手紙

2/19
うっすらとでも確実にそこにあった関西弁がなくなりつつあるのを感じる。結局その土地に属した言葉を使うのがなんとなく恥ずかしくなくて良い。そこにある恥じらいというのは、自分がぽっかり浮かんだ余所者である恥じらい。でも今となっては余所者言葉を使う地元民だから余計に恥ずかしい。



3/22
お元気ですか?
そんな言葉すらもう二度と伝えられない間柄になって久しいですね。
私は地元に帰ってきて、どうにかこうにか、自分で言うのも何ですが必死に踠いて生きております。あなたはどうでしょうか。

記憶というのは土地に根差していて、色々なことを思い出します。でも全て覚えている範囲のことだけで、私が忘れてしまったあなたに関する記憶は、あなたと二度と話せないという事実によって、それこそもう二度と、思い出すことすら出来ない、存在もしないようなものになってしまいました。

ひどく傷つけてしまいました。それはひどく。謝っても済まないほどに。許してくれ等とは言いません。せめて謝らせて欲しい。
私はわたしの弱さ故に、それを理解しないせいで認めないせいで、あなたを利用することになって、たくさんたくさん傷つけた。
本当に、ごめんなさい。

もうきっと会わない方が良いのでしょう。お互いにそれは分かっているはず。だからこうして言葉もかけられないほど遠く離れてしまった。離れたがゆえに忘れられなくなってしまった。

さようなら。どうかご無事で。

さようなら。



3/22 別便

お元気でしょうか。気にかけながら声をかけられない日々が続いています。

一年以上が過ぎておりました。あの日の夜空を私は大切に思い出します。

きっと変わらず忙しくしているのでしょう。もう察することも慮ることもいたしませんが、どうかお元気で。

またいつか縁の結ばれたときにお話ししましょう。たくさんのことを、少しずつ。




3/22 別便 2
こんにちは。随分とご無沙汰しております。
私は手癖が悪いので、一方的にあなたの近況を存じております。そっと表面をなぞるようで、その内実までは存じ上げませんが、色々な苦労や色恋の果てに夢を叶えた姿は、やっぱり尊敬できる姿のままなのだな、と思います。
その一方で、遠くから見て、もう魔法は随分昔に解けてしまったのだと思いもしました。
あの頃に戻れるとしたら、もう少し、あなたにはあなたを大切にして欲しい。
そのことによって、私もあなたに大切にされたかった。

あなたは私の元凶です。飽きるまで忘れない。これはせめてもの呪いです。
あなたが私を欠片ほども思い出さなくても、私はあなたを忘れない。


::::::::::::::


身辺整理のようなnoteでした。いつもの倍ほど利己に振った使い方をしています、すみません。読んでくださった方はありがとうございます

いいなと思ったら応援しよう!