平均的な

全部の、平均値みたいな人間になりたかった。


優れた才能があるわけじゃない。自分のことしか分からないので、自分は所謂凡人のフレームにしっかり型どられた人間だとは思う。けれども、それとは別に、平均値みたいな人間になりたい。

もちろん才能無しからすれば、才能ってあって困るものではないと思う。それが自分のやりたいことと一致しなくて悩むことがある、と聞いたことがあるけれど、それすらも恵まれた悩みだなと受けとる程度のひねくれ具合である。

平均値みたいな人間。本当に、秀でたところもなければ落ちぶれることもなく、なあなあに毎日をこなすことが許されて、それに自分自身でも疑問は抱かないような。
実在したとして、それになれたとして、全然おもしろくないなと思う。けれども、抱えた欠陥や与えられなかったものばかり、生きているだけなのに見えすぎてしまって、そういう面白くもなんともない人間になりたくなってしまう。面白くもなんともない、特徴が無いことが特徴みたいな人間。それになって、誰の記憶に留め置かれることもないまま、消えたことにすら気づかれないで、フッとなくなってしまえたらいい。


アラームが鳴る。寝ぼけ眼でスワイプして静寂が訪れる。
全部夢だった。
せめて目を覚ます程度のことは出来てしまう、そういう事実すら、どこかひんやりと私を包んでいる気がした。

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