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緊急事態宣言発令中、マスクを10万枚集めた介護ベンチャー【ライター:加登伶】

2020年2月、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、マスク需要が急拡大。

不安感から全国各地でマスクは買い占められ、医療・介護現場など、マスクが必須の施設ですら確保が難しい状況になりました。

一部民間企業は、確保したマスクを従業員に配布。それでも感染拡大に歯止めがかからず、3月になると事業をテレワークに切り換える企業も増えてきました。

出勤という習慣がなくなり、外出する機会が減った会社員の手元には、マスクが余るという事態が発生したのです。

そこに、とある介護ベンチャーが目をとめました。

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「足りない」悲鳴が上がる中、マスクが余る人もいた

新型コロナの感染が拡大する中、介護施設でマスクが足りていないという問題を解決するために、とある介護ベンチャーは手作りマスクの寄付を募っていました。
活動を続けるうちに、テレワークに切り替わった企業の会社員など、一部ではマスクが余っているということを知ります。

これをうまく再分配できないだろうか。

「手作りマスクや余っているマスクを、介護施設に届けよう」

4月、とある介護ベンチャーは1日で寄付を募るページを立ち上げ、ツイッターでも情報を発信。
ツイートは瞬く間に拡散され、複数のテレビにも取り上げられました。
活動は注目を集め、さらに大きな”プロジェクト”に発展していきます。

企業がまとまった数のマスク寄付してくれるケースもありましたが、圧倒的に多かったのは個人からの寄付です。
それを反映するように、送られてきたマスクの3割は手づくりで、1割は政府から支給された布マスクでした。

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約10万枚のマスクが集まる

寄付を呼び掛けた介護ベンチャーの元には、連日多くのマスクが届きます。
送料は送り主、つまり寄付する人たちの負担でしたが、それを感じさせない勢いで届くマスクの数は増えていきました。

普段の忙しい生活の中では忘れがちな、ちょっとした親切心
そうした優しい気持ちが、ひとつの呼びかけによって人を動かし、ムーブメントを生み出したのです。

届いたマスクは開封・再梱包され、必要としている介護施設に送られました。
創業間もない介護ベンチャーのスタッフは少なく、梱包作業に取り組んだ人の多くは「できることがあれば力になりたい」と手を挙げ、駆けつけてくれた人たちです。
また、そのほとんどはこれまで介護業界と接したことのない、異業種の人たちでした。
そうした人たちの手によって、マスクは無事梱包・発送されました。

最終的に集まったマスクの総数は、約10万枚

約200箇所の介護施設が、マスクを配送料の負担のみで受け取ることができたのです。
中には寄付する人から介護施設に向けて、応援のメッセージが書かれた手紙も添えられており、それがとても嬉しかったという声も、施設の職員さんから寄せられました。

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マスクだけではない、特別な「贈り物」が届けられたのです。

マスクを10万枚集めた介護ベンチャーの正体

このマスクプロジェクトの仕掛け人となったのは「プラスロボ」という会社が運営する「スケッター」という事業です。

スケッターとは、すきま時間を使って働きたい人と、一部の仕事を手伝ってほしい介護施設をつなぐサービスです。

介護業界の人手不足は深刻な社会問題となっていますが、業界に参加する人の数は必要とされている数に到底追いついていません。
介護というと、精神的にも肉体的にもハードな仕事という印象をもつ人が多いでしょう。
確かに、現状の介護の仕事は、誰もが憧れ、率先してやりたがるようなきらびやかなものではありません。
それでも、家族や知人が介護を必要とする状況になった時「自分にもなにかできないか」と考える人もまた、多いのではないでしょうか。

マスク不足が問題になった時、寄付してほしいという呼び掛けにたくさんの人が賛同し、行動につながったように。

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介護の資格や経験のない人でも「自分にもそれならできるかな」と思えるような仕事は、業界の中にあります。

スケッターはそこに着目しています。
「利用者さんとお話をする」「レクリエーションや季節の行事を手伝う」など、介護施設の業務を切り出して働き手を募集。
結果、これまで介護業界とは接点のなかった異業種の人たちからの応募が相次ぎました。
スケッターを介して実際に施設で働き、介護業界への転職を決意する人も生まれています。

「できること」がわかると「やりたい」になる

「困っている人がいれば手を貸したい」「自分にできることがあれば力になりたい」という気持ちは、誰もが抱くものではないでしょうか。
ただ、どこで、誰が、具体的にどんなことで困っているのかがわかりにくいことや、多くの時間や体力、覚悟がなければ役に立てないという印象によって、行動が抑制されているのが現状です。

スケッターのマスクプロジェクトはこの課題を解消できたケースといえます。

「介護施設でマスクが不足している」という問題は、とてもわかりやすい。
それに対して求められる行動も「手づくりマスクを寄付する」「余っているマスクを寄付する」という、非常にわかりやすいものでした。

「助けを必要としている人」と「人の役に立ちたい人」をつなぐという点で、マスクプロジェクトはスケッターを象徴する試みでした。
マスクプロジェクトをきっかけにスケッターを知り、理念に共感する人も増えています。

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できることがわかれば、人は動ける。
ひとりひとりの力は小さくても、たくさんの人が助け合えば大きな行動につながる。
スケッターはそうした社会の実現に向けて、介護業界に変革をもたらすベンチャー企業です。


ライター:加登令


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