【再録】メイド喫茶、はじめての選び方 ──メイド喫茶ポジショニングマップ
この記事は2013年夏に発行した同人誌「メイドカフェ批評」に寄稿した内容を再録したものとなります。表現はできるだけ当時のものを再現しています。今はそれから8年以上経ち、JKビジネス、コンカフェの情報は当時はありませんでした。しかし、当時から普遍的であることを意識して書いたため、今も通じる内容かと思います。(2021年11月21日やん)
はじめに
私のツイッターのアカウント@skd7 でこの投稿をしたのは2012年3月22日。すぐに300件以上リツイートされ、その後も改訂してツイートする度にリツイート数は少なくない数に達する。リツイートしているのは既にメイド喫茶に行ったことがある人たちが多く、おそらく最初に行くメイド喫茶の重要性を感じているのだろう。
ツイッターでは140文字以内という制約があるため、紹介できる店は限られている。このレポートでは俯瞰的な視点から改めてメイド喫茶を見直してみたい。
秋葉原のメイド喫茶は2001年にオープンしたキュアメイドカフェから始まり、2005年以降のいわゆる「萌えブーム」で急増、2013年7月1日現在、100店舗以上が営業している。一言でメイド喫茶と言っても、お酒を提供する店、ステージパフォーマンスがある店、妹風の衣装、アイドル衣装、アニメやゲームのコスプレ衣装を制服として採用する店などバリエーションも様々だ。そのためメイド喫茶のイメージとは何か?と説明しようとすると全体像が見えにくい。結果として、お客さんのイメージするメイド喫茶と実際に営業しているメイド喫茶との間にギャップが生じてきている。
このレポートの目的は、初めて秋葉原のメイド喫茶に行くお客さんに向けて、ニーズと合致したメイド喫茶を提示することである。お客さんのニーズと訪れる店とのギャップをなくして、メイド喫茶を利用した際の満足度を上げたい。そのために、秋葉原で営業しているメイド喫茶をお客さん視点で分類したポジショニングマップを作成した。マップ上にはできるだけ多くの店舗を掲載し、メイド喫茶の多様性を表現してみた。私はこのレポートを執筆するにあたり、改めて秋葉原のメイド喫茶全店を実地で確認している(秋葉原の範囲はJR秋葉原駅から歩いて10分の徒歩圏とした)。
メイド喫茶の関係者や利用者の中には、このレポートで扱う店に、店側がメイド喫茶と言っていない店も含まれているではないかと思う方もいらっしゃるかもしれない。しかし、このレポートはお客さん視点で店を分類することを目指しており、お客さんの一部がメイド喫茶だと認識して利用している店はなるべく取り込むことにした。何卒ご理解を願いたい。
メイド喫茶の定義
秋葉原で最初のメイド喫茶キュアメイドカフェが2001年にオープンしてから10年以上経った。いまだに「これがメイド喫茶だ」という標準的な定義はない。そのためお客さんが考えるメイド喫茶のイメージはバラバラだ。ロングスカートのメイド服にエプロンを付けたメイドさんが給仕するのがメイド喫茶だと言う人もいれば、「お帰りなさいませ、ご主人様」と言うのがメイド喫茶だと言う人もいる。一昔前にはテレビでメイド喫茶が紹介されることも多かったので、その時のイメージ通りのメイド喫茶が本当のメイドの喫茶なのだと言う人もいる。どれもメイド喫茶と言えるし、どれが間違っているというわけでもない。
ここではメイド喫茶を、左記の四つの項目を満たす店舗と定義する。
1により、飲食店の機能を持たないリフレ、マッサージ、派遣型の店舗はメイド喫茶に含めない。
2により、メイド服以外のコスプレで接客する飲食店を含む。元々メイド喫茶はコスプレ喫茶と呼ばれていたため。
3により、年齢制限のあるキャバクラなどはメイド喫茶から除外する。メイド喫茶は親子でも女性同士でも利用できる。バーなどの主にお酒を提供する店舗については、グレーではあるが、お酒を提供するメイド喫茶は年々増加傾向にあるため、メイド喫茶として取り扱う。
4により、アンナミラーズ、馬車道などの制服系飲食店は除外される。
メイド喫茶のポジショニングマップ
お客さんの求めるメイド喫茶はどこか?お客さんの属性を軸にしたマップ上に店舗を配置した図はポジショニングマップと呼ばれ、店舗間の違いを直感的に把握するのに役立つ。利用者が自分自身で行きたい店を探せることを重視し、男性客中心か女性や子供でも利用可能かという軸と、オタク向けか非オタク向けかという軸を、ポジショニングマップの二軸に設定した。オタクの定義は、本人がオタクを自認しているならばオタクであるとする。さらに、萌えブーム期と現在の状況を比較するため、2005年8月と2013年7月の2つのマップを作成した。
メイド喫茶を左記の8つのグループに分類する。
1 観光客向け型
「お帰りなさいませ、ご主人様」の挨拶が特徴的なのがこの観光客向け型。ドリンク提供時に「萌え萌えキューン」のようなおいしくなるおまじないをかけ、定期的にじゃんけん大会を開催するなど、秋葉原やオタク文化に慣れていない観光客向けに、テレビで紹介されたメイド喫茶像をデフォルメして提供している。実際のオタクや萌え、元々のメイド喫茶からかけ離れているという批判もあるが、メイド喫茶に初めて行く人はこのタイプの店に行くことが多く、メイドさんの採用数も多い。したがって、メイド喫茶業界のゲートウェイ的役割を果たしていると言えよう。
観光客向けの店では、お客さんを飽きさせないよう様々なイベントが試みられており、それに積極的に参加するのが楽しむコツ。観光の思い出となるメイドさんとの2ショットチェキも定番のサービスとなっている。店内でイベントを重視しているため、ホールのメイドさんの数が多めで、その分店側の人件費が高くなり、客単価も他のグループより高めに設定されている。
秋葉原以外では観光客の数が十分ではなく、このタイプの店舗の営業は難しい。
代表的な店は@ほぉ~むカフェ各店。
2 喫茶店型
秋葉原が家電からPCを経て、アニメやゲームの街に移り変わる中で、新しいお客さんがゆっくりとくつろげる空間としてメイド喫茶は生まれた。そのため、メイド喫茶の黎明期にはこの喫茶店型が多かった。
料金も手頃でコーヒー1杯500円前後から楽しめる。お客さんは給仕しているメイドさんを見ながら、雑談をしたり、薄い本を読んだり、ゲームをしたりと思い思いのことをして時間を過ごす。Wi-Fiや電源などインターネット環境が充実した店もあり、ノマドワークにも利用できる。
メイドさんとのコミュニケーションはオーダー時や空いている時など限定的。中にはミアカフェのおかわりカードのようにコミュニケーションのきっかけを用意している店もあるが、多くはない。
萌えブーム以降は賃料の高騰もあり喫茶店型の店は増えていない。
代表的な店はキュアメイドカフェ、シャッツキステ。
3 居酒屋型
店舗数は少ないものの黎明期からあり、根強い人気がある。メイド喫茶の名前が定着する前から営業していた店もある。喫茶店型がお一人様や少人数のお客さんをメインにしているのに対し、居酒屋型はグループ客の利用が多い。固定した制服がなく、その時々でコスプレ衣装が異なることが多いのもこの居酒屋型の特徴。
2000円程度で楽しめ、街の居酒屋と同じように利用できる。お客さんのテーブルでおにぎりやドリンクを作るなど、メニューには遊び心がある。
ある程度広い調理スペースが必要なため、電気街では営業できる物件が限られている。
代表的な店はグランヴァニア、LittleBSD。
4 カフェ&バー型
メイド喫茶は当初お酒のメニューが少なかった。萌えブーム以前は秋葉原の夜は早く、一九時を過ぎると街はシャッター街のようになり、お酒を飲む街というイメージがなかったからだ。その後、ドン・キホーテやヨドバシakiba のオープン、オフィスの進出などにより、夜にお酒を飲める店が増えてきた。メイド喫茶もその流れに乗り、お酒を豊富に用意する店が出てきた。喫茶店型からの転換も多い。
基本的には喫茶店型の店と同じ楽しみ方となる。店によって客単価に差が大きく、新興店ほど客単価が高くなる傾向があるが、サービス内容での差別化が難しく苦戦することが多い。
代表的な店はJAM 秋葉原、ハニハニ秋葉原店。
5 バー型
カウンター席がメインで女の子と話しやすい。ショットバータイプの店はメイド喫茶黎明期からあったが、カウンター越しに女の子と話すカールズバースタイルは地方のメイド喫茶に多く、むしろ秋葉原へは逆輸入に近い形でやってきた。近年、秋葉原で一番増えているタイプがこのバー型である。
一番の売りはカウンターでの接客で、店側もお客さんとのコミュニケーションを重視している。ガールズバーのようにメイドさんにドリンクを奢ることもできる。財布に余裕がある時には奢ってみるとよいだろう。
代表的な店はZOID、bB。
6 リフレ併設型
リフレ営業をしつつ、リフレへのゲートウェイのために、メイドさんのアイドル時間を有効活用してカフェ営業をしているのがこのタイプ。店舗数は減少しているが、そのため良心的な価格帯の店が多い。リフレは女の子と一対一で施術を受けながら会話ができるという利点があり、相場も30分3000円以上と、メイド喫茶より客単価も利益率も高い。
リフレのお客さんがメインのため、カフェのみに行くお客さんには敷居が高く感じられるかもしれない。しかし、メイドさんはリフレの経験から会話スキルの高いフレンドリーな人が多く、穴場として活用できる。
代表的な店はアリスの隠れ家、ぽんでぃしえり。
7 ライブ型
店内にステージがあり、定期的にメイドさんの歌や踊りが演じられる。メイドさん同士でユニットを組んで芸能活動を行なっている店もある。元々メイド喫茶のメイドさんには地下アイドルが多く、店側が活躍の場を用意したのが始まり。以前は観光客向け型の店でライブを行う店があった。@ほぉ~むカフェは人気のあるメイドさんによる完全メイド宣言というアイドルグループをプロデュースしていた。その後、AKB48の出現で急速にメイド喫茶からアイドルのイメージが離れていった。一方で秋葉原やメイド喫茶のメディア露出により、アイドルを目指す女の子は街に集まってきた。その中から生まれたのがディアステージ。黒崎真音やでんぱ組.inc などオリコンを賑わす人気アーティストを輩出した。芸能界を目指すのであれば、メイド喫茶ではないという流れができた。ディアステージの成功で、バックステージパス、アイドルファームなどライブ型の店が次々と登場している。今、秋葉原で一番熱いグループとも言える。
秋葉原以外では池袋などで展開するアフィリアグループも当初メイド喫茶として営業を開始したが、次第にメイド色から脱却し、アイドルのイメージを全面に押し出していった。
ディアステージはメイド喫茶経験者が多く、メイド喫茶のようなイベントも多い。他店もその流れを踏襲するため、ライブ型をメイド喫茶に含めている。
8 テーマ型
メイド喫茶は、お客さん同士がオタク趣味を語り合う場として発展した。そこで、さらに趣味を絞り込んだのがテーマ型である。
ダーツのLittlePSX、サバイバルゲームのふれんどりぃふぁいぁ、パチンコ・スロットのパチノフなど。店独自の大会や初心者向けの講習会なども行われる。アイドルも広義ではここに含まれるが、勢力を拡大させ独自の発展を見せているため、独立したグループとして分類した。
メイド喫茶のマーケティング戦略
メイド喫茶もビジネスであるから、各店舗でマーケティング活動を行なっている。いわゆるマーケティングの4P(Product, Price, Place, Promotion)を使って整理すると、グループごとの特色が見えてくる。この情報を使うと、ポジショニングマップに掲載されていない新しいお店でも、お客さんの側でどういうお店か判断できるようになる。
<Product(製品・サービス)>
テレビでメイド喫茶が出てくる時は、「お帰りなさいませ、ご主人様」という独特の挨拶や萌え萌えじゃんけんが取り上げられる。しかし、こうしたサービスが確実にあるのは観光客向け型を中心とした一部の店舗のみに限られている。
一方で、ゆったり休憩できる喫茶店型やカフェ&バー型では、常連客を飽きさせないように定期的にコスチュームを変更し、メイリッシュのようにコスチュームに合わせて接客態度を変える店もある。
メイド喫茶は厨房設備の弱い店が多く、飲食店として重要なフード類は喫茶店型、居酒屋型やカフェ&バー型の一部の店を除きインスタント食品が中心。その代わりオムライスへお絵かきをしたり、ラミカ付きのメニューを用意したりと見た目の楽しさを演出してカバーしようとしている。
アルコール類は本格的な厨房設備を必要としないため、扱う店が増えてきている。
<Price(価格)>
1時間あたりの平均客単価を、フードやドリンクの料金、チャージ料、チェキ代、ゲーム料などを元にグループごとに計算してみた。
一番安いのはチャージ料を取らない店も多い喫茶店型で、コーヒー1杯500円前後から楽しめる。フードとドリンクを合わせても2000円以内で収まるのがほとんど。リフレ併設型もドリンクがメインのため1000円以内で収まることが多い。ただし、リフレの相場は1時間6000円なので、リフレを受けた場合には一気に値段が跳ね上がる。
居酒屋型も2000円程度から楽しめる比較的安価な部類。差が大きいのはカフェ&バー型で、喫茶店型と変わらない1000円程度の店舗から5000円くらい掛かる店まである。ただし、高いから良いサービスとは限らないのがメイド喫茶。安い店はたくさんあるので、入店してから思ったより高いメニューを提示してきたらすっぱりと断り、他の店に行った方がいい。
バー型はチャージを含めて1杯1000円程度が相場。最近はソフトドリンク飲み放題1時間2000円、アルコール飲み放題3000円と最低単価を底上げするガールズバータイプの営業も増えている。
観光客向け型は、初めてのお客さん向けにドリンク、お絵かき用のフード、チェキなどをセットにして割引感のあるお得なメニューを用意している良質店と、不要なサービスまでセットにして高いメニューを提示する店があり、客単価の振れ幅が大きい。一般に観光客向け型は喫茶店型の2倍の客単価で、割高な店ではさらにその2倍かかる。
各店ともお客さんに満足してもらいつつ、客単価を上げようと試みている。例えば、フードが弱くてもラミカをセットにして付加価値を付けたり、イベント限定のメニューを用意するなど工夫をしている。普段は客単価の低い喫茶店型の店でも、イベントになると一気に客単価が数倍に跳ね上がることもある。決してぼったくりではなく、お客さんは嬉々として高い料金を支払っており、その様子を眺めるのは面白い。
<Place(場所・利便性)>
秋葉原では、比較的安い賃料が新しいビジネスを生み出す土壌となっていた。初期のメイド喫茶も、賃料の安い駅から離れた雑居ビルの中で生まれてきた。
しかし、アキバブーム以降は賃料が高騰。さらに一部のメイド喫茶の暴走による業界イメージの悪化で、メイド喫茶を営業できる物件自体が少なくなっている。潰れたメイド喫茶の跡地にすぐ別のメイド喫茶が入居したり、一つのビルに複数のメイド喫茶が入居し「萌えビル」化したりするのはそのためだ。家賃のメリットがなくなった秋葉原では、新規店は客単価の高い観光客にターゲットを絞り、大通り沿いや駅の近くの外神田1丁目に出店する傾向がある。
地主が経営に関わるグランヴァニア、豊富な資金を投入したダイコクドラッグカフェ、芸能活動で実績のあるバックステージパスなどもあるが、これらはあくまでも例外である。
<Promotion(広報・宣伝)>
メイド喫茶のプロモーションの基本は、ネットを利用した口コミだ。秋葉原関連のニュースサイト、ブログ、mixi、Twitter などが定番。
アキバブームの頃はこぞってテレビ番組がメイド喫茶を取り上げ、パブリシティ効果が非常に高かったが、AKB48のブレイク以降はテレビの興味がアイドルに移り、メイド喫茶がテレビで取り上げられる機会は少なくなってきている。
紙媒体の観光ガイド本も、ネットの普及によりシニア層向けにシフトしていて、秋葉原を取り上げること自体少なくなった。たまにメイド喫茶が取り上げられる時には、@ほぉ~むカフェが掲載されることが多い。
ビラ配りも代表的なプロモーション活動の一つ。メイドさんの手が空いている時に店の前や決められた場所で行う。しかし、2008年6月の秋葉原無差別殺傷事件以降は、ビラ配りが過激化。ライバル店の入り口や異業種店舗の敷地内、道路使用許可のない場所でのビラ配りおよび客引きが増えている。それだけ効果のある宣伝方法ではあるが、お客さん、メイド喫茶同士、異業種企業とのトラブルが絶えない。トラブル防止のために、万世橋メイド系店舗連絡協議会がビラ配りのガイドラインを制定しているが、協議会加盟店の中でルールを守らない店もあり、今後行政側からの規制が強まる可能性がある。
リアルでのプロモーションの多くが秋葉原内で完結している中、面白いのは@ほぉ~むカフェであり、JR上野駅構内に広告を出稿している。
萌えブーム期のメイド喫茶との比較
過去の秋葉原のメイド喫茶業界はどうだったのか?メイド喫茶のバリエーションが固まり、萌えブームが最高潮だった、2005年8月当時のポジショニングマップと比較してみよう。
この頃はまだ、観光客向け型のメイド喫茶が@ほぉ~むカフェのみ。萌えブームで押し寄せた観光客は観光客向け型以外のメイド喫茶にも殺到していた。新しくメイド喫茶がオープンすると、オープン初日にメイド喫茶ファンが行列を作る光景が当たり前のように見られた時期だった。
また、ドン・キホーテやヨドバシakiba のオープンにより、秋葉原の街自体、夜遅くまで営業する店が増え、メイド喫茶も深夜営業を行う店が出てきた。LitlleBSD、@ほぉ~むカフェ、ミアカフェ、JAM 秋葉原は週末を中心に朝五時まで営業を行なっていた。夜のニーズが高まるとお酒が飲める店も登場し、JAM 秋葉原では喫茶店でありながらお酒のメニューも充実し、カフェ&バー型のモデルとなった。ZOIDは平日にショットバー、週末はメイドバーという形態をとった。
2005年と2013年のメイド喫茶を比較すると、喫茶店型の店の数が増えていないことがわかる。喫茶店型の強みはフードメニューが充実していることにあるが、メイド喫茶が入居できる建物の多くは厨房施設が弱く、物件の供給数が圧倒的に足りていない。カフェ& DIMENSION、ショコラッテは秋葉原から離れた台東区上野、淡路町での営業となり、
ロケーションの悪さから集客に苦戦、短期間で閉店した。
その後、2005年8月から翌年3月にかけて秋葉原のメイド喫茶、観光客向け型は@ほぉ~むカフェがミツワビルに2店舗出店。フィーユ、めいどin じゃぱん( 2007年9月閉店) が開店した。テーマ型ではツンデレカフェとしてメディアで紹介された妹系カフェNAGOMI、喫茶店型として大阪からの逆輸入カフェドール東京( 2011年2月閉店)、Cute-M( 2007年十一月閉店)、シャッツキテ、カフェ&バー型としてメリーハート( 2008年9月閉店)、A-BOY( 2006年10月閉店) が次々と開店していった。いずれもメイド喫茶の分類としては、観光客向け型、喫茶店型、カフェ&バー型の3つのグループに収まり、メイド喫茶の定義をさらに厳密に行うと、これらが狭義のメイド喫茶と言える。
秋葉原メイド喫茶の未来
今も秋葉原では次々と新しいメイド喫茶がオープンし、7月も2件のオープンが予定されている。毎年メイド喫茶は減るという話が出るが、増加の傾向は変わらない。ただし、増えているのはお酒をメインにしていたバー型である。
一方、RMやユメシナのように敢えてメイド喫茶とは掲げていないが、実態はメイド喫茶という店も出てきている。さらに、メイドよりもコスプレ色を全面に出した店が、昨年のめておしゃわー以降、エターナル、パチノフと目立ってきている。これらの新店はメイド喫茶との差別化のためにコスプレ色を強めているわけだが、メイド喫茶の歴史は元々コスプレ喫茶から始まっており、業界がちょうど一周した感もある。
秋葉原のメイド喫茶業界で現在問題となっているのはビラ配り。外神田1丁目におけるビラ配りは、ツイッター上で「ビラビラメイド通り」「アキバメイド岩礁地帯」などと揶揄されている。おそらくこのままの状況が続けば、何らかの行政指導が入るだろう。歓楽街化が進めば、新宿のように客引きの規制が入り、ビラ配り自体ができなくなる。ビラ配りができなくなると、観光客向け型、カフェ&バー型を中心に店舗の淘汰が始まり、ビラ配りに依存していたサービスの悪い店はなくなり、それでもメイド喫茶をやりたいという店だけが残るだろう。
メイド喫茶業界として、本当のスタートはその時期なのかもしれない。秋葉原のメイド喫茶と同じような問題を抱えていた業界には、築地の飲食店、月島のもんじゃなどがあり、これらは業界全体の努力でブランドを築いた。メイド喫茶もそれらに並ぶブランドとなることを、私は切に願っている。