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<ル・ポールのドラァグレース>負けても胸を張って

Netflixで「ル・ポールのドラァグレース」にハマって、シーズン1〜13まで見終わった。

クイーンたちの強すぎる個性のぶつかり合いに、たまに胸焼けしそうだったのと、アメリカのカルチャーが分からないと笑えないジョークも多くて、所々早送りしつつだったけれど、毎回のメインチャレンジとなる最後のランウェイ対決が大好きで、夢中で見ていた。

毎シーズン、約13人のクイーンたちが、NO.1ドラァグクイーンを決めるためにさまざまな対決をする。
対決で求められるのは、美しさ、表現力、クリエイティビティー、ユーモアセンス、課題解釈力、モノマネ、歌やダンス、演技、等たくさん。

脱落すると決まった時は、崩れ落ちて立てなくなったり、過呼吸になる程泣く人がいるくらい、ドラァグクイーンたちは命を懸けて戦う。No.1ドラァグクイーンに相応しいと認められるために必要な要素がこんなにもあることを私は全く知らなかった。
ショービジネスは過酷だし、ドラァグはお金もかかるし体力もいると言っていた。朝から晩まで何度もステージ立って、お客さん達を喜ばせて、体力精神力のいる仕事だ。


この番組の楽しみ方の1つは、毎シーズン推しクイーンを決めて、応援しながら観ることだと思う。
推しが脱落してしまうとかなり寂しかったが、それでも全員が個性豊かで、それぞれの魅力があり、色んなドラァグスタイルが見られるので、最後まで楽しい。

全シーズンの中で私の最推しは、シーズン7のヴァイオレット・チャチキ

最初のファッションショー対決の時のリバーシブルのタータンチェックの衣装のオシャレさに度肝を抜かれた。華麗すぎる。
ファイナルのヴァイオレットカラーの衣装も美しすぎてもはや存在含めて芸術作品。

他の対決でも常にファッションセンスがずば抜けていて、いつもストーリー性があって、与えられた課題を解釈して表現するセンスが抜群だった。
まだ若くて他のクイーンに、No.1になる資格がないと言われることもあったが、回を重ねるごとに色んな面を見せてくれたし、小言を言われても、言い返さずに黙ったところも、成長感じた。
常に自分らしくいるメンタルの強さや、堂々とした姿がかっこよくて、次世代のクイーンという感じがした。

その他には、シーズン10のアクエリアやシーズン12のジジ・グッドも好き。
ファッションに強いクイーンが好きなのだと思う。
あと、アジア系のクイーンも応援したくなる。その中では、プラスティック・ティアラがすっぴんになっても端正な顔立ちで美しくて推していた。


クイーンの中には、家族にドラァグをしていることを言えない人や、カミングアウトしても受け入れてもらえなかった人も多い。
自分のアイデンティティを否定されたり、迷い悩み葛藤した経験を経て、自分らしくあろうとする姿は、中身のない「自分らしく生きよう」や「個性を大切に」なんかとは比較にならないほどに、強く響く。

マイノリティとして苦しんだ過去を持つクイーンたちは、今同じような思いをしている人達のためにも、自分らしく輝いていることを求められる。


私はこの番組を見ていて、大好きなPodcastの「Over the Sun」での、沖に出てLook at me!と言えるか?という話題を思い出した。
クイーンたちは、Look At Me!ができる。
太っていて体型を貶されたことがあるクイーンだって、アイデンティティを否定された過去を持つクイーンだって、過去の全て含めて、伝わるのは、今の私が最高!今の私を見て!だった。
ランウェイを歩くときはみんな胸を張って、背筋を伸ばして、堂々と心から表現し、自分らしく輝いている。

薄っぺらい感想になるが、クイーンたちに元気をもらえる。

そして、ルポールが敗者へ送る言葉、「胸を張って消えなさい(Sashay away)」には、一生懸命に戦ったクイーンたちへの愛があって好きだ。
例え負けても、胸を張って。

余談だけど、ル・ポールのドラァグレースを完走した後は、映画の「アイ フィール プリティ」を観た後と、似たような感覚になった。大好きな映画。


ルポールの最後の決め台詞。
「自分を愛せなければ、他人も愛せない」

まずは自分を愛そう、そのために背筋だけでも伸ばして胸を張って歩きたいな、と思わせてくれた。


2022/8/24

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