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雨天中止

仙人爺ちゃんが軒先で眠そうな顔をしている。今日も畑仕事の準備をしていたのだが、雨に降られて、本日の作業は中止である。

僕は、寝癖だらけのボサボサ頭を掻きながらタバコに火を点ける。
『仙人爺ちゃん、心の病って本当にいつか寛解するのかな? 俺は今日すごく調子がいいんだよ、沢山言葉が出てくるし、いつも頭の中でどうでもいいと感じている、冷めた感覚が、今日はないんだ』 
『寛解、ワカラナイね。去年の6月ころまでの君はそんな風にみえたけど』

仙人爺ちゃんもタバコに火を点ける。目を細くして美味しそうに煙を吐き出す。僕は、この人のタバコの吸い方が好きだ。実に美味そうにタバコを飲む人である。

『仙人爺ちゃん、俺最近、欝気味だったからさ、欝が明けたときは、また少し感じ方が変わるみたいだね、畑仕事も今はめんどくさいとは思わないよ』

『でも、今日は中止だ。カップ焼きそばを食べよう』

割り箸を割ってカップ焼きそばを静かに啜る二人の畑仕事は、明日も続く。生きていく限り、人生は続く。いつかいいことあるさ、とは言えない俺だけれど、気分は、少しのきっかけや、時のタイミングで簡単に変化することは知っている。ダウナーのときは、なにかポジティブな行動を起こすといい。そうは考えられないのがダウナーの深みではあるのだけれど。ひとまず、俺は明日も、畑仕事を頑張る。

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