激化している人工知能チップの開発競争（有力企業一覧）
百度（バイドゥ） から発表された新しいAI Chip "Kunlun"
2018年7月3日、Baiduの年次イベントで新しいAI Chip "Kunlun(クンルン）"が発表された。データセンタや自動運転で利用される。このKunlunは、Baiduが開発、そして公開している自動運転のためのオープンソース・ソフトウェア"Appolo"を動かすためのAI Chipであり、Baiduのマネタイズ手段となる。また、BaiduはPaddlePaddleという同じくオープンソース（Apache License 2.0）のDeepLearning フレームワークも出している。同フレームワークがNVIDIA社の製造するAI Chip以上に使い勝手の良い金額で出されるということになれば、中国で活動するデータサイエンティストは同社製のAI Chipを使う理由がほとんど無くなるのではなかろうか。
https://www.technologyreview.jp/nl/chinas-google-releases-its-first-ai-chip/
AI Chipを開発している企業の一覧
さて、今回は今後数年間で数兆円規模のビジネスとなるであろうAI Chip市場へ参入している（＆参入しようとしている）企業をざっくりまとめた。本来なら用途（学習用or推論用）や環境（スーパーコンピューターorサーバorモバイルorエッジ）、性質（GPU or FPGA or ASIC）で分類したいところではあるが、詳細を調べてもわからないものが多く、今回は一緒くたにしている。また、全企業を記載はしていない。有名企業もしくは私が聞いたことのあるいくつかの有名スタートアップ企業に絞っている。もし、スタートアップ企業のAI chipが気になるようなら文末に記載の関連記事の"12 AI Hardware Startups Building New AI Chips - Nanalyze"らをご一読頂きたい。
◾️中国大手企業
Baidu
https://venturebeat.com/2018/07/03/baidu-unveils-kunlun-ai-chip-for-edge-and-cloud-computing/
Alibaba
http://www.atimes.com/article/alibaba-developing-advanced-chip-ai-computing/
Huawei
◾️米国大手企業
NVIDIA（圧倒的首位企業）
http://www.nvidia.com/page/home.html
AMD
https://www.amd.com/en/products/professional-graphics/instinct-mi25
Intel
https://gizmodo.com/intel-says-its-gpus-to-rival-amd-and-nvidia-will-be-her-1826777494
Intel (Altera FPGA)
Amazon
https://techcrunch.com/2018/02/12/amazon-may-be-developing-ai-chips-for-alexa/
https://www.technologyreview.com/the-download/610923/why-facebook-wants-to-design-its-own-ai-chips/
Microsoft
IBM
HPE
https://www.nextplatform.com/2017/11/09/hpe-developing-low-power-neural-network-chips/
Qualcomm
https://www.qualcomm.com/news/onq/2017/08/16/we-are-making-device-ai-ubiquitous
Xilinx
https://www.xilinx.com/applications/megatrends/machine-learning.html
◾️その他大手
ARM
https://developer.arm.com/products/processors/machine-learning/arm-ml-processor
Samsung
Fujitsu
https://www.tomshardware.com/news/fujitsu-dlu-deep-learning-processor,35037.html
◾️スタートアップ
Cambricon
Graphcore
Pezy
WAVE Computing
以下、個人的な雑感を箇条書きで。
・AI Chipを研究開発している企業は意外に多い。ざっと数えてみただけでも50社以上ある。
・ハードウェアスタートアップはお金がかかる上に成功確率が低いので投資家に嫌われる。しかし、AI Chipに関してはそれなりの数のスタートアップが存在し、中国のCambriconなどは$2.5Bの評価額でシリーズBの調達を行なっている。期待されるリターンが大きいためだろう。
・Alibabaは自社でAI Chipを研究開発しているにも関わらず、Cambricon (寒武纪), Kneron (耐能), ASR (翱捷科技), C-Sky (中天微), and DeePhi (深鉴)、Barefoot Networks（米国）へ投資も行なっている。負けられない戦いとしていることが伺える。
・NVIDIAは潜在的な競合であるにも関わらずBaidu、Alibaba、 GoogleらへGPUを販売している。
・米国Tech Giantの有力どころはAI Chipの研究開発をしている
・CPUの覇者であるIntelはAMDから技術者を引き抜いて（？）オリジナルのGPUを開発中。また、アルテラというFPGAの会社や省電力で動くMovidiusというAI Chip企業を買収。GPU、FPGA、省電力と幅広く見ている。今度は遅れを取らうよう全方位でキャッチアップを進める様子が伺える。
・ROCmと呼ばれるオープンソースベースのDeepLearningライブラリとGPUを開発・提供しているAMDからも目を離せない。同社はCPUとGPUを同じボードに乗せたAPUを作っており、エッジ側への活用も期待される。FPGAの領域で首位のXilinxやIntelと業務提携中。
・DeepLearningのコアな技術者を多く抱えるGoogleは、既に独自開発のAI ChipであるTPUを開発し、Google Cloud Platformでの提供をはじめている。価格の高さがネックなのか、私はTPUを使ったことがあるという人にまだ会ったことがない
・日本企業ではPezyとFujitsuが頑張っている。Pezyは創業者が逮捕された影響が今後でないことを祈る。
最後に
現在は、NVIDIAがほぼ独占しているものの、５年後は中国企業が大きくシェアを伸ばしている可能性が高いのではないだろうか。あまりに変動要素が大きいものの現在考えられるシナリオではそうなる。彼らのAI Chipが成熟するに従って中国企業における米国企業からの購買比率は間違いなく下がる。そして、中国企業は米国企業以上にメリットある価格でAI Chipを出してくるに違いないので、徐々に外国企業のAI Chip購買比率も動く可能性が高い。それに対して米国政府、米国企業らは事前に手を打つことができるだろうか。
製造まで一気通貫する中国に対して、製造を外国へアウトソーシングしてしまったツケを払う時がくるのかもしれない。
関連記事：
https://medium.com/syncedreview/tracking-the-transforming-ai-chip-market-bac117359459
https://basicmi.github.io/Deep-Learning-Processor-List/#Microsoft
https://www.nanalyze.com/2017/05/12-ai-hardware-startups-new-ai-chips/