【今日を切り抜く】権威性を纏った笑い
先輩たちが部室を出るとき部室に冷たい空気が吹き込んだ。僕たちは、談笑しながら部屋を出ていく先輩たちを静かに見ていた。扉が閉まると、暖房のおかげでどんどんと部屋は暖かくなった。部活の先輩たちがいる間はダンマリだった同期たちが、縛りつけたものを解放するかのように喋り出した。まるで担任が出ていき教室に残された小学生のように。僕たちのメンタリティの弱さを感じた。
先輩たちはハンドボールがすごく上手だ。それゆえか、雑多な会話の中で権威性を纏った笑いをふいに繰り出す。その積み重ねが僕らを押し潰していってるのかもしれない。
昨日後輩が部活を辞めた。同期のLINEグループは動かなかった。一年ほど前に入ってすぐ辞めた子がいて、その時は活発に同期のLINEグループが動いていたのだが。もはや後輩の下した決断を俯瞰することはできなかった。他人事ではない生々しい緊張感が僕たちそれぞれを襲っていたに違いない。こうなってしまえば、軽々しくこの話題に触れることはできない。
冷戦が始まった。もう辞めようと思う。そんなはっきりとは言わない。でも、みなそれとなく匂わせてはいた。この件で一気に次は誰だという問題が生じた。この先、どうなってしまうんだろう。