あと何回子どもとお風呂に入れるだろう?
はじめまして。広告やブランディングなど戦略をつくる仕事を生業としておりますツダと申します。
私、6歳の娘と3歳の息子の父親でもあります。このくらいの年代のお子さんがいらっしゃるお父さんお母さんは、おそらくご理解してもらえると思うのですが、毎日「自分の自由時間を確保する」のは、なかなかハードル高いですよね。
「最後に2時間の映画なんてゆっくり観れたのはいつだろう?」
なんて思ったりしませんか。
平日の朝、寝ぼけ眼の子どもたちを着替えさせご飯食べさせて、学校や保育園に送った後は、急いで出勤(もしくは在宅で仕事開始)、夕方のお迎えの時間帯に被らないように日中に仕事を寄せるのでランチ時間もゆっくりとれず。子供たちを迎えた後は、おやつを食べさせ、お風呂に入れ、夕飯を作って食べさせ、遊びにつきあい、歯を磨かせて、寝かしつけに本を読む。子どもと一緒に寝落ちする時もありますが、「あ、やらなきゃ」とモゾモゾ起きて業務の残りや家事の続きを片付けたりする。
1日の終わりに疲れ果てぐったりしているそんなお父さんお母さんたち(同志のみなさんたち)の姿が目に浮かびます。みなさん、今日も本当にお疲れさまです!
そんな毎日だと、とにかく1日の流れをスムーズに遂行したい、という意識が先行して、つい「早く起きて」「早く食べて」「早く歯を磨いて」「早く寝て」と、気づいたら一日中子どもを急かしてしまいがちですよね。本当はもっとゆっくり話を聞いてあげたり、いっしょに遊んだり、たまには夜更かししたりしたいのに、、、と日々反省することばかりです。
そんな今日この頃ですが、久々に心を動かされる広告に出会いました。もっというと、身につまされるというやつです。
なんと素晴らしく切ないコピーなのでしょう。そう、親が子どもにして「あげていた」お手伝い行為は、ある日突然に終わりを告げます。もちろん、それは「成長」なので喜ばしいことなのですが、そうであるならば、その一回一回をめんどくさがらず、惰性でやることもなく、愛しんで大切にやれたのに。このニシワキタダシさんのゆるいイラストテイストと相まって、過ぎ去っていく幸せな日常の一回性の尊さと切なさを浮き彫りにしています。
僕の娘は6歳ですが、すでに髪や身体は自分で洗うようになって久しいです。髪の毛を拭いたり、お風呂上がりに保湿剤を塗るのも、自身に任せています。ドライヤーをかけるのは(熱いので)まだ親の仕事ですが、それも最近は自分で挑戦するようになってきたので、お手伝いできるのも時間の問題でしょう。もっといえば、女の子なので父親とお風呂に入ってくれること自体がもうそれほど長くないと思います。本人は「パパと入りたい」と言ってくれるのですが、「パパと入りたくない」と言われてからではなく「パパと入りたい」と言ってくれるうちに勇退しようと思います(なんのこっちゃ)。
花王メリットの同シリーズの広告でこんなバージョンもあります。こちらは動画で。
花王メリットの広告「はじめて自転車に乗れた日」
これはリアルに最近の体験でありまして。正月休みに突然「補助輪を外したい」と娘が宣言し、自転車屋さんで外してもらった後、公園に直行。まさにこの動画のように自転車の後ろを押しながら並走して(これ態勢的に案外疲れるのですが笑)、何度も何度も練習していたら、ふと手 指先が軽くなり娘が自走し始めたのです。その時の「巣立った感」は半端ありませんでした。嬉しいんですけど、切ないんですね。
この「子の成長は、嬉しいけど、切ない(=成長の一回性)」というインサイトを見事に描いた花王メリットの広告。正直いえば、このインサイトをついたコミュニケーション自体は昔からよく使われる手法です。特にアミューズメント系の広告に多い印象です。実際僕も、かつて某アミューズメント施設の夏休み企画に「今年の夏は、今年だけ。」といったコンセプトの提案をした記憶があります。古くは日産セレナの「モノより思い出」やホンダステップワゴンの「こどもといっしょにどこいこう」も大きな意味で言うと成長の一回性に根ざしているものかもしれません。ただ、花王メリットのアプローチは、単なる身体的成長ではなく、子どもによる「達成(Achievement)」があるところが親の涙腺を緩ませるポイントだと思います。
今朝、3歳の息子が保育園に行く時、「前の保育園に行きたい」と泣きじゃくりました。ちょっと説明しますと、この3月までは小規模保育の保育室にいたのですが(3歳まで在籍可能)、4月からは大きめの認可保育園に転園したばかりなのです。入園から2週間して、まだ新しい友達ができない息子は前の保育室の同級生に会いたくなったのでしょう(もちろん同級生みんなも同時に卒園しているので、既にいないのですが)。その気持ちを2週間ずっと溜めていたんだと思います。
出勤途中だったし、正直困ったなーと思い、泣きじゃくる息子を適当になだめて先生に預けてきたわけですが、今思えば「急に友達がいなくなって不安で寂しい息子」にちゃんと向き合ってケアできたのか、話をもっとちゃんと聞いてあげればよかったなと反省しています。
そのうちに新しい友達もできて、今の保育園も楽しくなるでしょう。でも、不安で宙ぶらりんな気持ちの息子には、今しか向き合えません。
その気持ちや感情の動きも、子どもたちの成長の中では、一回きりです。
1日をスムーズに過ごすことよりも、たとえ予定が変わっても、優先すべきことがあるのかもしれません。
今夜、息子とお風呂に入りながらゆっくり話をしようと思います。