きをうえる #未来のためにできること
私には3歳になる息子がいる。
ある日、私の母が息子に買い与えてくれたおもちゃで遊んでいると
ふと自分の仕事の尊さを再認識する場面があった。
そのおもちゃは、ひらがな一文字とそれから連想されるイラストが載った単語カードのようなもの。
”あ”なら「あひる」といった具合だ。
あから順にめくって、最後の「わをん」に差し掛かる。
”を”から始まるものなんてあったかな?
自分でも想像しながらめくったところ「きをうえる」。
そうきたか!と心の中でツッコミを入れつつ、数ある〇〇を〇〇の中から「きをうえる」が選ばれていることを嬉しく思った。
なぜなら私は、まさに木を植える仕事をしているからだ。
木を植えることの重要性は広く知られていると思う。
森林には様々な公益的機能があり、我々の生活の基盤となっている。
持続可能な世界を実現するための1ピースとして、森林はなくてはならない存在なのだ。
私はそんな森林を相手に仕事をしている。
昨今は先代が植えてくださった木々が収穫期を迎えており、専ら木材の収穫作業を行っている。
収穫した後は次の収穫に向けて伐採跡地に木を植える。
次に収穫するのは、50年、100年後の未来。
それぞれの時代を生きる人が次の時代のために作業を行う。
世代を超えるスケールの大きい仕事だ。
木を植えることは、CO2吸収の点からも重要である。
木は植林後10~20年の間のCO2吸収量が最も多いとされている。
だが、日本の森林も少子高齢化の状況。
育ち盛りの森林を造っていくためにも、森林の更新は欠かせない。
更新にあたっては、よく考えてから木を植えることが大切だ。
なにせ答えが出るのが最低でも50年後。
自分の孫の代にどんな森林になっていてほしいか。
適材適所ならぬ適地適木に則して慎重に計画を練って植えていく。
私はこの計画を練る役割を担っていて、この想像を膨らませることが本当に楽しい。
植えた木が年々大きくなっていく姿を見回る作業は林業をやっていて嬉しい時間だ。
想いを込めて植えた木々が育っていけば、きっといい森林になる。
その森林が我々のこれからの生活の基盤となっていく。
冒頭のおもちゃの製作元もその大切さを子どもに伝えたいという想いで”きをうえる”を選んでくださったのだろう。
子どもたちにもぜひ興味を持ってほしい。
興味を持ってくれた未来の林業の担い手のため、これからの地球のために
私はこれからも”きをうえる”。