仮想通貨のクラウドマイニングファームが危機的状況
クラウドマイニングの老舗 Hashflareから届いた1通のメール
今日のAM 12:06、日付が変わったばかりの頃である。大手マイニングファームであるHashflareから1通のメールが届いた。件名は、"[IMPORTANT] End of Mining Service of SHA-256 Contracts"とある。内容をかいつまむとBitCoinのマイニングを本日停止する、理由はビットコインの価値が下がりすぎていて28営業日連続マイニングで稼げている収益よりもデイリーで支払っているメンテナンスフィーが上回ってしまっているためらしい。
仮想通貨のクラウドマイニングは、BitCoinをはじめとする仮想通貨をマイニングするための機器の期間貸しサービスのようなものだ。クラウドマイニング業者が電気代の安い土地に大量の仮想通貨マイニング用機器を設置し、その機器の一部の使用権を対価と引き換えに一定期間払い出す。貸し出し期間は会社によって異なるため一概には言えないが、HashFlareの場合は1年間であった。長いものでは3年というものもあったのではないかと記憶している。
HashFlareでは、今年の始め頃は1年間の投資収益率は300%程度と見積もられていた。つまり10万円ぶん購入しておけば1年後には30万円になるということである。だが、実は落とし穴もあった。初期の10万円の他に、購入金額に応じて1日あたり決まった金額のメンテナンスフィーがチャージされる。BitCoinの金額が高止まりしているうちは問題にならないものの、Bitcoinの価値が毀損している今、メンテナンスフィーが回収できない状態になってしまった。だから、採掘を止めるというのである。
© pegarainc1
毎日届く仮想通貨マイニングファームからのメール
実は、一部を除く多くのマイニングファームが危機的状況に置かれているのは最近気づいていた。毎日のように弊社へメールが届くのである。弊社はDeepLearningを研究している方向けにGPUクラウドを提供しているので協業したいというのである。英語でサービスを出していることもあって、北米、中国・香港、欧州からと文字通り毎日のように連絡をいただく。マイニングで使われているGPUはDeepLearningで使うGPUと基本的には同じものである。
しかしながら、マイニングファームの方々は儲けを狙って投機的に行なっているのでコンピュータの仕組みをよく理解していない。GPUはDeepLearningで利用することはできるが、システムの構成があまりに異なる。彼/彼女らがやりたいというのはDeepLearningクラウドとマイニングのハイブリッドクラウドなので、構成を変えることなくやりたいというところにこだわられてしまってはなかなか話が進まない。また、システム以外のリテラシーに関しても疑うような内容のメールも多く、ビジネスとして組めない相手も多い。
例えば、NVIDIA社のGeForceを利用している仮想通貨マイニングファームである。GeForce社は仮想通貨マイニングを含むブロックチェーンのマイニングについてはデータセンタへの設置を認めているものの、DeepLearningなどのような演算目的ではデータセンタへの設置を認めていない。正確にはGPUドライバーの利用規約がそのようになっているのだが、GPUのドライバーを迂回することはできないので規約に同意して使うものだ。そこを理解していないファームもまだまだ多いようだ。
できること/できないこと
あまりに多くメールが届くので一緒に組んでできることはないかと検討は進めているものの、前述の通り様々な事情から簡単には進められない。DeepLearningクラウドは高度にインフラ技術を理解しているエンジニア、DeepLearningに精通している機械学習エンジニア、クラウドの運営ノウハウを有しているエンジニア等々、かなり高い次元の技術力が求められる。弊社のCTOは類稀なる変人であるがためにこうしたスキルを有しているが通常は個々の技術領域でも探すことが容易ではない。
また、DeepLearningクラウドは口を用意しておけば黙っていても使ってもらえる代物ではない。日本全体にライブラリを活用してモデルを組める程度のスキルをもつエンジニアは合計でどの程度いるのかと考えたとしたら1万人はいないと考えられる。世界中で見れば100万人規模でいるとは思われるが、その多くはまだまだ初心者である。毎日のようにinfoに届く技術的質問はレベルの高い・低いはあれど範囲はかなり多岐に渡る。ユーザをしっかりサポートできなくてはリテンションしていかない。
単純にシステムのOEMみたいなところも考えられなくもないが、そうした話を彼/彼女らにしても当然のようにほとんど話が通じないのである。こちらはリソースが限られているので当然手厚いサポートは不可能である。モデルケース的に組んでみたいとは考えなくはないものの、相手次第である。残念なことに今のところ良いと思える相手には出会えていないのが現状だ。とはいえ、せっかく使われていないGPUが大量にあり、電気代も安いのでなんとか早急に手を打てたらと思う。
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