第37回家の光童話賞佳作入選作品「おとまりの夜」
****昨年応募した作品が第37回家の光童話賞(一社家の光協会主催)の佳作に選ばれました。佳作は誌上に掲載されないので、主催者様の許可をいただきこちらに掲載します。***
おとまりの夜
みいちゃんはきょうはじめて、ひとりでおばあちゃんのいえにおとまりします。
おばあちゃんは、山の中の、木でできたふるいおうちにひとりですんでいます。
ひるま、みいちゃんは、おうちのまわりでバッタやチョウチョをつかまえたり、おばあちゃんといっしょにはたけでやさいをしゅうかくしたり、ちかくの川らで石をひっくりかえしたりしてあそびました。おうちのちかくではできないことばかりで、あせでふくがビショビショになってもぜんぜんきにならないほど、むちゅうになってあそびました。
よる、おばあちゃんがやさいたくさんのカレーをつくってくれました。ふたりでカレーをたべながら、みいちゃんはふと、
「おばあちゃん、いつもひとりでさびしくない?」ときいてみました。おばあちゃんは、
「ぜんぜんさびしくないよ。ここはけっこうにぎやかだもの」といいました。
「え、ほかにだれかいるの?」とみいちゃんがきくと、おばあちゃんは「ふふふ」とわらっただけでした。
おばあちゃんがふとんをふたつならべてしいてくれてるとき、みいちゃんは、カーテンのすきまからそとをのぞいてみました。みいちゃんのいえのまわりは、よるでもがいとうやいえのあかりであかるいのに、ここはまっくらでなんにも見えません。
とつぜん、てんじょうのほうから「ケッケッケッケッ」という大きなこえがきこえました。みいちゃんがおもわずおばあちゃんにしがみつくと、おばあちゃんはわらって、
「あれはヤモリのなきごえよ。ヤモリはうちをまもってくれるの」といいました。『あんな大きなこえでなくなんて、ヤモリってどんだけ大きいんだろう』みいちゃんはそんなことをおもいながら目をつぶってねむりました。
しばらくして、トイレにいきたくなって目がさめました。まだまっくらなよなかです。おばあちゃんちのトイレはいえのそとにあるのをおもいだして、みいちゃんはふあんなきもちになりました。
そこでおばあちゃんをおこそうと、となりのふとんを見ました。ところが、おばあちゃんがいません。びっくりして、ふとんの中から「おばあちゃん」とよんでみたけど、へんじはありません。
みいちゃんはなきそうになりました。でもどうしてもトイレにいきたくて、ゆうきをだしてふとんからはいだすと、そっとふすまをあけてろうかを見ました。ろうかはうすぐらくて、まがりかどのむこうからなにかが出てきそうなかんじがします。もういちど、
「おばあちゃん!」とよんでみましたが、やっぱりへんじはありません。そのかわり、
「ケッケッケッケッケッ」という大きいこえが、てんじょうのほうからきこえました。
みいちゃんは「ひゃっ」といって耳をふさぎ、しゃがみこみました。でも、おばあちゃんがいっていたことをおもいだして、そおっとこえのしたほうを見あげました。すると、てんじょうちかくのかべに、みいちゃんの手のひらぐらいの大きさの、白っぽいトカゲみたいなものがいるのが見えました。立ち上がってよく見ると、それはクリクリした大きな目でみいちゃんを見ています。
「あなたがヤモリ?」みいちゃんがきくと、ヤモリは口をあけてペロリとベロを出し、じぶんの右目をなめました。そのかおがなんだかとってもかわいくて、『あんなに大きなこえなのに、ヤモリって小さいのね』と、みいちゃんはちょっとホッとしました。
ヤモリはかべに小さい四本の足でへばりつきながら、サササっとろうかのかどをまがっていって、そこでまた「ケケッ」とみじかくなきました。みいちゃんはヤモリをみうしなわないように、いそいであとをおいかけました。ろうかをまがるとかってぐちがあり、サンダルをはいてそとへ出ればトイレです。ヤモリはかってぐちのドアの上まできて、みいちゃんのほうをむくと、口をあけてペロリとベロを出し、こんどは左目をなめました。みいちゃんはおもいきってドアをあけました。
すると、「リリリリリ」「チチチチチ」「ギーギーギー」「コロコロコロ」、いろんな虫のこえがみいちゃんの耳にとびこんできました。いままで気づかなかったのがふしぎなくらい大きなこえです。ヤモリももういちど、「ケッケッケッケッ」と大きなこえでなきました。
「あら、みいちゃん、ひとりでトイレまでこられてえらいわねぇ」と、おばあちゃんがトイレから出てきていいました。みいちゃんはおばあちゃんにだきついて、
「こわかったけど、ヤモリがついていてくれたの」といいました。そして、
「もうこわくないよ。だっておそとはこんなににぎやかなんだもん」と、虫やヤモリのこえにまけないように大きなこえでいうと、いそいでトイレにかけこみました。
おしまい
***久しぶりに書いた作品が佳作に選ばれ嬉しかったです。選んでいただきありがとうございました。これを励みにまた創作活動を頑張りたいと思います。・・・タブン・・・****