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故人様の尊厳とご家族の心を守る 「エンバーミング」の話
皆さんは「エンバーミング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
エンバーミングとは、故人様の腐敗などを防ぎ、
衛生的に保存するための技術のことを言います。
このエンバーミングは、故人様の人としての尊厳を守るだけではなく、
みおくるご家族の心を守る技術でもあります。
今回はそんな、あまり知られていない
エンバーミングについてお話ししようと思います!
エンバーミングとは?
先ほど前述したように、エンバーミングとは
故人様のお体の防腐や殺菌、保存に加え、修復なども目的として
専門技術や資格を有する「エンバーマー」が行う特殊な処置です。
ご遺体は、雑菌やウイルスなどの病原体に感染している可能性があり、
状態によってはご家族が触れるのは危険な場合もあります。
先ずはエンバーミングで、その感染リスクを回避する事が重要です。
また、損傷が激しい場合などは、ご家族をはじめ
会葬者などお会いする方々の心に傷を残してしまう事もあります。
損傷部分を修復し、生前に近いお姿に近づけることも
またエンバーミングの重要な役割です。
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エンバーミングが必要なケースとは?
持病を抱え、治療の末病院で亡くなる場合など、
多くの場合はエンバーミングの処置までは必要ありません。
では、エンバーミングが必要なケースはどのような時なのでしょうか。
主には下記のような4つのパターンです。
■ 腐敗や感染症を防止する必要があるとき
エンバーミングでは、ご遺体を丁寧に消毒・殺菌し、
腹部を切開し血液などの体液を吸引する作業が行われます。
この作業により、ご家族様や葬儀業者などが故人様に安心して
触れられるようになるのです。
また、体液を吸引後は保全液(防腐固定液など)を注入します。
これにより、お身体の腐敗を防ぐことができます。
■ ご火葬まで時間がかかるとき
故人様がご逝去されてから、事情によりご火葬まで時間を要する
という場合があります。
通常のパターンではご逝去からご葬儀・ご火葬までは数日なので
ドライアイスや専用の冷蔵室でのご安置で問題ありません。
しかし、ご火葬までかなり時間が空く場合は、エンバーミングの
防腐処置を行う必要があります。
また、この防腐処置を行えば常温での長期保存が可能になります。
■ 修復の必要があるとき
事故や自殺など、亡くなる状況によっては
故人様のお身体が損傷している場合があります。
メイクで隠れる程度であれば問題ありませんが、
メイクでは隠れないほどの損傷があるときなどは、
ご家族に最後に会ってお別れしていただく為にも、エンバーミングの
専門技術での修復作業が必要になります。
■ 海外から空輸で搬送する場合
海外で亡くなられた故人様を空輸する際、航空機内では
ドライアイスが使用できません。
また、他国の病原体を持ち込む可能性もあるため、
エンバーミングを行うのが一般的です。
日本から海外へ搬送する際にも、エンバーミングが搬送の条件という
国もあるため、エンバーミングを行う事もあります。
エンゼルケアとの違い
以前「"あなたらしい"を求めて エンゼルケアを知っていますか?」
の記事でも書いた、「エンゼルケア」について。
処置も近しいエンゼルケアとエンバーミングとの違いは
どんな事でしょうか?
エンゼルケアとは、故人様のお身体に行う死後の処置のこと。
これだけ聞くと、エンバーミングと大差はないように感じますが、
エンゼルケアは一般的には病院の看護師さんや葬儀社によって行われます。
病気で亡くなった場合、点滴やチューブ類の処理や針刺跡の止血を行い
目や口を閉じ、口腔・鼻腔のケアを行って、清拭を行います。
その他、肌の保湿ケアや簡単なメイクなどをして身なりを整えます。
エンバーミングが体内のケアや殺菌・防腐処置まで行うのに対し、
エンゼルケアは故人様の表面の姿を整えることと言えます。
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エンバーミングの流れ
ここでは一般的なエンバーミングの流れをご紹介します。
ご遺体が到着したら…
① まず、故人様の洗浄・消毒を行う
② 消毒後に、全体的に保湿剤を塗る
③ 耳や鼻、口などに綿を含ませる
④ 腹部を切開して血液などの体液を吸引し、保全液を注入する
⑤ 消化器官に残っている水分、食物などの残置物を吸引し、
防腐液を注入する
⑥ 損傷部分を修復し、再度洗浄を行う
⑦ 服を着せ、納棺する (ここで納棺しない場合もあります)
⑧ ラストメイクを施し見た目を整える
簡単に書きましたが、前述した通り、これらの作業は専門資格を持つ
エンバーマーのみ行える処置です。
この作業をだいたい3~4時間程度で行うそうです。
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エンバーミングのメリットは?
エンバーミングまでの高度な技術を必要とするケースは
そう多くはないですが、メリットとしては主に2つです。
故人様のお身体をドライアイスで冷やさずに長期保存ができる
ドライアイスで冷却してお身体を保てるのも限界があり、
またドライアイスの当て方次第では、霜焼けのような跡が残ったり
肌の状態が悪くなることもあります。生前に近いお姿でみおくれる
故人様の状態によっては、生前の楽しかった記憶を上回るほどの
傷をご家族に残すと言われています。
通常のメイク等のみでは面会を断られる場合もあります。
料金は高額に!
今まで書いてきた通り、エンバーミングは
専門の技術と資格を持つエンバーマーだけが行える処置です。
当然ながら、処置自体も技術もそれなりに料金がかかります。
日本では、エンバーミングの料金は「日本遺体衛生保全協会」によって
定められており、平均で15~25万円ほどと言われています。
故人様の状態や搬送距離などによって前後しますが、
どの葬儀社でもこのくらいの料金はかかると言われています。
※遥かに上回る程の高額を提示された場合は他の葬儀社に
ご相談されることをオススメします!
通常のドライアイス冷却でご火葬までご安置する場合、
葬儀社によっても違いますが、ドライアイス料金や安置料が発生するので、
安置期間が2週間以上になる場合はエンバーミング処置を行った方が
安くなる場合があります。
火葬場の空きがない場合やご家庭の事情などで安置期間が延びる場合は
エンバーミングを検討されてもいいかもしれません。
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あまり知ることのないエンバーミングの世界。
専門知識や技術を必要とし、とても重要とされながら
あまり表立って紹介されることのない技術です。
この技術が必要になる故人様やご家族の為にも
技術や職業がもっと広がると良いなと思います。
現在、このエンバーミングを描くシーンも登場する、
「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」というドラマが
Prime Vide独占配信されています!
主役は米倉涼子さんで、豪華なキャスト陣が出演されており、
国外で亡くなられた故人様をご家族の元に搬送するお仕事が
描かれています。
毎回号泣必至なこのドラマ。
中の人は全6話中まだ3話しか観れておりませんが。。
命や存在の尊さ、故人様の尊厳やそれを守ることの大切さ
など、多くを教えて貰えるドラマです。
Amazon Prime が観られる方は、ぜひご覧ください。
なんだか宣伝のようになりましたが、
決してSKKは制作に携わっておません。。
ただ、多くの方々が死と向き合い、生に向き合って貰えたらと思います。
人の死と向き合うお仕事だからこそ、
自ら命を経つ選択をされる方が減ることを願っています。