子熊のボー
『子熊のボー』
ある森の中に、とても仲の良い子熊とお母さんがいました。子熊の名前はボー。ボーは泣き虫で甘えん坊な、とてもお母さんが大好きな子熊でした。
いつでもどこに行くにも、お母さんにぴったり付いて離れません。ボーは少しでもお母さんと離れると、不安で仕方がありませんでした。
ボーとお母さんはいつも一緒。
春には、お花畑でチョウチョウを追っかけて走り回り‥。
夏には、大きな川に水しぶきをいっぱい上げて、ザブンッと飛び込みました‥。
秋には、森で木の実をお腹いっぱい食べました‥。
冬には、小さなほら穴で体を寄せ合って、雪融けの春を夢見ました‥。
季節がひと回り巡っても、ボーの側には、優しいお母さんの笑顔がありました。お母さんも甘えん坊だけど、いつも無邪気なボーがとても大好きでした。
そんなある星がよく見える夜に、お母さんと輝く星たちを見上げていると、お母さんがいつもの優しい声で言いました。
「ボー。生きている時にたくさん良いことをすると、この夜空のお星さまのように、いつまでも輝く星になることができるのよ」
ボーは「ボクもいつかキラキラ光るお星さまになりたい!だから良いことをたくさんして頑張る!」
「そうねぇ‥。じゃあもっともっと強い子にならなきゃね」
「うん!!」
そしてボーはいつものようにお母さんに寄り添って眠りにつきました。
ある日、いつものように森の中をボーはお母さんと一緒に歩いていました。すると大きな木の陰から、猟師がこちらを狙っていました。
そして次の瞬間、「パンッ!!」と乾いた音が空に響きました。
「ママッ‥!?」
ボーのお母さんは撃たれる直前に猟師の気配を感じ、ボーを守るように猟師の前に立ちはだかったのでした。
そしてお母さんは、最後の力を振り絞り大きな声でボーに言いました。
「ボー‥早く逃げなさい!!早く!!」
「やだ!!やだ!!お母さん!!」
「早く逃げなさい!!」
ボーは何度も「ママッ!!ママ‥」と叫びながら、涙を流し必死に走りました。
どれだけ走ったことでしょう‥。いつも側にいてくれた優しいお母さんは、今はもういません。ボーはひとりぼっちです。
なんだかボーは、とても悲しくて‥、心細くて泣き続けました‥。
そして気付くと、もう辺りは日が暮れて真っ暗になっていました‥。
ふと夜空を見上げると、いつの日かお母さんと見た星たちがそこにありました。
その夜空の星の中に、ボーを優しく見つめる、とても明るい星がひとつありました。
その星をボーが見つめていると、夜の風にのって、ボーの耳にとても小さな声が聞こえてきました。
「ママ?ママなの‥?」
「ボー。私はいつもこの夜空からあなたを見ています。だからもう泣かないで元気を出しなさい。約束を覚えていますか?ちゃんとお母さんとの約束を守るのよ」
「うん‥。分かったよ、ママ。ぼくのこと見ていてね‥」
ボーはもぉ泣きません。だってお母さんはいつも空からボーを、見守ってくれているんですもの。
いつの日かボーもお母さんとの約束を守って、立派な星になるって決めたのです。泣き虫で甘えん坊なボーはもういません。
きっとボーは今もどこかで、ママのように夜空に輝く星になるために、冒険を続けていることでしょう。
~おわり~
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