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経営指標の活用~Part1 資金繰り 債権・債務の回転期間~

こんにちは。SKPです。
これまで、4回に渡って経営指標について紹介してきましたが、【活用する】というよりは、【第三者が見ている点】という視点でした。

今回からは、経営指標を【活用して】経営判断をしていく上で『こういう使い方・考え方ができる』というものをご紹介します。

企業経営の中で、最も注意しなければならないのは【資金繰り】です。たとえ黒字であっても、資金繰りが困窮することによって『黒字倒産』してしまう、ということもあり得るからです。

今回は、その【資金繰り】の状況を検討するために用いる経営指標の紹介となります。

1.売上債権回転期間

最も代表的な「資金繰り」を考える上での経営指標は『売上債権回転期間(回転率)』と呼ばれるものです。まずは計算式を見てみましょう。

売上債権回転期間 = BS 売上債権 ÷ PL 売上高 × 365日
         = BS 売上債権 ÷(PL 売上高÷365日) 
売上債権回転率  = PL 売上高 ÷ BS 売上債権

売上債権はBSの「売掛金」と「受取手形」の合計額を指しています。これらの指標は「売上債権」つまり【売り上げた代金】の回収(入金)の速さを示す指標です。

回転期間は「売り上げてから入金されるまでにかかる日数」を、回転率は「売り上げてから入金される効率」を表します。

そのため、回転期間は数値が【小さい方】が早く回収されていることを表し、回転率は数値が【高い方】が回収効率が高い=早く回収されていることを表します。

慣れないうちは【回転期間】の日数で見た方が分かりやすいと思います。なお、計算式の『365日』を『12か月』として計算すれば、計算結果が『〇ヶ月』となります。

売上債権回転期間は、期間が月表示となっているか、日表示となっているかは、状況・使用のソフトによって異なりますので、どちらの表示となっているかは確認するようにしてください。

ものによっては『回転率』しか表示されていないものもありますが、

売上債権回転期間(日)=365日 ÷ 売上債権回転率

で、売上債権回転期間の日数換算することが可能です。

この売上債権回転期間が「徐々に大きくなっている」という場合は、売上の実際の入金サイトが徐々に伸びていっている、という状況ですので、早く売上代金を回収する努力をしたり、融資等の資金で資金をつないだり、ということを検討しないと、資金繰りが悪化しやすくなります。

2.仕入債務回転期間(回転率)

先ほどの売上債権回転期間(回転率)は、入金の速さを表すものでしたが、逆の指標で「支払の速さ」を表すものがあります。それが『仕入債務回転期間(回転率)』です。こちらもまずは計算式を見ていきましょう。

仕入債務回転期間 = BS 仕入債務 ÷ PL 売上原価 × 365日
         = BS 仕入債務 ÷(PL 売上原価 ÷365日)
仕入債務回転率  = PL 売上原価 ÷ BS 仕入債務

仕入債務はBSの「買掛金」と「支払手形」の合計額を指します。また今回は「売上原価」と書きましたが、状況によっては「仕入高」で計算します。

これは「売上原価」に何の科目・金額が含まれているかによるためです。「買掛金・支払手形」の仕入債務が『どの科目に対して使われているのか』に合わせて調整するのが良いでしょう。

回転期間は「仕入れてから支払うまでにかかる日数」を、回転率は「仕入代金の支払い効率」を表します。

こちらも慣れるまでは【回転期間】の日数で見た方が分かりやすいでしょう。

売上債権の回転率と同じく、仕入債務回転率が高い方が【効率が良い】、仕入債務回転率が低いほど【効率が悪い】ということになるのですが、今回は支払う側ですので、回転率が【低い】方が、支払のサイトが緩やか。つまり支払が遅く、資金繰りに余裕が生まれやすい状態、と言えます。

ただ仕入債務回転率が【異常に低い】、仕入債務回転期間が【異常に大きい】場合、『債務の支払いが滞っている』という状態もあり得るため、高すぎても低すぎても「都合が悪い」のがこの指標の特徴になります。

どれくらいの値が【適正】なのかというのは、業種・業態によって異なるため、『通常時はこれくらい』というのを把握するのが、この指標を上手く活用するスタート地点になります。

定点観測し、双方を比較する

これらの指標は、それぞれ単体で見ても「売上代金の回収が早くなっている」「支払のサイトが遅くなっている」と意味を持つ経営指標ですが、定点観測しつつ、双方を比較することでより有用性が高まります。

定点観測とは「一定期間毎」に指標の推移を追っていくことです。毎年「決算のタイミングで確認する」というのは多いのですが、月々この指標を確認し、傾向を追っていく方が、状況判断が適切になります。

このように月々傾向を追う場合は、指標の計算式の内、PLに該当する部分(売上高・売上原価)を【直近12ヶ月の移動累計額】として計算すると良いでしょう。【移動累計額】とは次のように計算したものをいいます。

・令和2年12月時点 令和2年1月~令和2年12月の合計額
・令和3年1月時点   令和2年2月~令和3年1月の合計額
・令和3年2月時点   令和2年3月~令和3年2月の合計額
  …以降1月ずつスライド

このように計算し、月々の指標の推移を追っていくことによって「季節変動も考慮した上で、その指標の傾向・方向性」を見ることができます。

続いて【双方を比較する】とはどういうことかと言うと、「売上債権回転期間(率)」と「仕入債務回転期間(率)」を比較するということです。

「売上債権回転期間」が「仕入債務回転期間」よりも【長い】場合は、【売上代金の入金よりも先に仕入代金の支払いが行われる】状況である、ということです。

この場合、計算上は【回転期間の開いた日数分】、徐々に仕入代金の支払いが先行していくことになり、「資金繰りが悪化していく懸念が高い」と言うことができます。

また「資金繰りが悪化してきた…」という時、売上代金の回収が遅れているのか、仕入代金の支払いが早くなっているのかによって、実際に取れる対応が異なります。

その原因を正確に把握し、正しい対策を講じるために双方の経営指標を『定期的に比較して』確認する、というのが大切になってきます。


今回ご紹介した「売上債権回転期間」と「仕入債務回転期間」は資金繰りを見る面で、有名な経営指標です。

これらの解説の時には【売上債権回転期間を仕入債務回転期間より短くしましょう】と、よく書かれます。そうすれば資金繰りの心配は少ない、と。

これは「100%間違い」ではないのですが、「100%正しく」もありません。実は資金繰りを考える上で、この2つの指標の比較だけでは【抜けている部分】があるのです。

よりよく経営指標を活用するために、次回はその【抜けている部分】についてご紹介します。




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