そのかゆみの正体は⁈じんま疹と湿疹の違い
皮膚がカユい…じんま疹と湿疹。
どちらも聞いたことがない方はほとんどいないと思います。
身近だからこそ誤解が多い2つの疾患について。
この2つはどちらも『カユい』点は共通していますが全く別の皮膚症状です。
それぞれの原因の話までいくと長くなり論点もズレるので、まずこの2つが全然別のモノで、治療が根本的に違うということを理解してもらえれば嬉しいです。
結論から言うと、じんま疹は皮膚の表面からではなく内側から症状を『抑える』必要があり、湿疹は皮膚表面から塗って直接『治す』必要があります。
それぞれの治療のメインは、
じんま疹は飲み薬、湿疹は塗り薬です。
じんま疹と湿疹は、見た目が(皮膚科医的には)まったく違います。
「じんま疹がずっと治りません」と言われ、ひと目見て「少なくとも今ある皮疹はじんま疹ではありませんよ」と断言できることもよくあります。
そのくらいこの2つは別のモノです。
では、それぞれの特徴について。
じんま疹
すごくカユいのが特徴ですが、皮膚そのものは『荒れて』いません。
いきなりカユみ赤みボコボコしたデモノが出てきて数十分〜数時間で消える、消えた後はどこにあったかわからないくらい元に戻る、という特徴があります。
この『出ては消える』がじんま疹の最も大きな特徴です。
「昨日はすごくカユくてボコボコ出ていたのに今日診せようと思って受診したら何もない!」と言う人もいますが、この時点でほぼじんま疹と診断できます。
じんま疹は皮膚の深い部分(真皮)の毛細血管が拡張して腫れ・浮腫みを起こしている状態。
皮膚の表面が炎症を起こしている(荒れている)のではないので、その腫れ・浮腫みが消えると表面はスベスベに戻ります。
今日は昨日とまったく別のところに出たりもします。
出る部分は決まっていなくて身体中どこにでも出る可能性があるので、カユい部分の皮膚に直接薬を塗っても治療効果は期待できません。
その症状がまた繰り返し出るのを、飲み薬で内側から抑える必要があります。
湿疹
皮膚表面(表皮)が荒れている状態。
「昨日はすごく出ていたが今はあまり出ていない」と見せてくれる患者さんも多いですが、よく見るとうっすら赤かったり、ザラザラ・ガサガサ・乾燥していたり、完全にスベスベ元通りには戻っていません。
湿疹の症状にも『波』があります。赤みなどが一時的に軽くなると消えているように感じますが、実際には完全な正常の状態には戻っていないので、同じ場所がまた後から赤くなったりカユくなったりします。
湿疹の場合、カユみが飲み薬で楽になることはあっても、『皮膚の荒れ』そのものは薬を飲んでも治りません。
荒れている部分の皮膚に直接薬を塗って治すことが近道です。
この通りじんま疹と湿疹は、まったく別の疾患で治療法も違います。
実際には、じんま疹を繰り返してボリボリ掻いているうちに皮膚の表面も荒れてくる、つまり『じんま疹』の状態に『湿疹』を合併することもあります。
逆に元々湿疹がある人で、その湿疹の赤みカユみに紛れて実はじんま疹が出たり消えたりしている、という事もあるでしょう。
絶対にどちらかの病気に分かれる、というものではなく複雑な病態になっているケースももちろんあります。
しかし一度どちらかの診断を受けて以来、ずっと市販の薬や最初に処方してもらった薬だけをなんとなく続けている人もいます。
もし今続けている治療の効果がイマイチでこの薬で合ってるのかなあ…と感じている場合、改めて皮膚科の先生に相談してみることをお勧めします。
ちなみに、病院で医師に向かって「効いていない気がする」というのは全く失礼なことではありません。
同じ病気の中でも経過によって状態が変化することも当然ですし、そもそも最初から診断をつけることが難しい症状もいっぱいあります。
最初の薬は効かなかった=医師の腕が悪い、なんてことは全くありません。
薬の効果の有無も、正確な診断にたどり着くための大切な情報です。
ぜひ正直にお話してみてくださいね。
※じんま疹は『時間が経つと消えてしまう』のが特徴なので、皮膚科を受診する時に発疹が消えてしまっていることも。
しっかり出ている時の発疹をスマホで撮って受診の際に見せてくださる人も増えていますが、これはとても助かります!