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またひとつ自分の知っている歴史と変わっていた件
筆者はムー 2023年6月号「都市伝説「トレドの男」ミステリー」で、これ以上ないほど確証に満ちた、歴史が変わったと思われる件について書いた。
最近またひとつ、この手の体験をしたので、それをここに書こう。今発売中の三月号総力特集「逆説の未来予言 世界線とマンデラエフェクトの謎」の言葉を借りれば、「正史に載らなかった分流の歴史を見つけた」ということだ。
タイムトラベラー(自称)ノア
2018年に有名になったタイムトラベラーのノアを知っているだろうか? 嘘発見器にかかってそれをパスしたということでオカルト界で有名になり、実は筆者自身もそれを広めるのに加担してしまっていた。
しかし2019年7月、三人の男性が次々と、自分がノアを演じていた、未来人などではない、と主張し始めたのだ。この三人はデニス、マイク、ジェイソン。この誰が「本物の偽物」かというと、これは完膚なきまでにデニスで良いと思う。その過程をアメブロに書いたので、詳しく知りたい人はそちらを読んでみてほしい。
改めてタイムトラベラーのノアを追う1
改めてタイムトラベラーのノアを追う2
改めてタイムトラベラーのノアを追う3
この事件を最近改めて調べたいと思ったのには訳がある。実はデニスの主張に、筆者が認識している事実とは異なるものがあったのだ。そのため、もしかしたら最初の動画だけは本物かもしれないと思い、いつか時間をとって調べてみたいと考えていた。
デニスの主張との食い違い
デニスの暴露動画は著作権に触れるという理由で、現在では見られない。しかし筆者はかつてブログでこう書いていた。
デニスは暴露動画の中で、この最初の動画のワンシーンを見せ、その後にこう言っています。
「YouTubeに動画をアップするとすぐその再生回数は爆発し、その日が終わるまでにすでに60000回になっていました。自分にとってこれはものすごい数だったので、その夜は寝付けませんでした。しかし寝ている間にタイムトラベラー、ノアの名前はニュースになったりSNSで広がり、起きたら動画の再生数は90000回になっていました。」
これは明らかに事実と違うのです。私はムーの記事でこう書きました。
このチャンネルのオーナーは彼に、当座の生活のために$700相当の食べ物と水を寄付した。ところが、今年の初めの時点では動画再生数が全然伸びず、オーナーの「$700も使ったのに、この再生数では全然採算が合わない」というぼやきが掲載されていた。
ここで「ムーの記事」と書いているのは2018年10月号の総力特集のことだ。しかし、今改めて調べたところ、問題の部分は残念ながら編集されて、本誌には載っていなかった。
ちなみに本来の年齢は、動画の公開当時で25歳。若く見えるのは、実年齢相当に見える薬を飲んでいるからだ。
そんな風に長年働いてきたのにクビになり、この時代に取り残されたと聞いて、このチャンネルのオーナーは彼に、当座の生活のために$700相当の食べ物と水を寄付した。ところが、今年の初めの時点では動画再生数が全然伸びず、オーナーの「$700も使ったのに、この再生数では全然採算が合わない」というぼやきが掲載されていた。それが今や、再生数は200万回以上になっている。
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編集をかなり任せてしまっていた
現在だと一字一句削られてたまるかと
すごく計算して書くのだが…
それにしても、実際に本誌に載った文章ではなく、原稿を参照して「私はムーの記事でこう書きました」と書いているのは違和感がある。確かにアメブロは雑誌記事やこのnoteに比べれば若干手を抜いている。それでも結構調査したり、裏付けをとったりして書くのだが、このときは少し疲れていて、チェックが抜けたのだろうか。せっかくなので、それなりに調査して、トレドの男のものとして出回っているパスポート画像の出所を探った記事を紹介しておこう。
トレドの男の名前はジェナンスファー・バーホドリックではない件
それはともかく、今回のポイントは、デニスの主張ではすぐに爆発的ヒットをしたノアの最初の動画が、筆者の原稿ではなかなかヒットしなかったことになっている点だ。
最初の動画の再生数を調べてみた
ノアの最初の動画は幸い、過去ブログからURLがわかる。それをWayback Machineで検索すると、再生こそされないものの、その瞬間の再生数を知ることができた。
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図はWayback Machineにある一番最初のスナップショット。世界標準時(GMT)で2017年11月19日、5:15:17のものだが、再生数はまだ424回だ。
Paranormal Eliteは、ノアを広めたApexTVが、自分たちの2番目のチャンネルだと言っている。筆者はApexTVにムーを送ったので、住所がミネソタなのを知っている。デニスもおそらくその近辺だと考えられる。この地方の時間は米国中部標準時(CST)で、GMTより6時間前(11月の場合)となる。最初のスナップショットの19日午前5時は、彼らにとって18日午後11時にあたるわけだ。
次にこの動画がいつアップされたかだが、動画の説明に「Published on Nov 17, 2017」が見られる。この日付は調べてみたところ、PST(太平洋標準時)とのことだ。PSTはCSTより2時間遅れている。CSTの18日午前1時59分にアップしても、それはPSTではまだ17日なので、Publishedは17日と表示される。CSTの朝2時がPSTの朝0時。つまりこの動画はデニスにとって17日午前2時から18日午前1時59分までの間に投稿されたものと言える。そこからWayback Machineの最初のスナップショットが撮られた18日午後11時まで、最低でも21時間以上経っている。それなのに再生数は424回。デニスは何か勘違いをしている? それとも筆者が聞き間違えて書いた?
実は筆者の手元に、デニスの暴露動画の音声だけがファイルとして残っていた。また、それを当時、文字として書き起こしたものもある。これを元に改めてデニスの主張を確認していこう。
デニスの主張の検証
音声から再生数に関する部分を抜き出したものがこれだ。
YouTube にアップロードされるやいなや、瞬く間に広まったんだよ。その日の終わりにはすでに 60,000 回再生されていて、自分にとっては本当に、本当に大きな数字だった。その夜は、60,000 回再生が記録された状態で眠りについた。
でも、寝ている間にニュースで大騒ぎになり、ソーシャルメディアで "ノア・ザ・タイムトラベラー" が至るところでシェアされたんだ。目を覚ますと、もうすでに 900,000 回再生。日中も再生回数はどんどん増え続け、最終的にその日の終わりには 200 万回再生に到達したね
おや? 筆者はまたブログで間違ったのか?
90,000回ではなく900,000回再生となっている。早速元の音声も聞いたが、はっきりと、聞き間違えようのないほどクリアな発音でNinety hundred thousandと言っている。それに書き起こしもある。筆者は該当のブログを書いたとき、よほど疲れていたのだろうか。それとも…
それはさておき、このデニスの主張を実際の再生数と比べてみよう。すでにわかっていることをデニスの時間で書くとこうなる。
投稿時間:11月17日午前2時から18日午前1時59分の間のどこか
Wayback Machineの最初のスナップショット:18日午後11時15分
スナップショット時の再生数:424回
再生数が60,000回を超す最初のスナップショットは、彼にとって19日午後11時42分のものだ。
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その前のスナップショットは19日の朝2時12分。
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19日の朝2時12分には704回だったのが、夜11時42分には19万回を越している。11月17日に動画がアップロードされた後、18日は土曜日なのでデニスは動画の再生数を見守っていたのだろう。そして夜更かしし、19日午前中のどこかで寝たとしたら、60,000回再生を見ながら寝たという主張はうなづける。では起きたら90万回というのはどうだろう。
デニスが起きたのは19日の昼間くらいだろうか。その時点で、筆者が最初に書いていたように90,000回なら筋は通る。しかし彼は90万回と言っているのだ。19日夜11時42分の次のスナップショットは20日午後7時くらいで、その再生数はまだ44万回。90万回以上の再生数となる初めてのスナップショットは24日の午後9時19分。その前は24日午前5時11分で、この時の再生数はまだ870,526だ。
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デニスは19日の朝に寝て、24日のどこかで起きたのだろうか?
そんなバカな。
しかも「その日の終わりには 200 万回再生」とあるが、200万回を越すのはなんと、翌年の6月22日から8月7日までのどこかなのだ。
彼は何か勘違いしているのだろうか。それとも適当にしゃべってる?
さらにもうひとつ問題がある。筆者の手元には「今年の初めの時点では動画再生数が全然伸びず」という文章がある。今年というのは2018年のことなのだが、1月1日の最初のスナップショットでさえ、再生数はすでに1,345,664になっている。
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オーナーのぼやきコメントは削除されたと考えられるが、この再生数を「再生数が全然伸びず」と表現するはずはない!
終わりに
結局どういうことなのだろう。デニスの言っているのが誇張だったとしても、半年以上かけて200万再生以上になったのを、寝て起きて、その日中にそうなったというのは、いくら何でも誇張過ぎないではないだろうか。いや、彼はそんな誇張をする性格だからこそ、オカルト界を騙して一世を風靡できたのかもしれない。
しかし、筆者の手元にある原稿との食い違いは?
本誌に載らなかった部分とは言え、かなり確かめて書いているはず。
読者代表:「確かめてとか言ってても、ノアを偽物と見破れなかったではないか!」
筆者:「うん、それは確かにそうなのだけれど、最初の動画だけは本物だった分流が存在するのかもしれないし…」
読者代表:「訳のわからないことを言って誤魔化すんじゃない!」
超常的な出来事はこうして、本人にとっては十分だけれど、周りの人にとっては別解釈ができる余地が残るレベルの証拠しか残さず、すべてはいつも曖昧なまま終わるのだ。。。