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読んだ論文をカンタンに取りだせる!論文整理法のコツ

前回のnote記事ではPubMedを使った栄養疫学論文の検索のコツをご紹介しました。

研究を実施するとき必要な先行研究の収集は、まさにこのPubMedを使って行います。研究のときだけでなく、専門家がガイドラインを作るときにもこの論文検索と収集は行いますし(今はちょうど食事摂取基準2025年版の策定作業中で、大量の論文検索と収集が行われたはず!)、日常で使える食情報の根拠を探すことだって、PubMedを使えばできるんです。

さて、論文検索をして論文を収集し、それを読む、という作業を繰り返す習慣がついてきたら、「読み終わった増えてきた論文をどう整理していくか」が悩みの種になります。そんなときに役立つ、私の論文整理法をご紹介します。この情報も有料級!日常生活での情報整理にも役立ちますよ!!


●ID番号をつける

読んだ論文には番号をつけています。読み終わった順に1から、数字だけで番号をつけると重複のミスがなくてよいと思います。論文を収集した時点では番号はつけていません。どれが読み終わっていて、どれが読み終わっていないか、わからなくなるのを防ぐためです。読み終わったところで番号をつけています。

このときにやってしまいたくなるのが「分類」すること。ちょっとこってみて、「01-は食事調査法関連、02-は食事と健康の関連…」などとやり始めるのは注意です!読む論文が増えてくると、だんだん「01と02のどっちに分類したらいいんだろう?」というものが出てきます。そんなときに迷う時間がもったいないですし、後で「こっちに分類したと思ったのにない!」という場面がでてきそうな気がします。私自身は分類しないことをおススメします。これは、私の指導教官だった佐々木敏先生から伝授されたテクニックで、弟子たちに受け継がれているように思います。

●論文をデータ化して一覧に

番号をつけたら、その論文のタイトル、著者名、雑誌名、巻ページ番号、PubMedのIDなどの「論文データ」を入力したデータベースを作ります。エクセルでも十分作ることができると思います。または、最近では、無料で使える文献管理ソフトというものがあります。私の指導教官だった村上健太郎先生の著書(文献1)では、無料で使える文献管理ソフトのひとつとしてMendeley(ELSEVIER社)が紹介されています。そういったソフトを使うと、PubMedの論文情報を簡単な操作で取り込むことができるため、わざわざ自分で論文のタイトル、著者名…などの論文データを入力する必要がなくて便利です。一方で、佐々木敏先生は、自分で入力することは、その論文の情報を改めて頭に焼き付けられるため、読み忘れ防止になる、ともおっしゃっていました。

私の場合は、ある無料で使える文献管理ソフトを使っています。ただ、そのソフトは最近バージョンアップがされておらず、そこまでおススメできるものではないだろうと思っています。そのため具体的な名前は紹介しませんが、論文を番号で管理し、論文データを一覧にしておくとこんなふうになる、というイメージをお伝えするために、管理ソフトの画面を紹介しておきます。

読んだ論文に番号をつけて一行にその論文データを入力してあります。
個々の論文情報画面で詳細情報を確認することもできます。


●論文データ化のワンポイント

たまに「読んだこと」を忘れて、重複して論文を登録してしまうこともあるかもしれません。エクセルを使う場合で操作に詳しい人は、PubMedのIDを重複して入力するとエラーメッセージが出るようにしておくこともワザかなと思います。

ちなみに、私が使っている無料ソフトの場合は、重複してPubMedからデータをインポートすると、「重複しています」というエラーメッセージが出てきます。こういう機能があるのはありがたいですね。

●論文は電子化してファイル名に番号を

読んだ論文のほうはスキャンして、PDFファイル化して保存していきます。最近ではインターネットを経由して、最初から電子ファイルPDFの形で論文を手に入れることも多いので、そのまま保存しておくことが多い気がします。紙で入手したものは、PDF化するようにします。そして、PDFファイルのファイル名に、自分がつけたID番号をつけて、ファイル名で番号が分かるようにしておくと便利です。このファイルを、パソコン上の読み終わった文献を入れておくフォルダの中に保存しています。少し小分けにしておくと、探すときに簡単かなと思います。

参考文献フォルダを作成して番号をつけ…
そのフォルダの中にID番号をつけた論文PDFファイルを保存

所属していた研究室では、研究室に保管されている論文は、紙が必須で必要に応じて電子ファイルも保存、という感じでした。保管場所があれば、紙の論文を持っておくこともできますね。電子ファイルは何かのトラブルで削除されたらもう戻ってこないこともありますから…。

●取り出すときは?

読み終わった論文を、その後「こんな論文あったような…」「あの論文になんて書いてあったかもう一度読んでみたい」と思うときもあるでしょう。そのときはまず、論文データベースを開きます。そして、「検索」の機能を使って、その読みたい論文が何番かを探ります。タイトルが思い出せればタイトル、著者名が思い出せれば著者名で検索することができます。そういったことが思い出せないこともありますよね。そのときのために、その論文に関するキーワードや、自分がどんなときにその論文を収集したのか、といったことを、論文データベースに、備考欄みたいな列を作って入力しておくと、検索の助けになります。苦労して論文データベースを作っていれば、その論文に関係がある何かのキーワードはひとつくらい思い出せるものです(たぶん)。

●まとめ

せっかく集めた情報は、自分の得た大切な知識となります。少し忘れてもまた見返せるように、整理して保管しておきたいものです。論文の場合を例にして整理術をお伝えしました。論文に限らず、日常生活でも活用できるテクニックではないでしょうか?(私の場合、最近増えているたくさんのパスワード、読んだ本、忘れておきたくない重要メモなど、似たような方法で整理しています。)

論文を一度読んで完璧に覚えていられる人は少ないと思います。また読みたいと思ったときには何度でも、短時間でその論文を取り出せるように整理して、何度も読み込んで知識を定着させてくださいね。

【参考文献】
1.村上健太郎. 基礎から学ぶ 栄養疫学研究. 建帛社. 2022

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