持ち込まれた巨木が語ること
いつも薪を購入させていただいている、府中の川島商店さんに立ち寄った。先日、8種類もの薪をこちらで調達して、マルシェで薪割り体験や販売をさせていただいたお礼を伝えたかったのだ。川島さんは覚えていて下さり、そうかそうか、よかったなと笑顔で応えてくれた。
「イチョウが入ったけど、見ていくか?」
裏手の作業場に招いていただいた。そこにはまさに巨木と言っていい見事なイチョウの木が、2mくらいに分割されて、何本か横たわっていた。イチョウの木は含水率が高く、燃えにくい性質から延焼防止のため街路樹によく使われているのだそうだ。なるほど、名所も含めてイチョウ並木はよく目にする光景だ。
「最近、巨木の搬入が多くてね。みんな、あっさり切っちまうんだ。」
薪を売る店主が、その材料となる木があまりにも手に入り易くなっていることを、憂いていた。何十年、あるいは100年を超える樹齢の木が何本も切り倒されている。市街地での巨木の伐採理由は全て、落ち葉がクレームになるからだそうだ。
「モノを言えない相手を、枯葉が嫌だから切ってしまおうというのは、人間の横暴だね。」
しばし、言葉を失った。
そうだよなぁ。近所でも高さ20mはあろうかという見事なけやきの木が、切られていた。近くの小学校のヒマラヤスギも、ある時突然に姿を消していた。管理に手が回らないのだ。
川島さんは、それ以上は何も言わなかった。
川島商店は、良質の薪を提供してくれる場所だ。しかも、私が知る限り最高品質の、様々な樹種の薪を用意してくれている。その原料は「木」以外にない。その木のことを、心から心配しているのだ。
切り倒されることは、理不尽だ。しかし、切り倒されてしまったものを、そのまま廃棄したり朽ち果てさせてしまうならば、せめて薪として多くの人にその価値を知って欲しい。そんな風に考えておられるのかな、と想像した。
「たき火」は、木のいのちをいただいている。だから、私たちの心を穏やかにしてくれたり、もつれた糸をするりとほぐしてくれるのだ。普段話せないことが、ごく自然に口をついて出てきて、相手と共感したり分かり合えたりもする。
わたしが出来ることは、とても小さい。限られた場所と時間の中で、ごくわずかな貢献でしかないと思う。でも、それを続けていくことの先に、何か世の中に良い変化をもたらすのではないかと期待しながら、手探りを続けていきたいと思う。
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