市販の水虫薬の2つの落とし穴
足が痒い。水虫かも?
水虫の薬を塗ろうかな?
水虫薬はドラッグストアでも簡単に手に入ります。
そのため、水虫かな?と思った時にまず市販の水虫薬を使う人は多いです。
しかし市販の水虫薬には落とし穴が2つあります。
1. 症状が悪化する可能性
2. 正確な検査ができなくなる可能性
1. 水虫薬により、症状が悪化する可能性
まず第一に。
水虫薬の主成分である「水虫の原因菌(カビ)を抑える成分」が、皮膚に刺激となることがあります。
そのため医療機関で処方された水虫薬でも、症状が悪化することはあります。
しかし市販の水虫薬では、より症状の悪化が起こりやすいと言えます。
その理由は、市販薬には処方薬にはない下記の特徴があるからです。
・処方薬にない市販薬の特徴①:主成分(水虫菌を抑える成分)以外の成分も多く含まれている
市販薬には、局所麻酔剤、痒み止め成分、メントールなど清涼剤など、痒みなどの「症状を軽くするための」成分が多く含まれています。
水虫薬の主成分同様、これらの成分もまた皮膚に刺激となりやすいのです。
・処方薬にない市販薬の特徴②:サラサラ液体やスプレー剤などの伸びの良い塗りやすい剤型が多い
伸びが良い剤型の薬は、(ベタっとした)軟膏剤に比べると皮膚への刺激が強めであることが多いです。
痒みに効く、塗り心地が良い、といった点は市販薬として必要な配慮です。
しかし、市販薬はあくまで軽い症状に対しての使用を想定されています。
どの程度までが軽い症状かという事は買う人側に委ねられているため、その判断は難しいところです。
また普通に考えて、症状が何もない時に水虫薬を買って塗ろうとはしません。
赤い、カユい、ガサガサ、グジュグジュ、など皮膚に何らかの症状があることが多いでしょう。
つまり一般的には、
水虫の薬を塗ろうとする=すでに皮膚に炎症あり、なのです。
炎症がある皮膚は、通常の状態に比べて刺激を受けやすくなっています。
だから「市販の水虫薬を塗って皮膚症状が悪化した」というのは日常の診療では結構よく遭遇するケースです。
赤み・グジュグジュなど皮膚症状が強い時には市販の水虫薬は使わないことをお勧めします。
そもそも、本当に水虫?
まずなぜ水虫だと思ったのでしょうか。
足がカユいから?
足のカユミ=水虫、は必ずしも正しくありません。
湿疹など他の皮膚疾患でも足の皮膚はカユくなります。
赤い・カユい・ガサガサ、これらすべて湿疹でも起きる症状です。
水虫でないのなら、水虫菌を抑える薬を塗る意味はゼロです。
※書いた通り症状が悪化する可能性はあります。
水虫はカユいとは限りません。
特に秋冬は水虫菌に感染していても症状は静かで、ほとんど気付きません。
※自覚症状がなくても、素足で歩く度に床に菌を撒き散らしています。
家族のためにも治療は必要です。
足のカユミ=水虫、とは限りません。
水虫の診断には、顕微鏡の検査で菌を確認する必要があります。
自己判断をせず、専門医を受診する事をお勧めします。
2. 水虫薬の使用により、正確な検査ができなくなる
水虫の薬をしばらく塗ったけど改善しないので皮膚科を受診。
ところがその時点では、皮膚科で行う水虫の検査の正確さが低下する可能性が。
水虫菌を抑える薬の使用により、顕微鏡で水虫菌を確認しづらくなるのです。
菌を抑える薬が効いているせいで菌が確認できないのか、最初から水虫菌がいないのか、この判断が難しくなるのです。
時には、一度水虫の薬をやめて少し時間を置いてから再検査する事もあります。
皮膚科医がいるクリニックなら、顕微鏡は必ずあります。
(昔からやや自虐的に「皮膚科は顕微鏡さえあれば開業できる」とか言われます)
適切な治療は、正しい診断があってこそです。
水虫は緊急性の高い疾患ではありません。
だからこそ、正確な診断を受けてから治療を開始しましょう。
水虫くらいで受診したくない、市販薬で済ませたい。
その気持ちは分かります。
しかし自己判断で市販薬を使い、症状が悪化したり検査結果が不明になるのは、かえって遠回りになります。
水虫は体調に影響することは少ない疾患ですが、症状が悪化すれば辛いですし、爪にまで進行すると治療に時間がかかります。
そして困るのは、家族など周りの人にも感染させてしまうこと。
困っていなくても、きちんと治療をした方が良い疾患です。
水虫はれっきとした皮膚の感染症。
水虫かなと思ったら、お近くの皮膚科を受診してみてください。