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聴こえますか
ちょっと前までうるさいくらいだったセミの鳴き声もしなくなり、道端に天寿を全うした(のかな?)亡骸がころがる頃になった。これから秋の虫の声が聞こえる季節が来る。
私事だが、自分は聴力が悪い。どのくらい悪いかというと補聴器を付けないと会話が成立しないほどだ。これは生来のものではない。幼少のころは、移動販売車から流れる流行歌を聞きつけて、母にその到着を知らせていたという。小学生のある夜に、母が虫の声が聞こえることを知らせたときに、「聞こえない」と答え、初めて自分の聞こえが悪いことを自覚した。
それからは、正常(と書くのも癪だが)な人よりは悪いが、補聴器を使うまでもない宙ぶらりんの状態が長く続いた。むしろこの頃が人とのコミュニケーションをとるのに苦労した記憶がある。
声が大きい人はありがたかったが、反対に小さい声はしばしば聞き逃した。社会人になって一番いやだったのは電話。音量の調節はできない旧型で、しかも赴任地は農村部。声が小さいうえに訛りがひどくて、話していることの半分以上はわからなかった。しかも業種柄、顧客情報を取り扱うことが多いものだから大声はむしろ御法度。最悪の環境だ。
その後、こどもが生まれて状況が変化した。自分になついてくれたのはいいが、みえないところから話しかけられたときに声が聞こえなかった。自分が意識していないうちに聴力が落ちていたのだろう。それがこどもには話しかけたことを「無視された」と感じたらしく、妻に「話を聞いてくれない」と訴えた。
補聴器を付けることには正直抵抗があったが、こどもと話がしたい、その一点で補聴器を付けることにした。その後は、日常会話には不自由することは少なくなったが、相変わらず、電話はその機械によって聴こえづらいものがある。最近は受話音量を調節できるものもあるようだが、普段使っていない受話器だと、聴こえづらいことがある。マイ受話器を持って移動するか、携帯電話でも転送できるようにすれば、もっと聴こえを気にすることもなくなるのではないだろうか?今度生まれてくるときは、もっと、丈夫でよく聴こえる耳が欲しい。