朝焼け

この部屋に越してきて数年になるけど、この部屋の窓から見る朝焼けが綺麗だと気付いたのはいつだっただろうか、と振り返る。はっきりとしたことは覚えていないけれど、漠然とした不安や悩みと戦った涙の後だった気がする。いつだったかな、思わず窓を開けてしまうほどに綺麗だと感じたことだけは覚えている。


明るい場所や、嫌に明るいだけの空気感が苦手で、私にとって朝は寝る時間で、活動するには向かない。

勿論、朝の空気の清々しさや早起きすると1日がとても長くて、それだけで有意義に感じられることは経験として理解している。

でも、朝ってやっぱり「おはよう」から始まってしまうから、なんだか苦手だ。

学校で言うことを良しとされ、しないことを悪とされてきた習慣は、今でこそ何も感じないように言えるようになったけど、ここにいることを認め合う合図のような気がして息苦しい。


でも、散々泣き腫らした夜も結局どうでも良さそうに日が昇って、そしたらなんだか「いいかげん寝てしまいな」って言われている気になって、少しだけ安心するように、呆れ半分で眠りに落ちていく。多くの人にとって微睡みの色は夜かもしれないけれど、私にとっては白く柔らかな色をしている。


心が沈んでひとりぼっちだった時にはその柔らかな色を残酷だとか暴力的だと思っていた。今でも時々そう思う。

結局は、夜の纏う独特な空気にあてられて、センチメンタルを許されていたいだけなのかもしれない。自分の存在を許してくれる空気感は、日の光であれ人間関係であれ居心地が良いから。


いつかこの部屋を出ていくときは、ここから眺めた朝焼けの写真を撮ろうと思う。今度は、離れがたくて、惜しくて、泣いてしまうかもしれないな。

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