今はなきあの宿
20歳の春、私の心はかつてなく揺らいでいた。
自由すぎる周囲の環境のせいか、好奇心に溢れていて、
見たい世界と会いたい人の為には命をかえりみないふしがあった。
出会いのようなものを求めたり、想像を絶する体験をしたくて、
湯水のように溢れるお金と時間が欲しかった。
それと同時に、授業でもバイト先でも、宅飲みのガールズトークでもグーグルで検索しても、
知りたいことや知らなくてもいいことが溢れている中で
本当に知らなくてはいけないことが、まだ残っている、と感じていた。
自分が生まれてきた理由や生まれなくてもよかった理由を考えると足がすくんで、電話でばあちゃんに泣きついて困らせたり、タイムライン上で病んではフォロワーを減らしていた。
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