乗り換え、人生 2
放課後の川沿いにて。
「うわっ」
バチン、とかパチン、みたいな、意思に反する音と一緒に弦がしなだれる。買ったばかりのギター、共に掻き鳴らす友人とか仲間もまだ居ない。鳴らしたい音はあるのに指が思うとおりに動かない。頭の中の俺は既に満員のステージの上で汗を光らせているのに、現実は音楽室はおろか部室もない、部室どころか部活もまだ存在しない。憧れだけが光の速さで上京していく。今日はもう音を鳴らしながらの練習はできない。ピックを丁寧に仕舞ってケースを背負う。ギターを買ったから、リュックを使うのをやめた。運指の練習でもしようかな、とか思って、やっぱり一駅前で降りて弦買って帰ろうかな。今はまだ、一人でも。あのバンドみたいに、いつか、10年前から一緒にいますとか笑い合えたりして。カッコつけなくてもカッコいいからあの人たちはズルい。駅に向かって歩く。もし俺がここでMV撮るなら、どんな風に歌おうか。どんな風にカメラを動かして貰おうか、そんなこと、誰かと話し合ってみたいな。踏切、犬の散歩する知らない女の子、ユニクロが最先端のオシャレみたいなこの町、どこまでもベーシック。いくら見上げても東京タワーは見えない。改札を抜けても混まないホーム、イヤホン、好きな音楽。歌うのが好き、大好きなバンド、あの人たちみたいになりたくてギターを買った。
今はまだ、憧れでも。いつか、俺にとってのあのバンドみたいに、誰かにとって俺の歌が、音楽の代名詞になれたら。
続
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あおくせ~~!
良い意味で若さを忘れたくないです