スケッターが目指す社会「一億総福祉人構想」とは【代表インタビュー】
スケッターは介護業界の人手不足を解消すべく、人と業界をつなぐサービスを展開しています。
介護のお仕事を切り出してマッチングさせる類似サービスは、ほかにもあります。スケッターがそれらと決定的に異なるのは、目指す先の世界が違うということ。
スケッターは、ビジネスの枠組みを超えた社会慣習や価値観の変革を目指しています。
スケッターが掲げる「一億総福祉人構想」とは。
運営企業プラスロボの代表、鈴木に語ってもらいました。(インタビュアー:加登伶)
誰もが誰かに助けられ、誰かを助ける社会
――介護に限らずどこの業界も人手不足になり、近年は単発アルバイトや日払いのお仕事を紹介するサービスが多く登場してきました。
介護業界でも、スケッターのように単発で関われる案件を紹介するサービスはほかにもあります。そうした類似サービスとスケッターの最も大きな違いはどこにあるのでしょうか。
「類似するサービスが業界に提供するのは、あくまでも人材=労働力です。人手不足という穴を派遣や人材紹介、単発バイト系サイトを使い、既存人材の労働力で埋めているのが現状ですが、これでは永遠に穴を埋め続けるだけの負のループに陥ります。介護業界全体の担い手も増えません」
「スケッターはそもそも人を労働力としてとらえていません。イメージは、かつての日本にあった、いい意味での「ご近所づきあい」の文化に近いです。同じ地域に住む人同士で、困っている人がいれば助け合う。そうした文化の醸成を目指しています。職業的な労働力だけで福祉全体をカバーするのは限界があるからです」
「誰もが誰かに助けられ、誰かを助ける社会が実現すればいい。それを一億総福祉人構想と呼んでいます」
競争社会のゆがみ
――鈴木さんが「一億総福祉人構想」を考えた背景にはなにがあったのでしょうか。
「小さいころ、徒競走があったじゃないですか。ヨーイドンで走り出して、途中で隣のレーンを走る子どもが転んでも、気にしないで1位を目指す。スポーツとしてはアリですが、今は社会全体がそうなっていると感じます。会社の中で同僚が潰れていっても、誰も気にかけないとか」
「今の社会に適応できた人たちが成功、活躍している一方で、そうじゃない人は生きづらさを感じていたり、お金を稼ぎにくかったりする。競争社会では当たり前のことですが強い違和感があります。成功した人には、資源を再分配する責任があると思っています。金銭を直接与えろという話ではなく、レールからはずれてしまった人を見捨てずに、責任をもって救いあげるべきだと」
――今は自己責任論が強い社会で、他人に頼ってはいけないような風潮がありますよね。
「『世界は贈与でできている』という書籍があります。プレゼントや善意による行動など、金銭を介しない「贈与」のやり取りは、人と人をつなぐんです。なにかしてもらって、その対価にお金を払ってしまうと、関係はそこで途切れてしまう。お金が介在しなければ、贈与を受けた側は負い目を感じるので、次は自分も「贈与」しようと考える。贈与しあうことで循環が生まれ、人の関係が続いていくという内容です」
「なにもかもをお金ありきにしてしまうと、お金がなければ誰にも助けを求められない社会になってしまいます。それでは地域コミュニティーは醸成されないし、機能しない。福祉の担い手不足という現状も解決できません」
――誰かに助けてもらった経験のある人は、自然と誰かを助けようという気持ちになると思います。誰もが誰かに助けられたと感じられる社会が理想ですね。一億総福祉人構想と非常にマッチした価値観です。
仕事じゃない福祉の在り方
――「一億総福祉人構想」が実現すれば、最終的にはビジネスにこだわらない互助的な社会に到達しそうです。
「すでに仕事ではない形の福祉は存在します。電車でお年寄りに席を譲るのも、言ってしまえば福祉的な行動です。東京の下町には年配の常連さんが集まるスナックがあったりしますが、これも見方を変えれば大衆的なデイサービスととらえられます」
「もちろん身体介護など、専門的な知識やスキルが必要な場面はあるので、仕事としての介護職は存続していくべきです。ただ本来、福祉は社会全体に根づいたものです」
「生産性や効率を重視した結果、あらゆるモノやサービスが仕事になり、人手不足に陥っている。業界にすべてまかせて、業界外の人はそこに一切関わらないという現状は不自然です。ひとりひとりが周りの人を少し気にかけて、困っていたら手を貸すような社会になれば、福祉の担い手不足も一気に解決に近づくのではないでしょうか」
――スケッターは今「一億総福祉人」社会に行き着くためのスタート地点に立っていて、そのために類似サービスに近いやり方をとっているんですね。
「はい。実際にスケッターでは他社がやっている単発バイト系サービスのように稼げることをアピールしていません。弊社の運営自体も最終的にはビジネスじゃなくなってもいいとさえ思っています。ただ、株式会社でやっている理由はまた別にありますので、そのお話も今後発信していきたいです」
【プロフィール】
鈴木亮平 すずきりょうへい
株式会社プラスロボ 代表取締役 CEO