偏見)

この作品では明確に根性論で語られるシーン(練習時などの身体作りなどどうしてもそう見える部分はありますが……)は、現状では14巻の合宿くらいしか存在していません。ただし、それも一読者の自分から見ても理にかなったものです。逆にそこまで読んで頂けたらきっと理解出来るタイプの内容です。

では根性論で語られていない例を挙げると……

「1試合で飛んでくる打球の数はせいぜい3本4本、その多くは二人でもアウトに出来る打球なんだよ」
(中略)
「今できるプレーをミスなくできれば、必ず勝率は上がるってことを忘れないでね」

3巻p.41〜42 対影森高校戦直前の川口芳乃のセリフより引用

根性論でいえば、「もっと守備を磨け!」というような内容になりがち(偏見)です。しかし、この作品はそのようなセリフはあまりというかほぼないに等しいと思います。

そういう所は別の巻での対戦相手のメンバーによってこのように評されています。

「それはない…ヨミの存在を知って全試合くまなくみたけど、初々しくて柔らかい印象のチームだった」

11巻p.18 対咲桜高校戦直前、咲桜高校にいる中学時代の武田詠深の元チームメイトのモノローグより引用

少なくとも、根性論ガチガチで鍛え上げたチームが「初々しくて柔らかい印象のチームだった」とは評されないと思います。

その2、戦術やデータを重視した野球

ここ最近、中日ドラゴンズの立浪監督が送りバントを多用することでファンから非難の対象になってたのは記憶に新しいと思います。

例えばノーアウト1塁で送りバントをした場合、投手などの打率が著しく低い打者等が行うなど一部の場合を除いて得点期待値が下がると言われています。『球詠』でもそういうシーンがないわけではありませんが、話が進むにつれてそういうシーンは減っていきます。

「けれどうちの守備力投手力を考えると強攻のリスクもかなり有る。熟考した結果の安全策……片やこちらは一塁を作ればノータイムでバント……」
(中略)
「強攻のほうが期待値が高いはずなんですがね……」

4巻p.171 対梁幽館高校戦 梁幽館高校戦略マネージャー高橋友理のモノローグより引用

「思えば初回のバントのサインずいぶん悩んでた…」

6巻p.40 対梁幽館高校戦 藤田菫のモノローグより引用

「後悔はない…ここは期待値的にも多分バントで正解だ」

6巻p.57 対梁幽館高校戦 川口芳乃のモノローグより引用


戦術で雁字搦めになってしまう川口芳乃 6巻p.47 対梁幽館高校戦より 引用

他にもデータ・戦術面で語られるシーンは多く、参謀役として登場する川口芳乃の引き出しが非常に多いため、勝ち負けは置いといても毎回違う戦い─敢えて撃ち合いに持ち込む、敢えて投手戦に持ち込むなど─を楽しめます。

その3、川口芳乃という存在

作者にとってはいわゆる解説・指南役と思われますが……。
素人目線では、彼女の存在が話の理解しやすさを引き立てているように感じます。
正直、彼女が存在しなかったらこの話成立しないですし、球詠が球詠たらしめている存在だと思います。

かといって、「感情がない」、「作者の人格が表に出ていると推測される」などと感じさせるシーンがないので、彼女にも感情移入しやすいのも良ポイントです。

その4、人間関係の多彩さ

それなりに生々しいシーンもあれば、同性間での恋愛感情を感じさせるシーンもあります。尤も、きらら漫画にありがちですが、男性と思わしきキャラはモブでも存在しませんが……

前者の例としては相性が悪いと明言されているキャラ。

「稜と希って相性悪そうじゃない?」
「こういう機会に仲良くなって欲しいんだよね」

9巻p.30 藤田菫と川口芳乃の会話より引用

この2人は割と絡みが少なめです。希に関しては普段が割とおどおどしてたり、無愛想なタイプ、稜はある意味その真逆なので相性は実際良くないと思われます。

ある程度の規模になると、どういうコミュニティでも苦手な人物がいるのが普通だと思うのでそこはリアリティを感じさせます。

後者の例だとネタバレになってしまうシーンが多いですが、モブでもそれを感じさせるシーンがあるのでそれを1つ。

9巻p.129より引用

このモブ2人は手を繋いでいます。
恋人繋ぎではないので、正直これだけで「この2人は交際している」とは断言しにくいですが……。

9巻p.130より引用

次のコマです。このシーンを見ると詠深は珠姫を想像し、顔を赤らめています。
つまり、そういうことですよね……?

登場キャラが多い故、かなり色々な関係性が見えてきたりするので、そういうシーンに着目して読むのもきっと面白いと思います。

百合的には特に6巻のよしのぞと11巻の珠詠が美味しいです。やっぱよしのぞ最高!!

その5、対戦相手の描写

スポーツ漫画ではプレーする選手の心理描写はとても大切でしょう。そういう描写がなければ、作者にとっては重要な内容だとしても淡白な展開になりがちです。
この作品も数多あるスポーツ漫画と同様、試合中の心理描写には焦り、覚悟等いろいろなものが描かれています。

「ストライクを取られるとわかっていて、なぜ振らないの!」

12巻p.143 対美園学院戦、美園学院投手園川萌のモノローグより引用

「必勝の気迫…私は打ち取られる……!?」

8巻p.39-40 対柳大川越戦、中村希vs大野彩優美、中村希のモノローグより引用

挙げたのは一例です。
これだけでも彼女らがどのような人、どのようなプレーをしたいかが伝わってくるところはあると思います。

個人的に、特に注目して欲しいのは試合に負けた後の描写です。

6巻p.119より引用

このシーンは詠深達の新越谷高校が強豪・梁幽館高校を倒したシーンです。
梁幽館キャプテンの中田奈緒の「いこう、整列だ」がとてもサマになっていて良いですね。

アニメを見た方、あるいはここまで読んできた方なら、彼女がこのような対応をするのは何ら不思議ではありません。一貫して良い精神的支柱として描かれているように感じますし。こんなキャプテンなら地獄の鍛錬も耐えられるわマジで

少しだけ試合中の彼女の言動などを見てみると……

「完全に狙われていましたね、私の責任です」
「こういうこともある。仮に狙われていても打ち取れる自信はあったんだ。ここは相手が上回った。ヤツを褒めるしかないだろう。

6巻p.76 対梁幽館戦、中村希に被弾後の中田-小林のバッテリーより引用

希に逆転弾を打たれた直後の会話です。被弾した責任をキャッチャーに押し付けず、自分の責任とする……そしてその上に対戦相手を褒める“強さ”も持ち合わせたまさに理想のキャプテンということが読み取れます。

「打て高代…高代と白井はこの夏初めて背番号をつけたんだ。もっとお前たちと野球がしたいぞ」
(中略)
「そしてやっと勝ち取った承認(レギュラー)。でもまだ2試合目だ。ここじゃ終われないし、まだ報われてない。」

6巻p.96-97 対梁幽館戦、最終回裏、中田奈緒のモノローグより

そして新越谷の選手から見た中田の人物評が……

「立派な人だったな…自分も最後の夏にあんな態度が取れるだろうか…」

6巻p.128 試合後、岡田怜のモノローグより

と、完全無欠の4番打者でエースであり、そして理想のキャプテンみたいに描かれる彼女ですが……。

6巻p.130-131 より引用

完全無欠に見える彼女も人の子です。
最後の夏に、2回戦で、自らのファーストフライで負けて悔しい、悲しいはずがないのです。

前ページを見る限り、後輩たちを励ましてから1人になったタイミングで……というわけです。
そういう所に彼女の人となりが見えると思います。

コレはあくまで梁幽館を例に「対戦相手の描写」について書いてみました。
他にも魅力的な対戦相手が多々登場します。例えば、この後メスガキが何名か登場するス。ん〜30点!w

その6、テンポ感の良さ

漫画に重要な要素の1つですね。
あんまりにもテンポが遅いと飽きてしまいますし、あんまり速いと前にも述べたのとは別にまた淡白になってしまいます。(もちろんテンポを遅くする事で興味を持続させ、脱落させにくくするという効果はあると思いますが)

そして、ここまで魅力を詰め込んであるんだからテンポ感も遅いに違いないと思った方もいるかもしれません。

が、そんなことはなく、軽快な掛け合いも多く、試合の展開以外での重苦しいシーンや停滞があまりないため、総合的に見たら少し早めのテンポで描かれているように感じます。
(ただ、詠深らの入学時から進級までが14巻、これを遅いと取るか早いと取るかは個人差はあると思います。)
(なお、これを書いてる本人は12巻までを一気読みし、以後リアルタイムで読んでいますがテンポが遅いと感じたことはありません。)

これくらいのテンポ感なら読みやすいって感じる人が多いのではないでしょうか?(偏見)

3巻p.89(紙本p.86) より ちょっとした掛け合いの例

捏造で張り合う詠深も吉川さんもとてもよろしいですね。
ん〜、90点だナ!

まとめ

ここまで読んでくださった方にはまず、お礼申し上げます。
こんな読みにくくて、思いつくままつらつらと書いた文を読んでくれるだけでも感謝というものです。

このnoteで球詠の魅力を伝えられた、とは言えないかもしれませんが、誰か1人でもこの作品に興味を持ってもらえたらなと思います。

よしのぞはいいぞ。6巻の例のシーンで昇天するしおまけでも優勝しちゃうんで本当に最高です。




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