満員電車とあの子
東京に来てから電車によく乗るようになり、そろそろ10年ぶりのサンドウィッチ状態の乗車も慣れてきたような気がする。慣れるより、その時間帯を避けて避けて避けまくりたいのだけど。
正直、東京に戻るにあたってこの満員電車だけが憂鬱だった。
前住んでいた広島は快適だったな。中心地に住んでいたのもあるけど、目的地はほとんど自転車でシャッシャーっと動くことができたからだ。
毎日の相棒だったジオスのクロスバイクはすっかり乗らなくなって、日に日に年老いていくように錆びついていくのをみると、なんとも言えない気持ち
なったりするものだ。
とまぁそんな好きにはなれない朝の電車で珍しくほっこりしたできことがあった。
最近、ある文筆家さんの著書を読んでそれに集中することで360度の圧から逃れようとしているんだけど、ふと視線を感じて横目で見てみると小学生くらいの男の子が僕の本を覗き込んでいた。
ページをめくったり、電車の揺れで本が動くたびに目線がつられているから相当興味をそそられたんだと思う。
べつに声をかけたわけでもないし、全然知り合いでもないけれど、僕よりずっと身長が低いその子に見えるように本の高さを下げたり、ページをめくる前に彼の視線を確認して読み進めた。
毎日、ただぎゅーぎゅーで苦しかったり、自分を含めてスマホばかり見ている映えもしない景色と時間が流れる乗車もその日は特別な時間に思えた。
きっともう会うことはないだろうし、僕には興味のかけらもないだろうけれど、誰かと同じものを読むというのは久しい感覚で新鮮だった。
たまにはそんな日がこれからもあるといいな。
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