学歴や専門性に自信がない人へ勧めるB to B法人営業の一種「アカウントマネージャー」
就職戦線には定期的に大きな問題が起きます。2020年~2021年の今はコロナ、その前はリーマンショックでしょうか。さらにその前は就職氷河期でしたね。氷河期って今まで何回あったんだろう。
就職に苦労する文系大学生
特に、理系と比べて文系は就職に苦労します。海外留学していてそこそこ英語話せてTOEIC900点持っていても苦労します。多くの企業が欲しがるのはそこじゃないからです。20代の女性が就職はしたものの貧困ラインに陥っているというニュースも定期的に報道されます。正社員になれなくて非正規雇用しかない、先が見えないという話もよく報道されます。
どう考えても需給バランスがマッチしていないので進学するなら初めから理系にするか、卒業後の進路が堅い専門学校を選んで行く方がいいように思えますが、それでもほとんどの高校生は文系大学に進学します。結果就職活動で大変なことになるか、なんとか就職できてもそこがブラック企業だったり営業ソルジャー部隊に放り込まれたりして大変なことになったりします。
専門性の低い事務系は正社員採用されない
身も蓋もないことですが、ホワイトカラーの中でも敷居が低そうな営業事務の正社員採用などほとんどありません。教育コストが低いですし、売上やイノベーションに直結しないことから、契約社員や派遣社員で十分と考える企業がほとんどです。もっと言えば自動化とかペーパーレスとか、極力人間の手をかけずにやっちゃおうというのが世の中の流れです。
もちろん営業事務の目線で受発注業務を改善しようといった前向きなイベントはあり得ると思いますが、そういうのは営業部長とか企画部とかでもリードできます。はじめからそういうことまで期待されているケースは少ないでしょう。
このセグメントがレッドゾーンだというのは就職活動するまでもなく分かり切っているのです。むしろ人員過剰で頭数を減らしたいと思っている会社の方が多いんじゃないでしょうか。
実は多様な営業の世界
かといって知らない人に嫌がられながらズカズカ営業かけるなんて性格的に無理、という人は多いと思います。というか普通はそうでしょう。いくら断れても怒られても冷たく追い出されても減るものじゃないしへっちゃらです、なんていう人の方が少数派でしょう。むしろサイコパスの素質がありそうです。
事務系もダメ、かといって営業も無理、じゃあどうしろというのか。とお思いでしょうが、実は営業というのは多様な世界です。誰もが想像するいかにも辛そうなコピー機の飛び込み営業や、生保営業ばかりではないのです。比較軸としてはこういうものがあります。
・B to B か B to C か
・有形商材か、無形商材か
・設備か、消費財か
・テクニカルか、非テクニカルな商品か
・単価が大きいか、小さいか
・直接販売か、代理店販売か
上げるとたくさんあるのですが、すべて語ると膨大な文字数になりそうなので、話の本筋に合わせてB to B と B to C に分けて考えましょう。
昔も今もB to Cは本当にキツイ
B to C営業は、基本的にどれもこれもいろんな意味でキツイです。理由を挙げてみます。
・人は基本的に営業されるのが嫌い
・自分が所属する会社向けならばともかく、自分自身に営業されるのはもっと嫌い
・欲しくなったら自ら店舗へWebサイトを訪問するから放っておいて欲しい
・むしろAmazonや楽天でゆっくり選んで買いたい
・営業マンのコストが乗った買い物なんかしたくない
こうしてみると、サイコパス素質がある人じゃないとこの仕事できないんじゃないかと、感嘆と恐怖の入り混じった目で見てしまいます。はっきり言って顧客は本当に営業パーソンに冷たいです。それでも何十人何百人に営業をかけて分母を増やして結果成約を得るのがB to C営業なのです。
そして昔と違ってAmazonとか楽天証券とかライフネット生命とか、加えて良く分からないWeb広告から誘導されるダイエットサプリとか、みんなインターネットで商品を買うのに抵抗が無くなっています。
もうすぐ40歳になる私の今までの人生において、B to C営業パーソンが介在しないといけなかった買い物は「家を借りるとき」と「家を買うとき」と「結婚式場」くらいでした。理由は簡単で営業を介さずに買うことができなかったらというだけです。
もちろんそれでもB to C営業がいいという人がいるのはわかりますし、それは一切否定しません。実際、外資系保険会社は高給取りで有名です。ただ、そこに夢や希望を持たない人が敢えて能動的に選択する仕事ではないと、私は思います。
B to Cとは別世界のB to B営業
もう結論に入りますが、特別なメンタルを持っているわけはなく、学歴や専門性に自信がない人がほどB to B営業はおすすめです。なぜなら、「Sales」ではなく「Account manager」が良いからです。
・Sales:ひたすら新規顧客開拓をする、路上でチラシを配る、オフィス向けにガンガン営業電話をかけ続ける
・Account manager:担当になった顧客やそのグループ会社との既存の長期的な関係を維持し、取引を継続し、結果としてその顧客たちから注文を得る(より詳細はWikipediaをご覧ください)
B to B営業はアカウントマネージャーの方が多数派だと思います。ここが狙い目なのです。
この仕事は、営業行為に加えて、社内と顧客にいるステークホルダーたちの調整役という意味合いが強いです。1日300件飛び込み営業や営業電話かける鉄のメンタルを持つ営業切り込み隊長みたいな人よりも、物腰が柔らくて常識的なコミュニケーションが取れて空気が読める人の方が適性があると思います。もちろん行動力や売上への執着心といった基本的なマインドセットは必要ですが、すごく営業力ある人がすごい営業として安定的収益や顧客関係を作り上げられるとは限らない、逆も然りなのです。
そう聞くと、世間一般の営業のイメージとはだいぶ違うと思いませんか? B to Bは良くも悪くも、簡単に新規顧客開拓はできません。B to Cと比べると意思決定に顧客の感情が入る余地が少なく、どうしても自社のことをよく知る既存取引先から買うという決定になりがちです。その分、しっかりと顧客関係を維持発展することの重要性が大きいのです。
ということで、私は基本的に(特に拘りがなければ)B to CではなくB to Bの営業をおすすめします。
※ もちろんアカウントマネージャーが付く前に、誰かが新規開拓したから既存顧客がいるわけで、そういう営業はビジネスデベロップメントと呼ばれます。「新規事業開発室」とかそういう部署に配属されていたり、新商品の専任営業となることが多いです。そういうのはアカウントマネージャーとは別次元の仕事なのでいったんお忘れください。
B to B向けテクニカルセールス・プロフェッショナルセールス
また、営業には「製品・サービス・その周辺知識に詳しい営業」という価値が存在します。顧客は、この人は自社商品の営業なんだから自社商品に詳しくあってほしいと期待しますが、その期待が外れるケースは多いです。営業は商品を売るのが営業で、顧客が知りたいことや知っておくべきことを適切に説明するのは自分の仕事ではないと思っている営業が世の中にはたくさんいるからです。(むしろ商品知識という意味では分業度合いが低いB to C営業パーソンの方が優れている方が多い気がします。)
「製品に詳しい営業・アカウントマネージャー」というだけで他の営業たちとものすごく大きな差が付きます。ライバル会社だけではなく、自社の営業の先輩・後輩、もっと言えば上司とも差別化できます。製品に詳しくなるのは簡単で、こういうことをするだけです。
・知らない言葉を聞いたら、グーグル検索してその意味を調べる
・社内にマニュアルやデモ環境があったらまずそれを見て学ぶ
・回答に自信のない質問を受けたら、自分なりの回答ドラフトを書いて、それが正しいかどうかを詳しい人にチェックしてもらう
・テクニカルな質問だからと言って別部門に丸投げしない
・アウトプットする
もはや本を買うのに書店に行く必要などないように、複雑な議論やすり合わせが必要ない商品は営業パーソンから買う必要はないのです。オフィスチェアやLANケーブルなんてECサイトやアスクルで買えばよくて、法人向け業務改善クラウドサービスとか高層ビルに入れるエレベーターとかそういうものこそ営業パーソンが介在する意味があるのです。
なのに「技術的なことは当社の技術者が回答するのでお手数ですがそちらにメールしてお問合せ頂けますか」とか平気で言っちゃう営業がたくさんいます。話を理解できなくてエスカレーションすることもできなかったりします。
そこで、製品やそれに関する社会制度や運用のことが良く分かり電話一本かければ相談に乗ってくれるアカウントマネージャーというのはとても光る存在です。
ほとんどの場合、理系出身者である必要はありません。前述の通り知識を吸収する姿勢を持って日々過ごせばよいでしょう。実際に自分で機械やシステムをオペレーションするわけではなく、顧客の言葉を理解して自分の言葉で説明できればいいからです。
ここで注意頂きたいのが、製品に詳しくなればそれでいいというわけではないです。既存顧客管理がメインであっても、営業は営業なので売上への執着心や泥臭さやガッツや図々しさは絶対に必要です。コールドコールや飛び込み営業をするときもあるとは思います。アカウントマネージャーは世間で言われるドブ板営業ではないけれども、決してキレイでクールなだけの仕事ではありません。
どうすればB to B アカウントマネージャーになれるのか
B to B企業は基本的に知名度が低いので、隠れた優良中小企業もたくさんあります。企業数自体とにかく多いので、大卒であれば、強く選り好みせず、まともな会話力と文章作成読解能力があればどこかしら受け皿はあると思います。(専門卒や高卒のことは私の情報が限られているためコメントを差し控えます)
法人営業の募集要件は、ほとんどの場合それほど厳しくありません。新卒においてはだいたい文理の区別はないですし、特別な資格も必要ありません。多数派である国内営業であれば英語もいらないことがほとんどです。
私の経験だと知名度低めの一部上場企業でも普通にFラン大学生を取っていました。
中途になれば一部の超著名企業を除けばもはや出身大学は関係ないというか話題にすら上がらないのが普通です。何を思って、誰に、何を、どれだけ売ってきたかが焦点です。20代の転職であれば業界未経験でも可能性はあると思いますが、30過ぎたら同業界もしくは比較的近い業界の経験がないと選択肢は狭まります。
世間の認知と実態に大きなギャップがある職種の一つだと思いますので将来に迷ったらとりあえず法人営業を選択肢に入れてみるというのは悪くないと思います。