化粧品が原因で食物アレルギーになる⁈
化粧品が原因で食物アレルギーを発症することがある事、ご存知でしょうか。
近年話題になることも増えてきた『皮膚から始まる』食物アレルギー。
この仕組みを、アレルギーの用語で「経皮感作」と言います。
女性は特に注意が必要⁈
この『皮膚から始まる』食物アレルギー、女性は特に気をつける必要があります。
理由は、人生の中でいろんな種類の化粧品を継続的に使うことが多いから。
*ちょっとだけ用語の説明*
感作とは
アレルギーを起こす可能性のある状態になること。
アレルギーの原因物質が体内に入り、それを敵だと認識して攻撃準備!となることを「感作が成立する」と言います。
経皮とは
皮膚を介して、という意味です。
つまり経皮感作とは
皮膚を介して物質が体内に入り、アレルギーの原因物質として認識されること。
ではこの経皮感作には実際にどういう例があるのでしょうか。
いろんな経皮感作のパターンその1;美容編
これは食物由来の成分の入った化粧品を使っていたことにより、食物アレルギーを発症するパターンです。
①一時期ニュースを賑わせた実例。
小麦由来の洗浄成分入りの石鹸から、小麦アレルギーを発症!
パンやパスタが食べられなくなってしまった!
②これも怖いです。
口紅から、赤い色素の成分に対してアレルギーを発症!
赤色のカクテルやマカロンが食べられなくなってしまった!
これらのケースはアレルギーの専門家の中ではよく知られていることです。
石鹸を使っていたことにより、パンやパスタが食べられなくなる。
口紅が原因で、お酒やお菓子でアレルギー症状を起こすようになる。
どれも遠い世界の話ではなく、ちょっと身近で怖い話ではないでしょうか。
*注意*
これは、経皮感作でアレルギーを発症した場合の話です。
「パンやパスタは危険」といった極端な話ではなく、また「赤色のマカロンを食べているとアレルギーを起こす」といった事は全く事実ではありません、念の為。
いろんな経皮感作のパターンその2;職業編
これは職業として毎日特定の食物に素手で触れていることにより、その食物へのアレルギーを発症するパターンです。
①素手で魚を扱う魚屋さんが魚アレルギーを発症!
②素手でパンを捏ねるパン屋さんが小麦アレルギーを発症!
職業で食物を扱っている人の場合、避けるのが難しいですね。
手荒れがあるとアレルギーを発症しやすい
魚屋さんの魚アレルギー、パン屋さんの小麦アレルギー。
職業による経皮感作(皮膚を介して食物アレルギーが成立すること)は、手の皮膚が荒れている人の方が圧倒的に起こりやすいとされています。
なぜ皮膚が荒れていると経皮感作を起こしやすいのでしょう。
皮膚が荒れている=皮膚のバリア機能が低下
バリア機能とは、皮膚の最も表面にある角層が果たす「外からの様々な物質が皮膚の中に入るのをブロックする役割」のこと。
このブロックする機能が低下していると、アレルギーの原因物質(さっきの例では、小麦や魚のタンパク)が皮膚の内部に多く入り込みやすくなるので、アレルギーを発症しやすくなります。
顔の皮膚も荒れているとアレルギーを起こしやすい
同じことが化粧品による経皮感作にも言えます。
職業の場合は手の皮膚ですが、化粧品の場合は顔の皮膚です。
食品由来の成分の化粧品で経皮感作を起こして食物アレルギーを発症する。
この危険性は、健康な肌の人よりも肌が荒れている人の方がずっと高いのです。
敏感肌の人こそ「自然由来」には要注意!
そこで注意が必要なのが、肌が弱い、敏感肌だという人たち。
自分の肌が敏感だと思っている人ほど「自然由来、食品由来」といった言葉に惹かれがちではありませんか?
でも実はその食品由来の成分によって、将来食物アレルギーを発症するキッカケを自分で作っている可能性があるのです!
『経皮感作』というアレルギー的観点から考えると、肌の弱い人が食品由来の成分の化粧品を使うことはお勧めできません。
「口に入っても安全なものは皮膚に塗っても安心!」
「自然由来、食物由来だから肌に優しい!」
こういった謳い文句の化粧品、見たことありませんか?
これらは真実ではありません。
その化粧品の質が良いとか悪いとかの話ではありません。
「食品だから皮膚にも安全」というのは正しくない、ということです。
食べ物を使った美容法のキケン
食品そのものを肌に塗るような美容法の情報もネットやSNSで見かけます。
経皮感作を知る皮膚科医としては「食べ物をわざわざ皮膚に塗るなんて…」というのが正直なところ。
食品を皮膚に塗る美容法が重宝されていたのは、ずーっと昔、まだ安全な化粧品を作る高度な技術がなかった頃のお話です。
安全で高品質な化粧品が簡単に買える現代において、わざわざアレルギーの発症リスクを高めるようなことをする必要はありません。
どんな化粧品を使えば良いの?
肌が荒れている時に、食品由来・自然由来の化粧品を使うのはむしろリスキーだとお伝えしました。
ではどういうものを使えばいいのでしょうか。
気をつけるべき点は大きく2点。
①敏感肌用化粧品、低アレルギー性化粧品を選ぶ
ドラッグストアに地味な感じで置かれていることも多いですが、「アレルギーテスト済み」の記載があったりもします。アレルギーの原因になりやすい成分を極力減らして作られています。
注意)何度でも言います。「自然由来」や「植物成分」「オーガニック」これらの言葉は、低刺激・低アレルギー性を保証しているわけではありません。
②使う化粧品の数を減らす
肌が敏感になっている時の、大・大鉄則!
それは、使う化粧品のアイテム数をできる限り減らすこと。
複数の化粧品を重ねれば重ねるほど多くの成分を皮膚に乗せることになります。
また肌に触れる回数が増えるほど刺激を与えていることにもなります。
荒れている時に丁寧にお手入れしたくなる気持ちはわかりますが、荒れている時こそ最低限のケアで。
肌が徐々に健康を取り戻すまでは、肌に余計な負担をかけないであげましょう。
「自然由来・食べても安心」=肌に優しい、ではありません。
イメージに惑わされず、肌が弱い人ほど慎重に化粧品を選んでくださいね。
〈化粧品のアレルギーや化粧品の安全性に関する想い〉
私は10代からスキンケア・化粧品が大好きです。
だから皮膚科医になり、好きが高じて化粧品検定1級を取っています。
好きだからこそ、新しい美容成分など化粧品のキャッチーな面だけでなく、安全性やリスクといった「化粧品との上手な付き合い方」に興味が向き、化粧品のアレルギーを勉強したくて他県の大学に在籍していました。
世の中に「リスクゼロ」は存在しません。
アレルギーも絶対に発症しない方法はありません。
私たちにできるのは、リスクの高い行為を避けること。
人生の最後までできるだけ長く「キレイになることを楽しむ」ために、
美容やオシャレとの上手な付き合い方を発信していけたらと思っています。