バーでしっとりと飲みたい人生だった。
私はお酒が飲めない。大トラと甘党の間に産まれたので、どちらに転ぶか、我ながら期待していたのだが、最終、そういう結果になった。
大トラの名残もあって、お酒自体は好きだ。白ワインやシャンパン、辛口だけれど甘さもあるものが好き。けれども量が飲めず、飲まないでいたら、一口でクラクラするようになってしまった。
薄暗い上品なバーで、ひっそりお酒を楽しむ。
ずっと憧れていた。理由は確実に、とあるラジオ番組を聴いていたためである。
『サントリー サタデー ウェイティング バー』(Suntory Saturday Waiting Bar)のAVANTI"(アヴァンティ)。
素敵かつ二十年ほど放送されていたから、聴いておられた方も多いと思う。1992年から始まった番組で、物心ついた頃には、すっかりファンになっていた。
主人公の紳士が、土曜の午後にバーに来る。マスターのスタンに「いつもの」と、たいてい、ウイスキーのロックをたのむ。
そしてバーに来る客、ミュージシャン、俳優、スポーツ選手、はたまた政治家といった客の話に、聞き耳を立てるのである。
私も、カフェなどで面白そうな話が聞こえてきた際は、紳士のマネをして、
(おやおや、どうやらあちらの席では〇〇の話をしているそうですよ、では聞き耳を…)
と、耳をすませることがある。先のセリフの後に、ウイスキーグラスの氷をカラカラ鳴らす音が聞こえると、ゲストの会話にうつる、という構成であった。
このバーは実在していて、東京港区元麻布に、看板もない隠れ家風の雰囲気で佇んでいた。2011年に改装してからは、ガラス張りの入り口と木をふんだんに使った内装と、明るい雰囲気になっているとのことである。
このお店、探せなかったのだが、なんと、ポッドキャストで番組が続いているとのこと!!!!!!!!!
どんだけびっくりマーク押しても足りないわ、だって大好きだったんだもん。聴かねば。
どうやら2019年からポッドキャストは始まったらしい。私としたことが…気づかなかったとは。過去の放送をエピソードごとに流しているようだが、聴けるだけでもありがたい。
きゃー!!!!紳士が普通に登場してるよー!!!!!!!あのグラスのカラカラも健在!!!!!!最高!!!!!!
荒ぶっちゃったけど、荒ぶるから!あんな最高な番組。
この最高な番組を聴いて、バーに憧れない人などいるのだろうか。
番組を聴きながら、いつの日か私も、お酒を楽しみながら聞き耳をたてるのだ、と楽しみにしていた。
お酒が飲めないことはわかったし、夜は眠くてほとんど出歩けないけれども、絶対お酒が飲める友人に頼んで、お洒落なバーに突撃するのだ。
その時は友人の話に、しっかりと耳を傾けながら。