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Appsheetで勤怠管理!導入して分かった利便性と注意点


勤怠管理は自動化の恩恵を受けやすい業務

サービス業において最大のコスト要因は人件費だ。

人件費はめちゃくちゃ高い。労働人口が減少していく中で(そして賃金上昇圧力がかかる中で)、人ではなくシステムになるべく働いてもらいたいというのが正直なところ。

つまり、人件費→ツール代に資金を投下していくことになる。なぜなら、人件費と比べたらノーコードなどの月額費用の方が圧倒的に安いから。

特に勤怠管理などはもっとも自動化の恩恵を受けるタイプの業務だ。積極的に効率化してきたい。

専用の勤怠管理システムもあるが、なるべく費用も抑えたい。他にどのような選択肢があるだろうか?

紙で記録
用紙に出退勤時間を1人1人書きこむパターン。正確な情報が記録できず、集計も面倒。最も非効率。

エクセル
集計作業は効率化できるが、出勤・退勤時間などを手動で入力しなければならない。入力ミスも発生する。

Googleフォーム
フォーム送信時間がそのまま打刻時間になる。スプレッドシート側で集計も行うことができるため、割と効率的。しかし、ログイン機能がないのが致命的(毎回自分の名前を選択しなければならない)。

その他ノーコード
アプリ開発ができるノーコードツールを採用するパターン。細かいところまでチューニングできるが開発工数がかかったり、逆に構築はカンタンだが、フォームの変更やボタンの配置が自由にできなかったり、費用が高くなりすぎてしまったり…ちょうど良いサービスを見つけるのは意外と難しい。

最終的に、ログイン機能自動化機能を活用でき、開発工数もそこまでかからないAppsheetを採用することに。



結果、正確な勤怠データの集計と可視化が可能に

アプリの柔軟性とノーコードのスピード感、そして何よりGoogle Workspaceとの連携によって、使い勝手の良い勤怠管理アプリが構築できた。

打刻がボタン1つで完了

退勤・休憩開始・休憩終了のボタンを押すだけで(出勤だけ2回)、時間が記録される。各勤務日にステータスが付与されており、通常は”勤務”だが、09:00を過ぎて打刻すると自動的に”遅刻”として記録される。打刻完了でボタンは消滅するため、2重打刻の心配はない。

出退勤をボタンだけで完結している。勤務時間などの時間は自動計算される
出勤から退勤までボタンを押すだけ

打刻と同時に勤務時間・休憩時間・残業時間を計算して表示してくれる。これらの値はLooker Studio(データの可視化を行うツール)で”見える化”できるので、休暇取得日数や稼働率をまとめたダッシュボードで管理する(詳しくは後述)。

各種申請がスマホで完結

出退勤管理だけでなく、有給休暇や病気休暇、慶弔休暇の申請もできる。

有給休暇申請の様子|申請から承認までを自動化している
有給休暇申請の様子

従業員がフォームを入力すると申請が完了し、マネージャーなどの管理職レイヤーが承認する。承認・否認はボタン1つで完了し、承認されると従業員にメール通知が届く。

休暇の取得履歴はデータベースに蓄積され、有給休暇消滅時効分も含めた残日数を集計してくれる。

休暇の取得数などもデータベースで見える化されているため、各人や全社での平均取得数などを簡単にチェック可能だ。

Looker Studioで自分専用のダッシュボードを整備

データベースの情報はそのままだと分かりにくい。ただのデータの羅列だからだ。視覚的に見える化しなければ、使い勝手が悪くなる。

そんなときはLooker Studioが便利だ。Appsheetデータベースを連携させることで、集計結果を可視化できる

Looker Studioで勤怠データを可視化できる
各従業員の稼働状況がパッと見でチェックできる

ダッシュボード上では、稼働日数や平均残業時間、休暇取得日数などがパッと見で分かるように配置されており、従業員や期間でフィルターをかけることで、例えば「Aさんの先月の稼働状況」をすぐに確認できる。

Google Workspaceのアプリ群との連携は非常にパワフル。これにより、高度なアプリを少ない工数で導入できる。

ログイン機能でどの従業員が打刻したのかを記録

私たちは普段、多くのサービスを使い分けている。WEBアプリであろうとモバイルアプリであろうと、アカウントを作らなければならない。

そのため、アカウント開設やログインを手間に感じることも多い。しかし、それは理由があってそうなっている。

ログイン機能は、ユーザーを識別するために存在している。打刻の際に「従業員名」を選択せずに済むのはログイン機能のおかげだ。打刻や申請のたびに自分の情報を入力するのは、あまり効率的なシステムとは言えない。

Appsheetにはログイン機能が組み込まれており、GoogleやMicrosoftアカウントからログインしてアプリを使用することができる。



勤怠管理システムの仕組み

勤怠管理システムの仕組み|Appsheetでアプリを作成し、Looker Studioでダッシュボードを作成している
Appsheetでアプリを作成し、Looker Studioでダッシュボードを作成している

【アプリの構成】
アプリのUI:Appsheet
データベース:Appsheetデータベース
自動化:Appsheet Bots
BIダッシュボード:Looker Studio

Appsheetは業務アプリに特化したノーコードツールなので、ほとんどの機能はAppsheet内で完結する。

打刻などのデータ入力はアプリのUIを通じて行い、Appsheet内にデータは格納される。その際、勤務時間なども自動的に計算され、記録されていく。

休暇の申請・承認は、自動化機能であるAppsheet Botを通じて行っている。従業員がフォームから申請→マネージャーが承認→メール通知という流れだ。

従業員が自分で申請を承認できては困るので、マネージャーにだけ承認権限を与えている。

蓄積されたデータは最終的にLooker Studioを使って可視化される。平均残業時間や稼働日数などの集計はLooker Studio側で行っている。フィルター機能も備えているため、従業員や期間を絞ってデータのチェックが可能だ。



勤怠管理システムは費用に見合うのか?

勤怠管理以外にもアプリを導入するのであれば、Appsheetによる業務アプリ導入はメリットが大きい。例えば、顧客管理や在庫管理もAppsheetを活用するパターンだ。

逆に勤怠管理だけなら、freee勤怠管理Plusなどのサービスの方が良いだろう。月額数百円で済むし、構築も必要ない。

ログイン機能を実装できるサービスの多くは、アカウント数(ユーザー数)に応じて料金が上がっていく。Appsheetも例外ではなく、アプリを利用するユーザーごとに費用がかかる。

料金体系は3つの区分があり、それぞれStarter($5/月)、Core($10/月)、Enterprise Plus($20/月)となっている。高度な自動化を利用しようと思うならCoreプラン(約¥1,600弱)が欲しいところ。

驚いたことにGoogle Workspace Business Starterプラン(年払いの場合¥680/月)にAppsheet Coreプランがなぜか付いてくる。Appsheet単体のプラン(Coreプラン)よりもおトクなので、そちらで契約するのがおススメだ。

Google WorkspaceはGoogleが提供するグループウェアサービスのことで、会社用メールアドレスの発行や長時間のビデオ会議など、業務効率化のための機能を提供している。

まとめると、Appsheetならユーザー数に応じて料金は上がるが、勤怠管理、在庫管理、顧客管理、点検ツールなどのツールをいくら構築しても利用料金は変わらない。Google Workspaceを採用している会社であれば、追加料金なしでAppsheetを導入できるため、恩恵は大きい。

要はガッツリ活用するほどコスパが良くなると覚えておこう。



ユーザー設定でAppsheetの料金を抑えることが可能

Appsheetにはユーザー設定という機能があり、端末ごとに固有情報を登録できる。これにより疑似的にログイン機能を実現できるため、1つのアカウントを複数人で利用できるようになる。

1つのアカウントで済むということはユーザーが複数いても料金が変わらないことを意味する。以下のイメージ図が分かりやすいだろう。

1つのアカウントで異なる端末情報

例えば、ユーザー設定に各人のメールアドレスを登録することで、誰が打刻したのかを自動で判別することができる。

ユーザー設定画面|各ユーザーのメールアドレスを登録することで利用できる情報や機能を出し分けることができる
ユーザー設定画面|各ユーザーのメールアドレスを登録することで利用できる情報や機能を出し分けることができる

ただし、これには問題もある。あくまで疑似ログイン機能であるため、他人になりすますことが簡単にできてしまう点だ。メリットは無いものの、同僚のメールアドレスを登録すれば、有給休暇の申請が代わりにできてしまう。

特に顧客データを扱う場合など、アクセス権限を厳密に制限したい場合などは推奨されない方法となるため、注意されたい。



Appsheetテンプレート無料公開中

今回作成した勤怠管理アプリは公開しているので、リンク先からコピーすることができる。導入したい方はぜひ活用して欲しい。

もちろん会社によって運用方法は違うので、ある程度のカスタムや機能追加は必要であるが、ゼロから構築するよりも早いと思う。



ノーコードで勤怠管理を効率化しよう

今回はAppsheetで勤怠管理アプリを作成することで、勤怠データの入力から労務データの集計、可視化までの一連の機能を構築した。本アプリでは以下のビジネス課題を解決することができる。

  • 正確な労働時間の記録

  • 勤務状況の可視化

  • 労務管理の負担軽減

  • 労務トラブルの防止

ノーコードにも適材適所がある。Appsheetだけにこだわるのではなく、タスクやプロジェクト管理ならNotionを活用するなど、うまく組み合わせよう。


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