![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/150940260/rectangle_large_type_2_4b022c7d48c2b4082986fa6d74cf1781.png?width=1200)
アリから学ぶ組織や社会
「働かないアリに意義がある(長谷川英祐著)」があるがとても面白かったのでご紹介。
本書によると、生物進化の大原則に「子どもをたくさん残せるある性質をもった個体は、その性質のおかげで子孫の数を増やし、最後には集団のなかには、その性質を持つものだけしかいなくなっていく」という法則性があるらしい。
しかし、一般に知られる通り、アリやハチといった虫は女王のみしか子孫を残すことができず、「子どもを生まずに働く」という性質をもった個体が多く存在する。
つまり、これらの虫は、特定の個体の性質を遺伝させていくのではなく、社会として成立する形で子孫を増やし、繁栄しているのである。
なぜこのような遺伝の仕方が実現されるのか、については本書はぜひ読んで頂くと、なるほど〜!という研究が紹介されている。
今回は、このように「社会」で繁栄してきた真社会性生物であるアリの生態から、組織開発を生業にしてる私が面白いと感じた点を2点ご紹介したいと思います。
①エラーを活かす仕組みが組み込まれている
あるアリがエサを見つけるとそのアリはフェロモンによって仲間にエサの存在を伝えます。
ほとんどのアリはそのフェロモンを追いかけて、はじめのアリを追いかけますが、一定数道に迷うアリがいるそうです。
本書では、道に迷うアリが一匹もいない場合と、一定数いた場合の効率の違いについてコンピューターでシミュレーションした研究が紹介されています。
結果は、一定数道に迷うアリがいたほうがエサの持ち帰り効率が良くなる傾向があることが分かったのです。
これは、間違えるアリによる効率的ルートの発見によるものだと紹介されています。
つまりアリはエラーを許容し活かす形で進化をしてきているわけです。
人間社会においても多くの発見やイノベーションが偶然や失敗から生まれたと言われてきますが、いわゆる生産性を高めようとすると、エラーが少ないことを是としがちです。
一定数のエラーは発展の種だと捉えつつ、現在の成果も追う。
塩梅が難しいところですが、組織づくりを行う上で向き合うべきテーマですし、失敗を0に近づけるよりもよっぽど前向きなシステムなように思います。
②働かないということで全体最適を実現するシステム
本書のタイトルの通りですが、7割ほどのアリが特定の時間断面では働いていないようです。
つまりそれは、仕事に対して必要な労働力を配置する仕組みがある、ということです。
もちろんアリには全体を見渡して指示を出す司令塔のような上司はいません。
ではどのようにして適切な労働力で対応することが出来ているのでしょうか。
それは反応閾値=仕事に対する腰の軽さの個体差 です。
本書では、部屋が少しでも散らかっていたら片付けたくなる人=閾値が低い人と例えられています。
だったら反応閾値が低い人だけいたらいいじゃないか!とキレイ好きの方は言うかもしれません。
しかしそうではない、という実験の結果が紹介されています。
反応閾値が同一の個体群と、反応閾値がバラバラの個体群で、どちらの方が長くコロニーを保てるか、コンピューターでシミュレーションをしました。
すると「全ての個体は疲労する」という要素を含んでシミュレーションした際に、反応閾値がバラバラな個体群の方が長くコロニーを維持することができたのです。
つまり、全ての個体が同じタイミングで仕事に取り掛かるよりも、特定の個体が疲れた時にやっと動き出す腰の重い個体がいた方が良い、ということです。
そしてこの腰が重たい個体は、働きたくない、のではなく重たいという個性が価値なんだということも強調されています。
ここからは私の拡大解釈ですが、人にも同様に個生があり、そして人の場合は腰の重い・軽いだけでなく多様な個性があり、多くの人は出番がくれば動く、というのは何だかあてはまるような気がします。
他の人が出番を感じてるうちは、自分は出番だと思えない、あの人いつもやる気ないように見えるのに、こういう時はすごい動く、など人を動かすために大事なのは「出番」かもしれません。
まとめ
他にも面白い点が沢山あったのすが、今回は2つだけご紹介でした。
とても読みやすいのでぜひご一読を。