メカニズムデザインを学ぶ-4- 【三原=チン=ヤンメカニズム】
みなさん、こんにちはこんばんは。S.Kと申します。
前回のソロモン王のジレンマの解決するためのメカニズム、三原=チン=ヤンメカニズムです。
前提となる第二価格オークション
馴染みのあるオークションは、
(1)一番高い入札額を提示した人に
(2)その提示した入札額でモノや権利を与える
というものです。これを第一価格オークション、またはファーストプライスオークション と呼びます。
しかしながら、(2)に対して
(2')二番目に高い入札額でモノや権利を与える
というオークションがあります。これを第二価格オークション、またはセカンドプライスオークション と呼びます。
例えばAさんとBさんが入札者とします。Aが1,000円、Bが2000円を提示した場合、Bが勝者(落札者)となりますが、支払う額は1,000円となります。
この第二価格オークションでは正直に自分の評価額を入札することが最適(弱支配戦略)となっています。これについて詳しくは別記事になりますが、この事実を前提として、以下をお読みください。
三原=チン=ヤンメカニズム
さて、ソロモン王のジレンマのシチュエーションを思い出しましょう。
ソロモン王は本物の母親にこどもを渡したい、という目的がありました。
この目的を達成するために三原=チン=ヤンメカニズムを紹介します。
◆ステップ1
ソロモン王は2人に対して、オークションをする旨を伝えます。A、Bは「参加」または「不参加」を選びます。「参加」する場合は、参加料をソロモン王に支払います。
◆ステップ2
2人とも「参加」を選んだ場合
第二価格オークションが行われます。
このオークションの勝者に対しこどもを渡し、支払額は第二価格オークションなので敗者が提示した金額を支払います。
以下はAが「10,000,000円」Bが「5,000,000円」を入札額を提示した場合の絵です。
1人が「参加」もう1人が「不参加」を選んだ場合
オークションは実施されず、不戦勝として「参加」を選んだ人にこどもを渡します。ただし参加料は取られます。
解説
★Aが本当の母親である場合で解説します
Aは本当の母親なので参加料を支払って「第二価格オークション」に参加します。偽の母親が参加するかどうかは関係ありません。
一方、Bの立場を考えます。オークションに参加しますか?
「参加」を選んだ場合に、第二価格オークションなので、自分の評価額を入札額として提示しようとします。冒頭の第二価格オークションの前提を思い出してください。
そうすると必ず「本当の母親の評価値>偽の母親の評価値」となるため、偽の母親が勝てることはありません。本当の母親の評価値以上の価格を入札して勝ったとしても、損するだけです。ですので、負けることが確定してます。
すると、そもそも参加料を払ってまでして、このオークションに参加しようとは思いません。ということは「本当の母親」だけが参加を表明、参加料を支払い、「偽の母親」は参加しません。
これにより、本当の母親にこどもが渡されて、ソロモン王の目的を達成することができました。
次回
ソロモン王の目標は前回と今回の記事で書いたようなメカニズムで遂行することができます。しかしながら、すべての目標がうまく達成できるようなメカニズムを設計できるとは限りません。
次回からは、
*どのような目標が
*どのような手段で
*どのような戦略的状況によって
実現できるのかを考えていくことになります。
「目標」「手段」「戦略的状況」が
「社会的選択対応」「メカニズム」「解概念」で表現されます。
ここからわかりづらくなってくるので、何かわかりやすくなるように工夫していきたいと思います。
では、次回の記事でお会いしましょう。
参考文献
学部レベル
学部上級〜院レベル
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