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OSSのいいとこ取りは勘弁?

Redis、MongoDB、Kafkaらが相次いで商用サービスを制限するライセンス変更。AWSなどクラウドベンダによる「オープンソースのいいとこ取り」に反発
https://www.publickey1.jp/blog/19/redismongodbkafkaaws.html

米オープンソース開発各社がAWSら大手クラウドベンダへ不満を募らせているようだ。自分たちの開発した誰もが無料で使えるオープンソースをクラウドで提供し莫大な収益をあげているからだという。しかし、誰もが無償で使えるソフトウェアなのだから大手クラウドベンダがそれを活用しようが良いではないかという疑問が湧くかもしれない。そこで私の理解している範囲で背景を説明したいと思う。

実は、オープンソースのソフトウェアはインストールや環境設定等が煩雑な事も多く、運用もわかりにくいということが多々ある。こうした問題を解決するためにオープンソースの開発企業は、開発しているソフトウェアの導入コンサルティングサービスやトラブルが発生した際のテクニカルサポートを有償で請け負っていることも多い。また、初級〜中級者向けに有償トレーニングを提供し、卒業時に資格を与えるといったこともある。その他、機能開発リクエストを行なった企業からの寄付やデュアルライセンス(※1)で稼いでいる。

ところが、大手クラウドベンダーはあらかじめこうしたソフトウェアをインストールした状態で仮想サーバを顧客へ提供するため、煩雑な導入のために費やされるはずの導入コンサルティング費用やテクニカルサポート、トレーニングで得られるはずの収益など、オープンソース開発各社が得ていたかもしれない収益を奪っているという事が背景にあると考えられる。ユーザサイドとしてはわかりにくいものがわかりやすくなっているのでありがたいが、開発元は迷惑で仕方ないのだろう。

それもそのはずで、Redis、MongoDB、Kafkaはこれまでに大規模な資金調達を行なっている。MongoDBは$311M、Redisは$86.6Mを、ストリーミングデータベースプロジェクトApache Kafkaの商用サービスを提供しているConfluent社は$80.9Mを調達している。投資会社(VCなど)から投資を受けているのだ。これらの会社は企業として急激に成長し、莫大な利益を投資家へ返さなくてはならない。したがって、大手クラウドベンダーから収益の種を潰されてしまえば困ってしまうのだ。

オープンソースのソフトウェアは私たちに多くの素晴らしいメリットを与えてくれる。しかしながら、もしかしたら本来はFundable(投資可能)なビジネスには向かないのかもしれない。ラトビアのリガを本社とするZabbix社などはアメリカ型のこうした大規模な資金調達を繰り返しながら成長していくオープンソースビジネスとは異なり、とても堅実なビジネスをしている印象がある。どちらのやり方がスマートで持続可能性の高い経営であるかはわからないものの、アメリカ型のオープンソースビジネスは危うさを感じていた。

この危うさが形となったのが今回の商用サービスの制限である。変更内容の説明はここでは行わないものの、投資を受けている/上場しているオープンソース開発元は、今後、より多くの収益を生み出すために様々な変更を行なってくる可能性が高いと考えて良いだろう。今後ますますソフトウェアの選定についてよくよく考えなくてはならない。

※1 基本のソフトウェアは無料とするが、より付加価値の高いソフトウェア部分を商用ライセンスとすることで収益を上げる企業もある。MongoDBはその成功事例として取り上げられることも多い。

追記:
・Googleの開発しているDeep LearningのためのオープンソースであるTensorFlowは、メリットがはっきりしているので危うさは感じていない。
・Linuxのようにベンダーとべったりのソフトウェアについても持続可能性は高いものと考えている。

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