変わりたい市場、変わりたくない組織
組織開発の師匠から教わったことを思い出しながら、整理していきます。
今回は、"市場"は「変わる」ことが本能だが、"組織"は「変わらない」ことが本能であり、だからこそ"事業"は難しいということについて、整理します。
変わりたい市場、変わりたくない組織
まず、市場は消費者のニーズをはじめとして常に変わり続ける特徴があります。
その前提で事業を行っていくためには、事業も変わり続ける必要があります。
例えば、服を販売するメーカーは、消費者が年齢を重ねるごとに求める服が変わるため、年齢にあわせた服を販売する必要がありますし、特定の年代にターゲットを絞ったとしても、その年代の人の流行も数年経てば変わります。
変化の速度に違いはあれど、市場は必ず変化し、それに伴って事業も変化することを求められます。
しかし、このことに反して、組織は基本「変わりたくない」という特徴を持っています。
なぜでしょうか。
そもそも市場の変化に対して事業が対応するためには、ある程度未来の変化を予測して、予め事業を変化させる必要があります。
つまり、短期的な視点でみれば、問題が感じられないことが多く、変化の必要性を感じにくいのです。
ハーバート・サイモンが提唱した限定合理性という考え方があります
このように合理的な判断をすることは限りになく難しく、見えている範囲での判断となるため、変化をすることは難しいのです。
また、コンフォートゾーンとホメオスタシスという考え方があります。人の仕組みとして以下で説明していますので、今回は詳細は記載しませんが、このことは人の集合体である組織にもあてはまります。
つまり組織は現時点での「コンフォートゾーン(前提や当たり前)」に対して戻ろうとする本能があるということです。
変わりたい組織をつくるために
この「変わりたくない組織」をいかに、変化できる組織にするか、とうことが重要です。
経営学者のピーター・ドラッカーも、「Culture eats strategy for breakfast(カルチャーは戦略に勝る)」という言葉をのこしています。
変化できる組織カルチャーがなければ、事業の変化は限りなく難しくなります。
では変化できる組織を作るにはどうしたら良いでしょうか?
今回は3つのキーワードをご紹介します
クリエイティブテンション
コレクティブエフィカシー
パラドキシカルリーダーシップ
クリエイティブテンション
学習する組織で紹介されている考え方で、クリエイティブテンション(創造的緊張)というものがあります。
以下の図のように、ビジョンと現状に健全なギャップがある際に、組織や個人のエネルギーが最大化されるという考え方です
このビジョンは、心から望む未来である必要があり、学習する組織では、自分の子供が車に轢かれそうなときに真っ先に助けに行くような切迫感、が感じられるビジョンが良いビジョンだと書かれています。
コレクティブエフィカシー
ビジョンがあった上で、俺たちならいける!という自信、コレクティブエフィカシー(組織効力感)が大事です。
これは自分たちの能力に対する自己評価であり、これが高いと、変化に対して組織全体が前向きになります。
ではこれはどのようにして高めるのか。
ヒントの一つとして、ストーリー、ナラティブの力を活用するという点を挙げたいと思います。
世界標準の経営理論(入山章栄著)で、以下のような話が紹介されています。
つまり、必ずしも真実でなくとも、人はストーリーによって動く、ということです。
組織に良いストーリーを作り、対話し、コレクティブエフィカシーを高めることが重要です。
パラドキシカルリーダーシップ
昨今両利きの経営といわれる、既存事業で成果を出しながら、新規事業を行うかなど、市場の変化に対して、変わりたくない組織や事業をいかに牽引するかということは重要なテーマになっています。
そもそも前述の通り、市場は変わりたいが、組織は変わりたくない、という特徴があるため、変化を促さざるを得ないが、変化を拒まれる、という矛盾は必ずおきます。
だからこそこの矛盾に対して、矛盾してるからダメだ!!と指摘して立ち止まるのではなく、矛盾があるね、どうする?とむしろ活かすパラドキシカルリーダーシップが必要です。
各キーワードについては、また別途深堀たいと思います!