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メカニズムデザインを学ぶ-3- 【グレーザー=マーメカニズム】
みなさん、こんにちはこんばんは。S.Kと申します。
前回のソロモン王のジレンマの解決するためのメカニズム、グレーザー=マーメカニズムです。資料を作っているので、いつか説明動画を作りますが、
まずは記事での説明をいたします。
グレーザー=マーメカニズム
前回のシチュエーションですが、ソロモン王としては
本物の母親にこどもを渡したい、という目的がありました。
しかし、前回の真っ二つメカニズム(過激)では、偽の母親が「私ではなくあっちが母親だ」と嘘を主張した場合に解決できません。
そこで、今回のグレーザー=マーメカニズムの登場です。
◆ステップ1
ソロモン王はAに対して、本物の母親かどうかを尋ねます。
Aが「Bが母親です」といえば、そこでBを母親認定し、終了します。
Aが「私(A)が母親です」といえば、ステップ2に進みます。
◆ステップ2
ソロモン王はBに対し、「Aのいうことが本当か」を尋ねます。
Bが「そうです」と答えれば、Aを母親認定し、終了します。
Bが「いいえ、私が母親です」と答えれば、
Aは嘘をついたということで罰金を支払うことになり、Bは多額の支払いをソロモン王にします。そして、ソロモン王はBを母親認定し、終了します
解説
★Aが本当の母親である場合
母親と偽っているBにとって、こどもを得る事よりも罰金の支払いが嫌だと仮定します。
するとこの仕組みのもとでは、Aは「私が本当の母親だ」と主張し、Bは「そうです」を答えます。この結果、A、B共に支払いをすることなく、本当の母親であるAにこどもが渡ります。(ソロモン王の目的を達成)
★Bが本当の母親である場合
今度はBが本当の母親であるとしましょう。
Bは本当の母親なので、借金してでもこどもを取り戻すことを優先すると仮定します。
すると、Aが「私の母親です」と主張してきたとしても、お金を払ってでも取り戻そうとします。それを考えると、Aはただ単に罰金を支払わされるのが嫌なので、最初から「Bが母親です」と主張することになります。
この結果、A、B共に支払いをすることなく、本当の母親であるBにこどもが渡ります。(ソロモン王の目的を達成)
余談
気が付いた人もいるかもしれませんが、上の仕組みでプレイヤーの行動を予測するときに、後ろ向き、つまりBの行動から考えてますよね?これ、部分ゲーム完全均衡です。
覚えておいて欲しいのは、制度、仕組みを考えるときにプレイヤーがどういう行動をとるか、を考えなければいけません。今回であれば部分ゲーム完全均衡ですが、行動の予測としてナッシュ均衡だったり、支配戦略均衡だったりを考えることもあるわけです。
そういう均衡行動を前提として、仕組みを作り、それによって、目的を達成できるかどうかを考える、ということになります。これは、今後も出てくるので頭の片隅に入れといてください。
また、ゲーム理論では仕組みがあって、そこでどういう均衡になるかに焦点を当ててましたが、メカニズムデザインではその仕組みそのものを変数として考えているという発想になります。この辺りを整理しておきましょう。
次回は別のメカニズムをご紹介します。では、またお会いしましょう。
参考文献
Efficient Allocation of a “Prize”-King Dilemma
Glazer and Ma (1986)
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