磯崎新『デミウルゴス』
磯崎新さんの絶筆、『デミウルゴス』を読み始めたのだが、読みにくい。天皇についての議論、沖縄についての議論はとりわけ晦渋である。きっと、このエッセイは、磯崎さんにとってラストメッセージとして書かれたものなのだろう。
タイトルの「デミウルゴス」とは、プラトンの『ティマイオス』にでてくる造物主のことで、磯崎さんが30年にわたって追いかけてきた概念だ。最後に、それがまた召喚されている。しかも、この論文は未完に終わっている。死期を悟った磯崎さんは何を考えていたのか?
たとえば、今回のCORVID-19について、磯崎さんはこう書く。
「都市」という反自然としての人工物に対しての、見えないレベルの微生物の反乱ではないか。(p.177)