同じ商品を1万円で70個売る人、7000円で140個売る人、どっちが優秀?
こんにちは。SKPです。
唐突ですが、あなたが管理者だったとしたら商品を1万円で70個売る販売員(A)と、販価を3割引・7000円で倍の数140個を売る販売員(B)、どちらを評価しますか?
単純に売上だけで見てしまえば販売員Aは70万円(1万円×70個)、販売員Bは98万円(7000円×140個)ですので、販売員Bの方がよく見えます。
しかし、それはあくまでも「売上」の金額だけしか見ていない判断です。前回紹介した「CVP分析(損益分岐点)」の考え方を用いると、利益ベースでどちらの方が会社に対して貢献しているのか、ということを知ることができます。
あくまでも今回の条件で、ということになりますが、実際どのように判断できるか見ていきましょう。
計算実例
・販売商品の仕入値 5000円/個
・販売員A、Bの給与 30万円(固定給)
先ほどの販売金額・販売数量と上記の条件で考えてみます。CVP分析の言葉に合わせると仕入代金5000円は売上数量によって変わりますので「変動費」。給与は売上によって変わらないので「固定費」となります。
これを踏まえて利益を計算すると次のようになります。
固定費(給与)が30万円なので、売上から変動費を引いた貢献利益が30万円以下だと、利益を生み出しません。今回の場合だと、販売員Bは販価の値引(3割)が大きすぎて、貢献利益を28万円しか生み出していません。
つまり販売員Bは販売員Aの倍の数量を売り、売上は大きくなっていますが、実際には会社に利益はもたらしていない、ということです。そのため、この条件下においては販売員Aの方が優秀であると言えるでしょう。
なお、今回の条件の場合、販売員Bが販売員Aと同様の利益を上げようとするならば、125万5千円(175個)の売上が必要となります。
※(5万円(利益)+30万円(固定費))÷( 2000 ÷ 7000 (貢献利益率))
固定費が同額、という前提ですが別の考え方もできます。販売員Aの1個当たりの貢献利益は5000円(1万円-5000円)。販売員Bの1個当たりの貢献利益は2000円(7000円-5000円)となります。
これは販売員Aは1個販売する毎に、販売員Bの2.5倍(5000円÷2000円)の貢献利益を出している、ということです。そのため、販売員Bは販売員Aの2.5倍の数量を売上ない限り、販売員Aの方が利益を生んでいる、と言えます。
原価が変われば結果も変わる
先ほどは仕入値5000円で計算しましたが、原価が変われば当然結果も変わってきます。仮に仕入値を3000円とし、他の条件は変わらない場合の結果も見てみましょう。
この場合、先ほどと違い「販売員Bの方が売上も高く利益も残している」という結果になります。先ほどと違うのは原価、つまり変動費と貢献利益が変わっています。
「1個当たり」の考え方を用いると、今回の販売員Aの1個当たりの貢献利益は7000円。販売員Bは4000円です。販売員Aは販売員Bの「1.75倍の貢献利益」となります。しかし販売員Bは販売員Aの2倍の数量を売っているため、貢献利益の差分を埋めきって、多く売った分さらに利益に貢献した。ということになるのです。
売上の値引きが与える影響
このように「貢献利益」の違いによる影響がいかに大きいことかわかると思います。貢献利益は「売上-変動費(≒原価)」ですから、売上の値引や仕入値の上昇が直接数値に影響します。
売価を下げても「原価率が1%変わるだけ」のように、文字だけで書けば影響は小さく見えるかもしれませんが、実際はもっと大きな影響を与えています。固定費30万円で原価率(変動費率)60%と61%の場合の違いを見てみましょう。
■ 50%の損益分岐点 30万円 ÷(1 - 60%)= 70万
■ 51%の損益分岐点 30万円 ÷(1 - 61%)= 76.9万円
これは原価率が1%悪化した場合、売上を6.9万増やさないと同水準の利益を確保できない、ということを表しています。先ほどの販売員Aであれば7個・販売員Bであれば10個、売上を増やす必要があるということですね。
また逆に考えれば、今回の場合『原価を1%下げれば、6.9万円売ったのと同じ』と言うこともできます。
今回、販売員A・Bを評価するならば、という観点で解説をしていきましたが、財務・会計という視点から見た時、売上だけではなく「原価」「貢献利益」を見ていくことも大切なんだと知っていただければと思います。
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