my secret wakayama 加太・和歌浦の旅
2021年1月24日。
和歌山市がインバウンド観光客向けに行っている企画
「my secret wakayama」の取材という仕事を紹介されて、加太と和歌浦に行ってきた。
知っている人がちょっと優越感を味わえる、そんな旅のプランを提供するのが「my secret wakayama」。ちょっと気になった店や行ってみたかったスポットに足をのばし、地域の人からお話を聞く。そんな充実した旅ができた。
まずは南海加太線に乗って加太駅へ。
加太線は、加太は鯛が有名ということで赤、青、ピンクにラッピングされた「めでたいでんしゃ」というのが有名なのだが、今回は往復どちらも時間が合わず乗ることができなかった。なお運航ダイヤはホームページから知ることができる。
車窓は市街地から徐々にのどかな街並みに移り変わり、海や山の風景を楽しめる。どの駅もめでたいでんしゃののぼり旗があったり装飾されていたりして面白い。
加太駅について、まずは紀伊水道に浮かぶ無人島、友ヶ島へ行こうとしていた。ここへは船で向かう。しかし悪天候により、まさかの全便欠航。出鼻をくじかれた。かつての要塞の遺構が残る島で市内でも有名な観光スポットだったのでぜひとも行ってみたかったが、またの機会にお預けだ。
気を取り直して淡嶋神社へ向かう。道中は雨が降っていて暗い雰囲気。どうなるんだこの旅は、とぐちぐちいながら川沿いを進んでいく。結構細い道が多い。かつての街並みの名残を感じられる。15分ほど歩くと海が見えてきて、そこから少し行ったところに淡嶋神社はある。
人形供養で有名なこの神社は、境内に多くの人形が置いてある。招き猫やひな人形など、日本人形が中心だった。
9時を過ぎ、遅めの朝ご飯をいただく。鳥居をくぐって参道沿いにある魚市商店へ行った。加太のあたりではよくとれる「おく貝」の網焼きと、わかめを練り込んだわかめうどんを食べた。
おく貝はおおあさりとも呼ばれ、その名の通り実は大きく食べ応えがあった。わかめうどんは緑色の面でコシがあり、ほんのりとわかめの風味がした。
三代70年続くお店で、店主のおばあちゃんは、傘を預かってくれたり、ストーブをつけてくれたりと、早起きと寒さですでに疲れている私たちの心と体を温めてくれた。取材でお話を伺っているときも、笑顔で優しく答えてくださったのが印象的だった。
加太駅へ戻る道中、よもぎ餅を売っている千田屋へいった。三代100年続くお店で、かつて一帯でよもぎがよくとれたから始まったそう。今でも多くの観光客が買って帰るそうだ。
柔らかすぎず硬すぎずの餅と優しめのあんこの味が絶妙で、何個でも食べられる。これからもたくさんの観光客に食べてほしいお土産だった。
加太駅へ戻り、休暇村紀州加太の無料送迎バスに乗る。山の上に上がり、休暇村に到着。そこから少し降りて深山砲台跡へ。友ヶ島へ行けなかったときの代替案として和歌山市の観光課の方から紹介された墓所で、私もそこで初めて知った。
友ヶ島と同じく要塞の遺構であり、レンガ製の倉庫などが残る。雨の中ということもあり、不思議な雰囲気だった。明治から太平洋戦争まで紀伊の安全を守り続けたその場所は、今の平和な刻をひっそりと見守っている。
休暇村へ戻り、レストラン「紀伊の国」で昼食。鯛御膳は三種の鯛の刺身に加え、カルパッチョや煮物、スープなど、まさに鯛尽くしで大満足だった。
その後、和歌山市駅から和歌山バスで和歌浦へ向かう。和歌浦は聖武天皇や夏目漱石など、多くの文人墨客が訪れた景勝地で、日本遺産にも登録されている。
まずは純喫茶リエールへ。陸奥宗光の従兄弟で第二代農林水産大臣だった岡崎邦輔の別荘後にあり、店内からは日本庭園が見える。
名物のワッフルはサクサクの軽い触感で、バターのくどさなどは全くなかった。注文を受けてからメレンゲと混ぜ合わせ焼くというこだわりからだろう。一緒に注文したミックスジュースも濃厚な甘さが際立っていて、あっという間に飲み終えた。
リエールの次は、和歌浦天満宮へ行く。合格祈願の神社として知られ、境内にはたくさんの絵馬が飾られていた。階段を上がった正門から見る景色は最高だった。
旅の終着地は本日の宿
天然紀州温泉 元気の湯 国民宿舎 新和歌ロッジ
50年続く旅館で、和風の部屋からは和歌浦の海が見える。かつてはその水面にたくさんの漁火が浮かんでいたのだろうと思いを馳せた。
温泉もある。といっても和歌浦一帯は岩盤が固いため温泉は湧かない。そのため竜門山温泉というところのお湯を運んでいるのだ。和歌浦にある旅館が皆「紀州温泉」と名乗っているのはそのためだ。
わざわざ私たちのために温めてくださった温泉は疲れを癒してくれた。
夕食はとても豪華だった。
ハモのすき焼きは、タレが魚用にあっさり濃すぎないものになっている。ハモを生まれて初めて食べたが、ふわふわの身で、他の料理でもまた食べてみたいと思った。
高温でカラッと揚げる野菜や海の幸の天ぷらもサクサク。
自慢のアシアカエビはぷりぷりの身が絶品。誰が焼いてもこうなるわけではないらしく、ここで食べるからこその味らしい。
夕食後、社長と女将さんの大瀬さん夫妻とお話しした。
かつては白浜と並ぶほどのリゾート地だった和歌浦。リゾート博の頃は多くの人でにぎわっていた。しかし団体旅行の減少などにより衰退。旅館は30軒あったのが現在は7軒にまで減り、廃墟のようになってしまっているところもある。
国民の誰もが低廉で快適に利用出来ることを目的として作られた、市内唯一の国民宿舎である新和歌ロッジも経営が傾くが、サイトコントローラーと契約するなどして乗り切ってきた。
インバウンド観光客が増え、一時は月の一割が外国人というほどだったが、コロナウイルスの影響で、合宿遠征やビジネス利用を含め宿泊客が少なくなってしまった。それでも、今できることを模索して頑張っている。
女将さんは、どうしたら若い人たちに和歌浦の魅力が伝わるのか、和歌浦に来てもらえるのかということを考えていらっしゃった。
歴史があり、新鮮なものがあふれている町。
多くの偉人が訪れたゆかり尽くしの地。
大事なものは全て「感じる」もの。それができる場所が和歌山にはある。
それが十分に伝わっていないのがもどかしい。
新和歌ロッジは「心の荷物を下ろせる宿」を目指しているという。
海を見て喜ぶ人もいる。叫ぶ人もいる。
その人と話して、合ったものを提案できるよう心掛けている。
ほんまもんのおもてなしの魅力を味わってほしい。
施設は古いが掃除は隅々まで行き届いている。
凝ったものはできないが素材にこだわる。
ほんまもんのおもてなしの魅力を味わってほしい。
そして、お客様に心も体も元気になってもらいたい。
そんな想いが、「元気の湯」という名に込められている。
大瀬さん夫妻の言葉からは、和歌浦への愛がこれでもかと伝わってきた。
観光学部生として、これからも地域の人の言葉に耳を傾けていきたい。
彼らの心の中には、このまちを残したい、何とかしたいという、
声には出さない叫びのかけらがある。
それを拾っていきたい。一つも取りこぼしたくない。
そして、その願いを叶えるお手伝いができたら本望だ。
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