医療DX入門7 ここまでのまとめ

まずは感謝

 2024年2月1日に第1回目を投稿してちょうど1年が経とうとしています。本来であれば毎月1回記事をあげて、半年程度で終わらせる予定が1年もかかってしまいました。
 書いているうちに自分に知識が足りないことが気づいたこと、改めてTOGAFやPRINCE2, PMBOKなどの書籍で勉強して知識を深められたことは何よりも収穫でした。
 ここまで読んでいただいて誠にありがとうございました。GAPSフレームワークについての解説は前回の医療DX入門講座6で終了しますが、補足事項もあるので今度こそは月1回以上のペースで記事を書いていきたいと思います。

あらためて医療DX入門講座のきっかけ

 前職で地方自治体の行政職や病院の情報システム担当者を対象にDXについての研修を担当していました。それまで、外部講師を招いて地域での医療情報化事例を解説してもらい、それを学ぶという座学主体のスタイルであったものを、GAPSフレームワークを導入してグループワークで例題に取り組んでもらうという演習形式に切り替えました。自分自身で手応えを感じてはおりましたが、前職を離れることになり担当を外れました。その研修も昨年から廃止になったと伝え聞きました。
 GAPSフレームワークを使ったDX研修は国内では他になく、実践的であると確信しておりますが、その場がなくなってしまったのは残念でした。はれて前職に気兼ねすることなく、医療DX入門講座をこちらでもやることができると思って、現職場や知人の伝手でどこかの大学や研究機関で再開できないかとさぐってはみたものの、賛同は得られませんでした。
 昔であれば諦めるところなのでしょうけども、今は自分の意見を述べる場所はどこにでもあります。Noteで記事を書いてみようと思ったのはそういうきっかけでした。
 それまで、アカデミアであることに忠実であろうと心がけ、発表の場を国際学会と英文雑誌を主体としていました。九州大学第一内科時代にうけた「論文発表は英語でするものだ。」との教えを忠実に守ってきたことと、学術業績とメディア露出・知名度のバランスが崩れてしまうことがあまり良くない結果に至るのを医療情報学界隈で見てきたからです。結果として、自分の国際的な知名度の割に国内での知名度が低いというのも、まぁ、そんなもんだろうと思ってきました。
 しかし、50歳を超えて残りのキャリアを考えると国内でのプレゼンスを高めておくことも必要だなと感じました。日本語での業績もあったほうがいいと就職活動をしている時期に思いました。
 それでも、内容はあまり簡単でとっつきやすいものにしようとは思いませんでした。個人の経験や考えを元に日本の医療DXの遅れをあおり立てるような記事や、はやりの技術をわかりやすく取り上げる記事の方が読者も増えるだろうとは思いましたが、それは目的とするところではありませんでした。
 医療の課題に正面からぶつかり、DXを推進するというストロングスタイルに美学を感じ、こだわりました。わかる人にはわかるだろうと信じてはおりましたが、一方で誰も読まないかもしれないと思いつつ始めた連載ではありました。「スキ」が入るとなんか素直に喜んだりした1年間でした。この記事がきっかけで、Dr Prime Academiaさんから声をかけていただいたのも正直うれしかったです。

今後について

 Dr Prime Academiaで30分ずつの講義にまとめる間にもう少しわかりやすくする工夫が見つかったりしましたので、適宜内容は改良していきます。
 医療情報標準規格についても現在の問題点について正しく理解してもらえるような記事を書いていきたいです。
 DXを達成するための基礎理論についてお話ししましたので、例題を元にどのように考えていくかということについてもやっていきたいです。
 医療分野でDXが進められつつあるとは言え、十分な予算があるわけでもなく限られた人員で頑張っている皆様の少しで助けになるような記事を書いていきたいと思っています。 大分先のことですが最終的には「医療情報学」の教科書としてまとめられればいいなとも思っております。
 第1回目で触れたように医療情報人材は人手不足だ求められていると言われてはいるものの人材市場の価値は高くありません。その理由の一つとして私たち以上の世代の医療情報人材への評価があると思います。このことで若手の皆様には迷惑をおかけしていると憂慮しています。この記事をきっかけに医療DXに携わる人の知識やスキルが向上していくことで、みなさまの評価や待遇が向上していくことを望んでおります。
 何しろそれが私の市場価値を高めることでもあるという私利私欲でもあります。

2025年1月31日
小林慎治