学術論文の中での情報の探し方(論文の構成)
私たちは物を片付けるときに目的によって収納場所を分けたりします。
食器や調理器具はキッチンに置いたり、石鹸や整髪料は洗面台に置いたり。
そうすると、どこに何があるかはっきり覚えてなくても、用途でなんとなく探すべき場所が分かるようになります。
これが出来てないと探すのにやたらと時間が掛かってしまいますね。
学術論文も同じようにどこにどのような情報を記述するのかというのがしっかりと決まっていて、必要な情報を素早く探せるようになっています。
ただ、どこに何の情報があるかわかっていないとやはり時間が無駄になってしまうので、簡単に論文の構成を頭に入れておきましょう。
構成要素は
・タイトル、要約 (Abstract, アブストラクト)
・背景 (Introduction, イントロダクション)
・手法 (Methods, メソッド)
・結果 (Results, レザルト)
・考察 (Discussion, ディスカッション)
細かい分類がさらにこれらの中でありますが、基本的に以上の5つで構成されています。
これが本当によく出来ている。
それぞれで何が書いてあるのか、を説明します。
この学術論文の構成が頭に入っているだけで、論文の全部を読まなくても必要な情報にアクセスできるようになり便利です。
タイトル、要約
ここはこの論文のまとめが簡潔に書かれています。つまり、ここを読めばこの論文の概要が分かるので、素早く内容を確認したいときはここを読みましょう。
(画像は依然調べたこのイグノーベル賞論文)
背景
研究をする必要性、きっかけ
それまでの自他の先行研究で分かっていること、議論されていること、分かっていないこと、
この研究で何を明らかにしたかったのか、できたのか
といった事柄について書かれています。
研究の動機について知りたい、それまでの先行研究で何がなされてきたのかということを知りたいときに読みましょう。
手法
どのように実験・解析をしたのか、について書いています。
実験条件について詳細に具体的に書いてあるところなので、読みやすくはないですが、詳細な情報が知りたいときに読む部分です。
結果
この研究の結果について書いてある論文のメインの部分です。
個々の実験について、どういう目的を持ってて、どういった結果になったのか、統計的に差があったのか、その結果をどう解釈したのか、ということが書かれています。
この研究のデータや経緯について知りたいときに読む部分です。
考察
一連の結果から導かれる研究の結論や、別の研究との関連がさらにありそうか、ということを論じる部分です。
論文の中で一番自由度が高く、筆者の考えを自由に展開できる部分になります。
また次の研究の背景に繋がっていきます。
筆者がこの研究から何を考えたのか、または新たな関連研究としてどのようなものがありそうか、ということを知りたいときに読む部分です。
これに参照文献 (References)や追加情報(Supplement information)や謝辞(Acknowledgment)などの項目がついて論文が出来上がっています。
特にReferencesはこの論文で引用している文献が一覧になっている部分で、関連研究を調べる際に非常に重要になってきます。
研究について知りたい情報はだいたいこれらのうちのどれかに分類されます(データ(結果)か、関連研究(背景・考察)か、詳細情報(手法)か、要約か)。
この構成はよく出来ていて、必要な情報に素早くアクセスできるようになっています。
また、考察は次にやるべき研究の背景へと繋がっていて、ぐるぐると研究のサイクルが回っていきます。
ビジネスでいうPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルと似たような構成が、何百年も前に確立しています。すごいです。
以上が基本的な論文の構成です。
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